里見がクイーン王座に 12月上旬の注目対局を格言で振り返る

里見がクイーン王座に 12月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年01月31日

 2021年最後のタイトル戦のリコー杯女流王座戦は挑戦者の里見香奈女流四冠がストレートで勝ち、初のクイーン王座の資格を得ました。順位戦も佳境に入りつつあります。

第11期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局

【第1図は△3六角まで】

 第1図は第11期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局(▲里見香奈女流四冠△西山朋佳女流王座)。後手が1四の角を飛び出して勝負を掛けてきたところです。6九の金をにらまれて怖いところで、先手はどう指すか悩ましい局面。実戦は▲7七銀が「桂頭の銀定跡なり」で、先手陣が安定しました。当たりを避けながら桂取りを見せ、後手も忙しくなりました。△5四角と銀を拾いながら桂にヒモを付けてきましたが、▲4一竜と活用できたのが大きく、仕方のない△5二銀に▲4六竜で駒得の先手がはっきり優勢です。以下は先手が手堅く勝ち切り、3連勝で里見女流四冠が女流王座復位を決めました。

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写真:日本将棋連盟

第80期順位戦A級6回戦

【第2図は▲5三銀まで】

 第2図は第80期順位戦A級6回戦(▲佐藤天彦九段△斎藤慎太郎八段)。矢倉対雁木の激しい攻め合いです。先手陣にどう攻め掛かるか難しい局面ですが、じっと△8九とが「と金の遅早」です。次の△8八とが厳しく、後手の攻めが分厚くなりました。以下▲5二銀成△同銀▲6二と△8八とと互いにと金で攻め合いますが、大駒の働きに差があるため、後手に分のある終盤戦です。本局を勝った斎藤八段が6連勝と星を伸ばし、2年連続の挑戦権獲得に大きく前進しました。

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写真:虹

第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント

【第3図は△4四玉まで】

 第3図は第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲永瀬拓矢王座△佐藤康光九段)。後手が上部脱出に望みを掛けて粘っているところです。▲3六歩△同飛成▲4六金が「玉は包むように寄せよ」の通り退路を封鎖する寄せで決め手になりました。下段に押し返すか竜を消せば後手玉を寄せるのは容易になります。中段玉を捕まえた永瀬王座が挑戦者決定二番勝負進出を決めました。

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写真:八雲

第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント敗者復活戦

【第4図は△7六銀打まで】

 第4図は棋王戦挑戦者決定トーナメント敗者復活戦(▲郷田真隆九段△佐藤康光九段)。後手の角交換振り飛車から相穴熊に進みました。先手が優勢の将棋でしたが、後手の猛追で際どくなっています。▲7八金打から受ける展開だと千日手もちらつきますが、▲8九香が打開の一手。「下段の香に力あり」で、後に8筋から反撃する筋も見せています。実戦は△8七銀成▲同香△8五歩▲同歩△7六金に▲7八金打△6六銀▲8四歩で、見事に香が働いています。勝ち切った郷田九段が挑戦者決定二番勝負に進出です。

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写真:琵琶

第29期銀河戦決勝トーナメント準決勝

【第5図は▲6七歩まで】

 第5図は第29期銀河戦決勝トーナメント準決勝(▲藤井聡太銀河△渡辺明名人)。豪華なカードが準決勝で実現しました。渡辺名人の作戦が功を奏しリード。図は後手が勝勢ですが、ここで緩むと許してくれる相手ではありません。△5六銀が押しつぶす寄せ。▲6六歩に△同歩▲6五歩△同飛▲5六金△6七歩成▲5九玉で「玉は下段に落とせ」を実現しました。こうなるとさすがの藤井銀河でも粘れず、以下△4七角まで投了となりました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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