第13期加古川青流戦 ―決勝三番勝負展望―

第13期加古川青流戦 ―決勝三番勝負展望―

ライター: 夏芽  更新: 2023年11月03日

 第13期加古川青流戦の決勝三番勝負が、兵庫県加古川市の「刀田山鶴林寺」で11月4日(土)、5日(日)の2日間にわたって行われる。

 今期決勝まで勝ち上がったのは藤本渚四段と吉池隆真三段。年齢はどちらも18歳。10年前ぶりの10代対決で、加古川青流戦史上、最も若い組み合わせとなった。どちらが勝っても棋戦初優勝である。

現役最年少棋士

 藤本渚四段は香川県出身の井上慶太九段門下。昨年10月にプロ入りした現役最年少棋士である。

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写真:夏芽

 今年度は加古川青流戦だけでなく新人王戦でも決勝三番勝負まで勝ち進んだ。新人王戦のほうは惜しくも準優勝という結果に終わったが、対局数、勝数、勝率の3部門のランキングで上位に入っており、数字の上でもその強さが証明されている。

 加古川青流戦は今期が2回目の出場。高田明浩四段、里見香奈女流五冠(当時)、狩山幹生四段、井田明宏四段をくだし、決勝進出を決めた。

【第1図は△6五歩まで】

 初戦の高田四段戦は開幕戦として「加古川まちづくりセンター」で行われた。第1図の△6五歩が高田四段らしからぬ珍しいミスで、▲2二角成△同銀▲7五角と進んで藤本四段が馬を作ることに成功。その後、高田四段も追い上げを見せたが、藤本四段が勝ちきり「波に乗れた」と振り返っている。

初出場での決勝進出

 吉池隆真三段は東京都出身の室岡克彦八段門下。藤本四段よりも学年が1つ上で、奨励会の入会も1年早い。10月から4期目の三段リーグを戦っており、四段のプロ入りを目指して奮闘中である。

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写真:夏芽

 公式戦は今年、加古川青流戦と新人王戦の2棋戦に出場。どちらも初参加だったが、加古川青流戦は決勝まで、新人王戦もベスト4まで勝ち上がる躍進を見せた。

 今期のトーナメントは川村悠人三段、小山直希四段、森本才跳四段、齊藤裕也四段、横山友紀四段を破ってきた。特に直近の3局は振り飛車に対して右玉に組むという珍しい作戦を用いている。

【第2図は▲1七金まで】

 第2図は3回戦の森本四段戦から。先手優勢の局面で「負けを覚悟した」と本人は言う。しかし、△7六角と打ったのが渾身の勝負手で、以下▲4六飛△5四銀▲同歩に△2五桂と食いつき、吉池三段が逆転の流れを引き寄せた。最後の△2五桂が金取りだけでなく、6三の馬を質駒に△3七角と打つ狙いを秘めていて受けにくい。

三番勝負に向けて

 関西所属の藤本四段と関東奨励会所属の吉池三段。両者は今回の三番勝負が初手合いだが、まったく面識がないわけではない。

 昨年の秋に共通の奨励会員を介して知り合い、今では練習将棋を指す間柄だという。つまりは互いに相手の強さ、手の内などは把握しているということだ。

 両者とも力戦の展開を得意にしており、似ている部分は多い。それぞれ相手の印象について藤本四段は「(吉池三段は)右玉イケメンという言葉がしっくりくる。自分と作戦選択が似ている気がする」、吉池三段は「(藤本四段は)自分の世界をしっかりと持っている印象。自分が目指す将棋に近い」と通じ合っている。

 三番勝負で意識している点は両者同じで時間の使い方。持ち時間が1時間しかなく「決断よく指したい」との答えが返ってきた。

 最後に意気込みについて、藤本四段からは「集中を切らさずに頑張ります」、吉池三段からは「自分の力を出しきって、楽しんでいただける棋譜を作りたい」と言葉があった。

 藤本四段がプロの意地を見せるのか。吉池三段が初の三段優勝を果たすのか。楽しみの多い三番勝負になりそうだ。

 なお、今期の大盤解説会と表彰式は昨年と違い、JR加古川駅近くの「ウェルネージかこがわ」で行われるので、来場される方はお間違えのないように。

夏芽

ライター夏芽

2011年から関西を拠点にインターネット中継記者として活動。将棋は指すより見て楽しむタイプ。暇さえあれば書店の将棋コーナーに足を運んでいます。

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