同学年対決、藤井が圧倒

同学年対決、藤井が圧倒

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年12月20日

 藤井聡太竜王に伊藤匠七段が挑戦した第36期竜王戦七番勝負。伊藤は初のタイトル挑戦、藤井はシリーズ中に八冠制覇を成し遂げて新時代の到来を示す戦いだ。二人は同い年で、令和のライバル対決として期待されるカードでもある。

第36期竜王戦七番勝負第1局

 第1局は東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて。伊藤の先手で相掛かりから激しい乱戦となる。藤井が飛車を渡す攻めをしたのが好判断で、少しずつペースをつかんでいった。

【第1図は▲7四飛まで】

 ここで△4五桂が5七に利かせながら玉も広くする味の良い一着。▲7六金と歩を払ったが、△6四桂と打って好調な攻めが続く。以下も的確に攻めをつないで藤井快勝。防衛に向けて好スタートを切る。

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写真:田名後健吾

第36期竜王戦七番勝負第2局

 第2局は京都府京都市「総本山仁和寺」にて。角換わり腰掛け銀から藤井が先攻するが、伊藤も反撃して攻め合いに。

【第2図は△8四歩まで】

 攻防に効いている8五の馬の態度を尋ねたところ。先手も応手に迷いそうなところだが、強く▲4一金と踏み込んでいった。以下△同飛▲同馬△同玉▲6一飛△5一桂▲7四角△3一玉▲5一飛成△2二玉まで決めてから▲7七玉と手を戻すのが緩急自在で、先手玉は捕まらない形になった。最後は駒を蓄えたところで後手玉を即詰みに打ち取って2連勝。

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写真:夏芽

第36期竜王戦七番勝負第3局

 第3局は福岡県北九州市「旧安川邸」にて。相掛かりから互いに銀を繰り出して攻勢を取るが、先手の方が早い分後手が面倒を見る展開に。ようやく後手も反撃の余裕を得たのが第3図だ。

【第3図は▲3六飛まで】

 △5六歩が攻め合いの形を作る急所の筋。▲同歩に△2二飛▲3四歩△5七歩が鋭い。▲4八金に△2九飛成が厳しく、難解ながら後手の勝ち筋に入った。攻防に見事な指し回しを見せた藤井が3連勝。

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写真:玉響

第36期竜王戦七番勝負第4局

 第4局は北海道小樽市「銀鱗荘」にて。角換わりから後手の伊藤が深い研究を見せて、藤井が時間を使わされる展開に。飛車を切らせて反撃の手番が回ってきた。

【第4図は△5八銀不成まで】

 △5八銀不成は勝負手で、どちらで取っても△8七歩成の時に先手玉が狭くなっている。しかし、▲8六銀が冷静な応手で、△6九銀不成が詰めろになっていない。▲5二と△7一玉(△同玉は▲7二金で受けなし)に▲5四馬がピッタリの決め手で、後手玉は寄っている。最後は詰将棋のような鮮やかな即詰みに打ち取った。

 同学年のライバル対決は藤井が貫録を見せて4連勝と圧倒し、八冠を堅持。5組から怒涛の連勝で勝ち上がってきた伊藤の勢いを跳ね返した。ただ、21歳と若い両者の戦いはこれからも続いていくだろう。また伊藤が挑戦する日を期待したい。

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写真:中野伴水

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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