チーム康光VSエントリーチーム ABEMAトーナメント2023~Dリーグ第一試合振り返り~

チーム康光VSエントリーチーム ABEMAトーナメント2023~Dリーグ第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年06月21日

 6月17日(土)に放映された予選Dリーグ第一試合、チーム康光「駅伝」(佐藤康光九段、高見泰地七段、大橋貴洸七段)対エントリーチーム「ストロングスタイル2023」(郷田真隆九段、行方尚史九段、古賀悠聖五段)戦の模様をお伝えする。

第2局 大橋貴洸七段─郷田真隆九段

 振り駒の結果、第1局はエントリ―チームの先手番で、対戦カードは古賀―大橋戦となった。矢倉模様の力戦から中盤で戦機をつかんだ大橋がそのまま勝ち切って、勝利。続く第2局、チーム康光は大橋が連闘、エントリーチームはリーダーの郷田が登場した。

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 角換わりとなった本局、中盤では郷田が優勢になり、徐々にリードを広げていく。しかし大橋の頑強な粘りに手を焼いて、迎えた終盤が第1図である。

【第1図は▲7六玉まで】

 ここで郷田は△7五歩と打ち、▲8七玉に△7六銀▲7八玉△6五銀上と迫る。▲6五同歩なら△6六歩が厳しいが、この瞬間に大橋が打った▲7一飛が絶好となった。以下△6七銀成▲同玉△7六銀は▲5七玉と右辺に逃がしてしまうし、そして▲7一飛の局面は後手玉に▲2一飛成以下の詰めろが掛かっている。やむなく郷田は△3一桂と受けたが、▲4一銀△4二金▲6五歩△6六歩▲7六金△同歩▲3二銀打と進み、以下は後手玉を即詰みに討ち取った大橋の逆転勝ちとなった。

 第1図では△7五銀と出る手が勝った。以下▲8七玉△8六銀▲8八玉△7五桂と進む。この△7五桂は詰めろではなく、先手から▲7一飛と打たれると後手玉に詰めろが掛かるが、そこで△3一銀と受けておけば、先手からこれ以上有効な攻め筋がない。そして先手陣は▲5七金とかわしても△6七歩で一手一手の寄りとなる。

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 結果的にはこの逆転勝ちが大きかったか、チーム康光が勢いに乗る。第3局ではリーダーの佐藤が行方を向かい飛車で攻め潰し、第4局では高見が相掛かりで郷田を圧倒。佐藤が「郷田さんにあんなに付け入るスキを与えずに勝つなんてすごい」と称える勝利だった。

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第5局 古賀悠聖五段─高見泰地也七段

 これでチーム康光の4勝0敗。ストレート勝ちを目指すチーム康光は高見の連闘、対するエントリーチームは古賀に流れを変えることを託した。

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 ▲古賀△高見戦は相掛かりに。後手のスキを突いた古賀が中盤ではリードを奪ったが、高見は得意の妖術とも言われる終盤力を駆使して混戦に持ち込む。そして迎えたのが第2図だ。

【第2図は▲1八歩まで】

 この催促に対して高見は△1八同金と取る。対して古賀の▲5五歩が急所の一着となった。以下△7五香▲5四歩△7九香成▲5三歩成と進み、以下は再び先手がリードを奪う。最後は即詰みに討ち取って、古賀がチームに待望の1勝目をもたらした。

 第2図では△2七金打と打つ手があった。▲4九玉に△3七金と桂を取り、▲同金に△6七桂の飛車角両取りが厳しいのである。7九の角がいなくなれば△8八竜が生じるし、さりとて後手に飛車を渡せば、先手玉はいよいよ危険だ。

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第6局 佐藤康光九段─行方尚史九段

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 第6局は▲佐藤―△行方戦。チーム康光はリーダー自らが決めに来た。先手向かい飛車から対抗形となった第3図。普通は▲6八飛と飛車を逃げたくなるが、ここで▲3五歩と踏み込むのが佐藤の剛腕である。「ひえー」「マジかー」と、控室のチームメイトも驚きの声を上げていた。

【第3図は△6三同銀まで】

 実戦は以下、△7八歩成▲3四桂△3一玉▲4二桂成△同玉▲6二金△8八飛成▲6三金△3一玉▲3四銀△8九竜▲2三銀成△同金▲5三金と進む。こうなると王手がかからない穴熊が強く、佐藤は自玉を顧みることなく攻めを続けることができる。以下は佐藤が押し切った。手順中の△3一玉では△8一角という順があったようで、先手のカナメ駒である6三金に働きかけつつ、遠く先手陣の急所である2七をも狙っている。しかし2七の地点に迫って先手陣に確実なダメージを与えるには、さらに△2五歩~△2六歩の2手が必要なため、指しにくい意味はある。

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 チーム康光が5勝1敗の好成績で、まずは第一試合を勝利。次は6月24日に放映される予選Dリーグ第二試合、対チーム糸谷「鉄拳流」戦に予選通過をかけて臨むことになる。こちらの対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】(第1局はエントリーチームが先手番。以下は交互)
第1局 大橋○-●古賀
第2局 大橋○-●郷田
第3局 佐藤○-●行方
第4局 高見○-●郷田
第5局 高見●-○古賀
第6局 佐藤○-●行方
総合5勝 ― 1勝

【個人成績】
佐藤九段 2-0
高見七段 1-1
大橋七段 2-1
郷田九段 0-2
行方九段 0-2
古賀五段 1-1

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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