駒の価値を伝えるための方法とは?◯◯を使うと効果的【将棋の教え方】

駒の価値を伝えるための方法とは?◯◯を使うと効果的【将棋の教え方】

ライター: 藤倉勇樹  更新: 2018年02月12日

第3回は駒の「成り」と価値について書きたいと思います。

前回のコラムで駒の動かし方について触れましたが、動かし方の段階で覚えるのに疲れているお子さんもいると思います。続けて教えていく場合は、成った時の動きはさらっと触れるのが良いかもしれません。

相手の陣地(三段目)に進んだ時に、その駒は「成る」ことができます。

【図1】
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相手側陣地に駒を進めると「成る」ことができます。

歩、香、桂、銀は成ると金へ。また、角と飛車は従来の動きに王(玉)の動きが加わるといったふうに教えます。合わせて駒の価値を教えると「成る」ことの大切さを学ぶことができます。

なお、駒が成った際は、その駒を裏返します。歩が成ると「と金」、香、桂、銀が成るとそれぞれ「成香(なりきょう)」、「成桂(なりけい)」、「成銀(なりぎん)」と呼びます。

そして、角が成ると「竜馬(りゅうま)※一般的に馬=うまと呼びます」、飛車が成ると「竜王(りゅうおう)※一般的に竜=りゅうと呼びます」と呼び、強力な駒になります。なお、「金」と「王(玉)」は、「成り」がありません。

【図2】
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と金、成香、成桂、成銀の動きは、金と同じ動きです。)

【図3】
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【図4】
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仮に、歩の価値は10円、香は100円、桂は200円、銀は500円でと金は1000円と教えています。貨幣価値に限らず、点数や他の表現でも良いと思います。歩は「うまい棒」、香と桂は「お菓子が買えるね」と言った具合です。

「歩」と「と金」の価値と比べると100倍になるため、成ることの意味を理解できるようになります。また、角と飛車は1万円ですが、成ると100万円と解説しています。

最後に王(玉)は1億円です。他の駒との価値の差に、お子さんは驚くことでしょう。将棋は王(玉が)とられると負けとなりますので、王(玉)の大切さを理解してもらう上では、重要です。

成った時の動きと価値を覚えてもらったところで、動かし方は終了となります。

さて、お子さんたちは、駒の動きを覚えて早く対局をしたいはずです。さっそく、対局を開始しましょう。ただし、私が指導する際は、十枚落ち(王と歩だけ)から始めるようにしています。また、下手(お子さん)側は歩を全部抜きます(十枚落ち歩なしと呼んでいます)。

【図5】

下手側の歩がいない為、すぐに飛車と角が成れるのが大きなポイントです。大駒だけでなく、香も成ることもできるので、成る楽しみも味わうことができます。まずは竜と馬を作り、動きの強さを実感してもらうのが良いでしょう。

大駒を成った後は、二枚対一枚で王を詰ますと言う感覚を覚えてもらいます。始めたばかりのお子さんの場合、馬と竜がバラバラに離れていることが多いのですが、それではなかなか捕まりません。(図6)

【図6】

馬と竜で「手を繋いで」王を詰ますのが大事です。(図7)

【図7】

王を捕まえる段階で、逃げられる場所は何箇所あるかを考えてもらいながら進めるのがお薦めです。上手(親御さん)側の考え方としては、「王が上に逃げない」のが急所。まずは「将棋で勝つ形を覚えてもらう」のが最優先なので、上に逃げるのはNGです(※上側に逃げると下手が勝ちにくくなります)。

歩を抜いた将棋で勝てるようになったら下手側の歩を戻します。歩があることで、大駒の動きが難しくなりますが、角と飛車と成る形を何度か確認できているので、自然と▲7六歩(角道を開ける)や▲2六歩(飛車先を突く)ができるようになります。上手側は少しずつ王を動かすことで、馬と竜を作っても詰ますのが難しくなってきます。ヒントを与えながら進めていきましょう。私自身は実戦の詰み以外にもいくつか詰みの形を作り、詰みの形に慣れてもらうことを心掛けています。

十枚落ち(王と歩だけ)が勝てるようになったら左金をつけての九枚落ちです。大駒の動きを中心に、少しずつ将棋が理解できるようになってきて、楽しくなってくる段階です。そして、玉を前線に出す、特殊な動きの桂を跳ねていく、金銀を一歩ずつ前進させていくなど、お子さんの個性が出てきます。

下手がタダで駒を取られる手以外は、できるだけ下手の指す手を尊重し、回数を重ねたところで、アドバイスをするようにしています。

次回は九枚落ち(王と金一枚)での指し方について触れていきます。

将棋の教え方

藤倉勇樹

ライター藤倉勇樹

1979年10月23日生まれ。東京都新宿区出身。桜井昇八段門下。
日本将棋連盟の「子供将棋スクール」で長らく講師を務めた経験から、現在は志木こども将棋教室東新宿こども将棋教室で将棋教室を開講中。元々は振り飛車党だったが、最近では矢倉など居飛車も多く指している。映画「聖の青春」やTVドラマ「やすらぎの郷」で将棋監修として携わっている。

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