チーム永瀬VSチーム稲葉　ABEMAトーナメント2023～決勝戦振り返り～

　9月23日（土）に放映されたABEMAトーナメント2023決勝戦のチーム永瀬「川崎家」（永瀬拓矢王座・増田康宏七段・本田奎六段）と、チーム稲葉「NINNIN」（稲葉陽八段・出口若武六段・服部慎一郎六段）の戦いを振り返る。両チームは予選Ａリーグでも激突し、その時はチーム稲葉が５勝２敗と快勝している。さらに昨年も準決勝で対戦しており、本田以外５人のメンバーが同じで、そちらもチーム稲葉が５勝２敗で勝った因縁のあるカードだ。

第1局　本田奎六段─稲葉陽八段

　第１局は互いに意表を突き合った組み合わせになったようだ。相掛かりから先手の本田が元気よく攻めていきペースをつかんだ。

【第1図は△５一飛まで】

　ここから▲４四角△同歩▲２二角が厳しい攻めになった。俗な攻めに控室の永瀬、増田からも笑いがこぼれたが、結果的に好判断。飛車が隠居した後手は攻め合いの形を作れないのが痛い。以下は時間切迫の中、本田が慌てる場面もあったが押し切った。予選の対戦では稲葉に３人全員敗れたが、大舞台で連敗をストップさせる大きな白星となった。

第4局　永瀬拓矢王座─稲葉陽八段

　第2局は永瀬が服部に、第３局は増田が出口に快勝して一気に追い詰める。何とか流れを変えたいチーム稲葉はリーダー自ら出るが、チーム永瀬もリーダーが登場。永瀬はアベマ用の後手番横歩取りを駆使してまたもペースをつかむ。

【第2図は▲２七飛まで】

　飛車の働きの差がそのまま形勢の差になってしまっている。△４五歩▲５五銀△５四歩▲６三銀に△７四歩がピッタリのタイミング。▲同金△同飛▲同銀△５五歩と駒得しながら６三の銀を空振らせることに成功した。以下も手厚く負けない指し回しで圧倒。チーム永瀬が４連勝と突き放す。

第5局　本田奎六段─出口若武六段

　星取りこそチーム稲葉が４連敗と追い詰められたが、準決勝はここから大逆転している。チーム永瀬も油断はできない。相掛かりの乱戦から本田が緩まずリードを奪った。

【第3図は△６二玉まで】

　何とか出口は粘ろうとしているが、▲６五桂が気持ちの良い活用。控室でも「今日は冴えてるな」と絶賛。△６四歩にそこで▲１一飛成と取るのが良い呼吸。△６五歩に▲６四香を用意しており、後手は粘るのが難しい形となり、本田が押し切った。

　結果はチーム永瀬が予選、そして昨年のリベンジを果たして５連勝で優勝となった。内容、星取り、采配ともに安定感があり、優勝に相応しい強さだったと言えるだろう。同じメンバーで連覇を目指したチーム稲葉だったが、残念ながら準優勝となった。

永瀬「チーム一丸となってチーム稲葉にできたのは良かったと思います。個人賞も２位から上がったのが最多対局に結び付いたのかなと」

増田「決勝は永瀬さん、本田さんの二人に勝ってもらいあまり仕事ができなかったのですが、要所ではチームを助けられたかなと思います」

本田「予選からあまり振るわない成績でしたが、決勝で２勝することができて本当に嬉しいです。頼もしいチームでした」

【総合成績】
第１局　本田○─●稲葉
第２局　永瀬○─●服部
第３局　増田○─●出口
第４局　永瀬○─●稲葉
第５局　本田○─●出口

【個人成績】
永瀬拓矢王座　２─０
増田康宏七段　１─０
本田奎六段　２─０
稲葉陽八段　０─２
出口若武六段　０─２
服部慎一郎六段　０─１

　最終的な個人賞は以下の通り

最高勝率賞　羽生善治九段（100％）

最多勝　永瀬拓矢王座（13勝）
最多対局賞　永瀬拓矢王座（16局）

敢闘賞　澤田真吾七段（60％）

予選最高成績賞　藤井聡太竜王・名人（5勝・100％）

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