ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年05月07日
名人戦は藤井聡太名人の終盤力が光り、2連勝とリードしています。棋聖戦では杉本和陽五段が大逆転で挑戦権を獲得し、六段にも昇段。大幅な賞金アップも発表された直後で、まさに棋聖戦ドリームです。
【第1図は△8六歩まで】
第1図は第83期名人戦七番勝負第2局(▲藤井聡太名人△永瀬拓矢九段)。難解な戦いが続いていましたが、直前に永瀬九段が選んだ順が危険で、藤井名人がリードしています。▲7七金では玉頭に拠点が残り危険。▲8六同金△同飛▲8七歩が「終盤は駒の損得よりも速度」の対応。△8二飛と引きましたがこれではつらく、手番を得た先手が▲5四桂から後手玉を寄せ切りました。
写真:牛蒡
【第2図は▲1五歩まで】
第2図は第10期叡王戦五番勝負第2局(▲斎藤慎太郎八段△伊藤匠叡王)。難解な中盤戦ですが、双方金銀が前に出ていないのでどう手を作るか。△3三桂が「遊び駒は活用せよ」の好着想でした。▲2六角に△3七角成が継続の強手。▲同角△4五桂▲2六角△5七桂成で、角銀交換のやり取りではありますが、使えていなかった2一の桂をさばいたのは大きなポイントです。この後の難解な終盤を伊藤叡王が乗り切って、1勝1敗と追い付きました。
写真:武蔵
【第3図は△4一飛まで】
第3図は第36期女流王位戦五番勝負第1局(▲伊藤沙恵女流四段△福間香奈女流王位)。本来は西山朋佳女流三冠が挑戦者でしたが、体調不良により第1局を辞退。繰り上がりで伊藤女流四段が挑戦者となりました。中盤戦で、▲8三歩が「金は斜めに誘え」の手筋。△同金なら大きな利かしで、後手陣が弱体化します。実戦は△3九角から後手が反撃しましたが8三歩の拠点は大きく、先手が攻め合いを制しました。
写真:虹
【第4図は△3八歩まで】
第4図はヒューリック杯第96期棋聖戦挑戦者決定戦(▲杉本和陽五段△永瀬拓矢九段)。駒得して堅さでもまさる後手が大きくリードしています。この歩を相手していては勝てないと見て、▲4二角成が「終盤は駒の損得より速度」の勝負手。△3九歩成▲同銀△1七桂に▲3八銀打と埋めて、徹底抗戦の姿勢を見せます。形勢は依然として先手がかなり苦しいですが、泥仕合に引きずり込んでいきます。形勢は段々怪しくなり、最後は大逆転勝ちとなりました。杉本五段は初のタイトル挑戦で、六段昇段。藤井聡太棋聖との五番勝負に挑みます。
写真:牛蒡
【第5図は△2二歩まで】
第5図は第38期竜王戦6組昇級者決定戦(▲柵木幹太四段△南芳一九段)。互いに竜と馬を敵陣から引き上げ、手の見えにくい長い戦いとなっています。▲9六歩が落ち着いた一着。「手のない時には端歩を突け」と言いますが、この場合狙いを持った価値の高い手です。実戦は△4二金に▲9七角と角の活用に成功し、先手がリードしました。勝った柵木四段はフリークラスからの昇級が決定。今年度の順位戦には間に合いませんが、来年度からのC級2組参加を決めました。
写真:潤
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段