チーム天彦VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第一試合振り返り~

チーム天彦VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第一試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年06月15日

 6月12日(土)に放映された第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第一試合、チーム天彦「にゃんぱす~」(佐藤天彦九段、鈴木大介九段、古賀悠聖四段)とチーム広瀬「早稲田」(広瀬章人八段、丸山忠久九段、北浜健介八段)の戦いを振り返る。どちらも和気あいあいとしたチームながら、平均手数は122手の長手数と大激戦だった。

【第1局 鈴木大介九段ー丸山忠久九段】

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1局目▲鈴木-△丸山戦の前、「どこに飛車を振ったらいい?」と盛り上がる作戦会議

第1局は鈴木-丸山とベテラン同士の一戦。対局前の作戦会議で、鈴木は古賀に「俺、どこに振ったらいい? 5、4、3で決めて。あと10秒だけど。古賀君、ビシッと」と作戦を委ねた。指名されたのは三間飛車。実際の初手▲6八飛!と四間飛車だったが、後に▲7六歩から▲7五歩と石田流を目指して公約を実行しようとした。後に鈴木は「初手7八までいこうと思っていたら、手が滑っちゃって6八で止まっちゃった」と振り返っている。

【第1図は△1一香まで】

 第1図は▲3五飛に△1一香と受けたところ。指をしならせて打った▲3八香が好手だった。△4五角は▲3四歩があるので、いまさら角を逃げてはいられない。実戦は△2四金▲3四飛△同金▲6六歩と進み、角が目を覚ました。後手は歩切れのため、金取りが非常に受けにくい。丸山は△8八飛と反撃するも▲6七角打でやはり3筋が受からず、△2四金に▲3四歩から鈴木が押し切った。

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1局目 鈴木VS丸山

 「昨年(第3回AbemaTVトーナメント)に出させていただいて、4連敗だったんですね。初日が出て、とにかくホッとしているところで」と鈴木。丸山はフィッシャールールの時間配分は難しいと語っていた。

【第2局 佐藤天彦九段-広瀬章人八段】

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2局目 佐藤VS広瀬

 2局目は佐藤-広瀬のリーダー対決が実現した。チーム広瀬にとっては意表のオーダーだったようだが、佐藤が後手番で出場したのは主導権を握りやすい先手番を弟弟子の古賀に任せるためだった。

【第2図は▲7五香まで】

 戦型は角換わりになり、広瀬がリードを奪うも佐藤が猛追し、第2図は佐藤が勝ちになっている。実戦は▲7五香と打ったのに対し△6二竜と逃げたが、▲5一銀△9二竜▲7七玉から広瀬が入玉模様の粘りに出て、逆転勝ちを収めた。図では鈴木九段が指摘していた△7五同竜がよく、以下▲同金なら△8九飛から先手玉が詰む。

 「2連敗スタート、リーダー同士の対決で負けてしまうのもチームの雰囲気が悪くなってしまうので、どんな形であれば勝ててほっとしている」と広瀬。ここからチーム広瀬は連勝を続け、丸山が佐藤をくだしてチーム勝利にあと1勝まで迫る。追い詰められたチーム天彦は、迷ったすえにリーダーの佐藤が連続出場するも、何とチーム広瀬も丸山が連投を志願したため、またも佐藤対丸山となった。今度は佐藤がリベンジに成功し、望みをつないだ。

【第7局 古賀悠聖四段-北浜健介八段】

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7局目 古賀VS北浜

 第7局の古賀対北浜は、第3局に続いて2回目。関西奨励会では、北浜が幹事として古賀を指導する立場だった。戦前のインタビューで古賀は「よく怒られた」と振り返っている。
第3局と先後は同じで、後手の北浜がまたも角交換振り飛車を採用した。形勢が何度もひっくり返る激戦の中、北浜が最後に抜け出す。

【第3図は▲5四竜まで】

 第3図は△6三歩に▲5四竜と逃げたところ。以下△5五歩▲同竜△2七飛成▲5六玉△3三桂が寄せの決め手だった。先手は上部に逃げて粘ろうとしていたが、5五と4五の地点を塞がれては受けが難しい。△3三桂以下▲5四竜に△4八角成で必至がかかり、古賀は▲8二金から王手ラッシュをかけるも、9筋の位が大きくて後手玉は詰まなかった。

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北浜勝ちでチーム勝利が決定したことに喜ぶ広瀬、丸山

 チーム広瀬は1勝0敗で得失点差をプラス3にした。初出場の丸山、北浜が勝利したのに加えて、リーダーの広瀬が2連勝と気持ちよいスタートを切った。チーム天彦「にゃんぱす~」は0勝1敗でマイナス3になり、予選突破にはチーム永瀬戦「川崎家」の勝利が絶対条件となる。

【総合成績】

第1局 鈴木〇-●丸山
第2局 佐藤●-〇広瀬
第3局 古賀●-〇北浜
第4局 鈴木●-〇広瀬
第5局 佐藤●-〇丸山
第6局 佐藤〇-●丸山
第7局 古賀●-〇北浜

総合 「チーム天彦」2勝 ― 5勝「チーム広瀬」

【個人成績】

佐藤九段 1-2
鈴木九段 1-1
古賀四段 0-2
広瀬八段 2-0
丸山九段 1-2
北浜八段 2-0

次回は予選Dリーグ第二試合のチーム永瀬「川崎家」とチーム天彦「にゃんぱす~」が対戦、6月19日(土)19:00からの放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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