ー岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負展望ー

ー岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負展望ー

ライター: 渡辺弥生  更新: 2024年01月13日

福間(里見)香奈女流四冠が女流名人戦五番勝負の挑戦者に

里見香奈女流四冠がご結婚、そして王位・女流王位記念対局で藤井聡太竜王・名人(八冠)に勝利した。どちらも本当におめでとうございます。皆さまにとってはまだ馴染みのない名前だろうが、以下福間香奈女流四冠(敬称略)でいこうと思います。よろしくお願いいたします。

11月29日、岡田美術館杯第50期女流名人戦プレーオフが行われ、福間が内山あや女流初段を下して挑戦権を獲得した。 挑戦者になったのは福間だが、今期の女流名人リーグで目を引いたのはリーグ初参加で7勝2敗の成績を挙げた内山だろう(女流名人を12期獲得している福間は、そもそもリーグにいることが不本意なはずである)。このところ女流棋界では20代前後の若手がお互いに負けないよう頑張っており、中でも内山が各棋戦で安定して白星を伸ばしている印象だ。リーグ陥落となったのが上田初美女流四段、香川愛生女流四段、伊藤沙恵女流四段、加藤桃子女流四段というのもショックだ。全員タイトル経験者で、香川、伊藤、加藤は今期タイトル挑戦をしている3人である。
内山はリーグ5戦目で福間にも勝利しており、プレーオフもひょっとすると...と思ったが、やはりと言うべきか、ここ一番というときの福間は強い。まったく伸び盛りの若手を寄せ付けなかった。

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写真:銀杏

女流棋界の強すぎる2強

福間は清麗、女流王座、女流王位、倉敷藤花の四冠を保持。女流名人は第36期から第47期まで12連覇しており(獲得も12期)、クイーン名人の資格保持者だ。昨年12月にリコー杯第13期女流王座戦五番勝負で女流王座を防衛し、タイトル獲得数を56期とした。とんでもない数字である。2021年の第32期女流王位戦五番勝負で女流王位を防衛、タイトル獲得数44期で歴代単独1位となってから、ひとり記録を伸ばし続けている。
福間を迎えうつのは西山朋佳女流名人。白玲、女王、女流名人、女流王将の四冠を保持し、現在福間と女流タイトルを半分ずつ分け合っている。昨年の1月から2月にかけて行われた第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負で伊藤沙恵女流名人を破り、初めて女流名人のタイトルを獲得した。これまでのタイトル獲得数は15期。西山はまた昨年の秋に第17回朝日杯将棋オープン戦で佐々木大地七段に勝って女性で初めて二次予選に進出したことでも注目を集めた

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写真:八雲

15回目の番勝負

西山と福間は女流名人戦五番勝負では初顔合わせ。これまでに14回タイトル戦を戦っており、番勝負の結果は西山の7勝、福間の7勝とまったくの五分だ。昨年西山が女流名人になってからの1年間の2人の対戦成績を見ると、
大山名人杯第31期倉敷藤花戦三番勝負 2-0で福間が防衛
ヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負 4-3で西山が奪取
大成建設杯第5期清麗戦五番勝負 3-1で福間が防衛
福間は白玲のタイトルを西山に取られて悔しいようだが、対戦成績ではむしろ勝ち越している。3つとも西山が福間のタイトルに挑戦しており、福間が西山のタイトルに挑戦するのは意外なことに2022年秋の第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負以来。今回の番勝負はまったくの互角の勝負で、結果はもう時の運である。簡単には終わらない、熱戦になるのは間違いない。
戦型はこのところ相振り飛車と、福間が西山の振り飛車に中飛車の出だしから玉を左に囲う指し方(里見流、これからは福間流と呼ぶべきだろうか)が続いており、お互い相手の作戦に対しどういう工夫を見せるか楽しみだ。西山は強烈な攻め将棋、福間は受けの強いバランス型だが、二人とも終盤の切れ味は抜群。最後まで目の離せない戦いにぜひご注目ください。

岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負は1月14日(日)、神奈川県箱根町「岡田美術館」にて開幕する。

渡辺弥生

ライター渡辺弥生

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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