斎藤が叡王挑戦 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

斎藤が叡王挑戦 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年04月12日

 注目の叡王戦挑戦者決定戦は斎藤慎太郎八段が勝ち、伊藤匠叡王への挑戦を決めました。福間香奈女流五冠の防衛戦が続いていますが、休場明けの過密スケジュールをものともしない安定感を見せています。

大山名人杯第32期倉敷藤花戦三番勝負第2局

【第1図は▲8六同飛まで】

 第1図は大山名人杯第32期倉敷藤花戦三番勝負第2局(▲伊藤沙恵女流四段△福間香奈倉敷藤花)。後手が苦しい将棋でしたが、玉頭から勝負を懸けて混戦に持ち込んでいます。△8四歩が「大駒は近付けて受けよ」の犠打。▲同飛なら△8三銀打と先手で受けられます。また、放置するのも8五へ駒を打つ余地があり、△8三歩よりも反発力があります。実戦は▲9四桂△同香▲同歩△7五角▲7六金△8五銀で、玉頭戦を制した後手が優勢になりました。福間倉敷藤花は2連勝で防衛。10連覇、通算15期目の倉敷藤花獲得となりました。

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写真:翔

岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第2局

【第2図は△6四歩まで】

 第2図は岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第2局(▲福間香奈女流名人△西山朋佳女流三冠)。5筋位取りから完封態勢を作り、寄せ合い前にはっきり差が付きました。「三歩持ったら端攻め」で満を持して▲9五歩と決めに掛かります。9筋には2枚の香、さらに6六角もにらんでいるため、後手はとても受け切れません。本局は先手の快勝となりました。

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写真:飛龍

岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負第3局

【第3図は△4四角まで】

 第3図は女流名人戦第3局(▲西山女流三冠△福間女流名人)。玉の近くにと金を作られて先手苦戦ですが、どう勝負しようかという局面。▲5三歩成△同金▲6五桂△6三金▲5二銀と「要の金を狙え」で後手玉に迫ります。後手は壁銀なので、金をはがせれば嫌みを付けることができます。実戦は先手の逆転勝ちとなりましたが、玉を見える形にした効果と言えるでしょう。挑戦者が1勝を返しました。

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写真:銀杏

第10期叡王戦挑戦者決定戦

【第4図は△2三金まで】

 第4図は第10期叡王戦挑戦者決定戦(▲斎藤慎太郎八段△糸谷哲郎八段)。角を逃げているようではもつれるため、先手がうまく攻められるかどうかの局面です。▲2四歩△1四金▲同飛△同香▲2三金△3一玉▲3三金△同角▲2三歩成が強い踏み込み。大きな駒損ですが、「玉は下段に落とせ」で上からと金で押さえる形になっては先手良しです。以下も気持ちよく攻め続けて先手快勝。斎藤八段が久しぶりのタイトル戦登場を決めました。

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写真:玉響

第74回NHK杯戦決勝

【第5図は▲5二角成まで】

 第5図は第74回NHK杯戦決勝(▲郷田真隆九段△藤井聡太竜王・名人)。激しい攻め合いで迎えた終盤戦。△5七銀が「玉の腹から銀を打て」の決め手。これで先手玉は受けの難しい形です。仕方なく▲5七同角ですが、△3七金▲4六玉△7八成桂で詰めろが続き、一手一手の寄りに。藤井竜王・名人が2年ぶり2回目の優勝を飾りました。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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