チーム藤井VSチーム稲葉 ABEMAトーナメント2023~本戦準決勝第二試合振り返り~

チーム藤井VSチーム稲葉 ABEMAトーナメント2023~本戦準決勝第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年09月20日

 9月16日(土)に放映された本戦トーナメント準決勝第二試合、チーム藤井「トウカイテイオー」(藤井聡太竜王・名人、澤田真吾七段、齊藤裕也四段)対チーム稲葉「NINNIN」(稲葉陽八段、出口若武六段、服部慎一郎六段)戦の模様をお伝えする。

 第1局は振り駒の結果、チーム藤井が先手に。対戦カードは▲澤田―△服部だ。相居飛車の戦いとなり、中盤でリードを奪った澤田が勝利。初戦の勝利で勢いに乗ったか、第2局から藤井、齊藤、藤井と一気の4連勝で、チーム藤井が決勝進出を目前にする。

第4局 服部慎一郎六段─藤井聡太竜王・名人

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 第1図は第4局の▲服部―△藤井戦。ここで△5五同角は▲7六飛△3七角成ならば後手ペースだが、銀を取らずに▲4六銀と打たれると△2二角に▲5四歩の攻めがなかなかうるさい。角を出る前に一本、△3四歩を利かせたのが好手。▲6八角に△5五角と出ると、今度▲4六銀には△4四角が飛車取りになる。△3四歩と角を追った効果だ。服部は△5五角に▲7六飛と銀を取ったが、△3七角成で後手ペースになった。

【第1図は▲5五歩まで】

 「相手が強過ぎたから仕方がない」と、後のなくなったチーム稲葉、第5局直前の作戦タイムでは「4連勝と言うのは我々もたくさんしてきているので、ようやく相手の気持ちがわかった」と苦笑しつつ開き直るしかなかった。「まあ、いつでも5連勝できるということで、1勝できれば変わる、ここからですよ」とリーダーが檄を飛ばす。この時点で数時間後の光景を予測したものがどれほどいただろうか。

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 第5局は「私が1勝をもぎ取ってきます」と、稲葉が自ら出陣。齊藤との戦いは齊藤の先手中飛車から相穴熊になった。中盤の別れは先手よしだったが、稲葉が懸命の頑張りで千日手に持ち込む。ここで時間差をつけた(指し直し局の持ち時間は稲葉が3分越えなのに対して、齊藤は1分未満)のが生きたか、指し直し局は快勝で、リーダーがチームに待望の1勝をもたらした。

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 続く第6局はチームメイトに推された稲葉が連闘し、今度は澤田に快勝。あとは出口、服部の両者に全てを託す。

第7局 藤井聡太竜王・名人─出口若武六段

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 第7局でチーム藤井はリーダーが自ら決めに出た。今回の藤井の個人成績はここまで9勝0敗と圧倒的で、準決勝に進出した4チームのメンバーで個人成績が無敗なのは藤井だけである。出口との一戦は得意の先手角換わりに進んだ。

【第2図は△7七成桂まで】

 第2図、ここで▲2三歩成△同歩▲4一角△3一玉▲2三飛成と後手玉に詰めろを掛けるのは△6七成桂▲4九玉△8九飛成▲3八玉△2六桂と進み、先手玉が詰まされるか2三の竜を引かされるかの展開になり、先手が負け筋となる。実戦は単に▲4一角と打ち、△3一玉に▲4二金△同金▲8五角成と後手の飛車を抜いたが、△6七成桂▲同馬△7六銀の進行は混戦である。以下も熱戦が続いたが、最後にわずかなスキをついて抜け出した出口が最後は先手玉を即詰みに打ち取る。終局の瞬間、チームメイトは「よし!!」とガッツポーズ。出口が大きな1勝を上げた。

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 こうなると流れはチーム稲葉に傾く。第8局は連投の出口が澤田を下して、ついにタイに追いついた。4連敗からの4連勝は、アベマトーナメント史上初のスコアである。

第9局 服部慎一郎六段─齊藤裕也四段

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 最終第9局は振り駒の結果、チーム稲葉の先手に。▲服部―△齊藤戦は対抗形の相穴熊となった。

【第3図は△6九銀成まで】

 第3図からの▲7二竜が英断の竜切りで、以下△同金▲6一銀△7九成銀▲同金△7一金打▲7二銀成△同金▲6一銀△7一銀打▲7二銀成△同銀▲6二金と進んで先手勝勢となった。最終手▲6二金の局面は、7二の銀取りと同時に▲8二角成以下の殺到もあり、後手陣が受けにくくなっている。チーム稲葉が奇跡の大逆転。最後の立役者となった服部は「ここまで勝っていないので委縮していた部分はありましたが、稲葉さんと出口さんがつないでくれたので、絶対勝ってやろうという強い意気込みで臨みました」と語った。

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 チーム稲葉が決勝進出。次回は9月23日(土)に放映される本戦決勝、チーム永瀬「川崎家」対チーム稲葉「NINNIN」の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】(第1局はチーム糸谷が先手番。以下は交互)
第1局 服部●-○澤田
第2局 稲葉●-○藤井
第3局 出口●-○齊藤
第4局 服部●-○藤井
第5局 稲葉○-●齊藤
第6局 稲葉○-●澤田
第7局 出口○-●藤井
第8局 出口○―●澤田
第9局 服部○―●齊藤
総合5勝 ― 4勝

【個人成績】
稲葉八段 2-1
出口六段 2―1
服部六段 1-2
藤井竜王・名人 2-1
澤田七段 1-2
齊藤四段 1-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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