ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年12月23日
藤井聡太竜王に佐々木勇気八段が挑戦した第37期竜王戦七番勝負。佐々木は待望のタイトル戦登場だ。
第1局は東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて。藤井が先手で角換わり腰掛け銀から激しい展開となる。藤井がうまく手を作り、形勢をリードした。
【第1図は△2五桂まで】
△2五桂のタダ捨ては最後の勝負手だが、▲1七桂がそれを上回る妙手。△同桂成に▲3三金まで後手の投了となった。第1局は藤井が快勝。
写真:琵琶
第2局は福井県あわら市「あわら温泉 美松」にて。佐々木は矢倉の出だしを選び、互いにバランス形に構える。難しい戦いだったが、佐々木が抜け出した。
【第2図は△7三桂まで】
後手も必死の抵抗だが、居玉なのが痛い。▲5三歩△同金▲5四歩と強く決めにいった。△6四金▲同銀△同桂が銀取りになるが、▲4四角が厳しく先手の攻め合い勝ちだ。佐々木がタイトル戦初勝利をあげて1勝1敗に。
写真:紋蛇
第3局は京都府京都市「総本山仁和寺」にて。端の駆け引きから後手の佐々木は意表の角交換振り飛車を採用する。手厚い陣形で振り飛車が十分な形となるが、藤井も真っ向から攻め潰しにいく。
【第3図は△9二同銀まで】
ガツンと▲7五角とぶつけて攻めの継続を図る。△同金▲同銀△8四歩に▲7四金で後手陣の厚みを消しにいくのが、玉頭戦らしい攻防戦。△同馬▲同銀△8五歩に▲5四歩がうるさく、攻め合いの形に持ち込んだ。以下も難解な戦いが続いたが、最後は藤井が制し、2勝1敗とリード。
写真:飛龍
第4局は大阪府茨木市「おにクル」にて。角換わりの相早繰り銀から、佐々木が新構想を見せてペースをつかむ。
【第4図は△4三銀まで】
▲4六歩が腰の入った一着。△6五歩にも▲4五歩△6四角▲2六飛が後手の粘りを許さない強い踏み込み。△3三歩は必死の粘りだが、▲2四歩△3四銀▲同馬△同歩▲2三歩成と畳みかけて決めにいった。互いに先手番を取り合って2勝2敗となる。
写真:虹
第5局は和歌山県和歌山市「和歌山城ホール」にて。後手の佐々木は雁木を選び、藤井は急戦で動いていく。
【第5図は△6五銀まで】
後手の駒も急所にきているが、持ち歩の差が大きく形勢は先手良し。▲3四歩△同馬▲1六角と馬を消しにいくのが好判断。△4四馬と避けたが、後手陣への角の利きが残り、▲3四歩で桂得も確定した。以下△7六銀に▲6六歩も好手で、確実に先手がリードを広げていき、藤井が押し切った。これで藤井の3勝2敗に。
写真:夏芽
第6局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。先手の佐々木は相掛かりを目指す。これで6局すべて違う戦型を選択したことに。研究勝負から激しい展開になり、佐々木がペースをつかむ。しかし、直後に佐々木にミスが出てたちまち形勢は逆転した。
【第6図は▲5二成香まで】
先手も迫る形を作ってはいるが、やや攻め駒不足。△3一銀が堅い受けだ。▲3五桂に△3三金寄とかわし、△3七成香以上に厳しい攻めがない。的確に先手の攻めを余した藤井が制勝した。
写真:紋蛇
佐々木の様々な作戦に苦しめられた藤井だが、第6局で後手番をブレークして4勝2敗で防衛。来期は早くも永世竜王の掛かった防衛戦となる。
ライター渡部壮大