チーム稲葉VSチーム斎藤 第4回ABEMAトーナメント~本戦1回戦 第二試合振り返り~

チーム稲葉VSチーム斎藤 第4回ABEMAトーナメント~本戦1回戦 第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2021年08月04日

 お~いお茶presents第4回ABEMAトーナメント、7月31日(土)に放映された本戦トーナメント1回戦第二試合は予選Aリーグ2位のチーム稲葉「加古川観光大使」(稲葉陽八段、久保利明九段、船江恒平六段)対、予選Eリーグ2位のチーム斎藤「ここ一番」(斎藤慎太郎八段、村山慈明七段、都成竜馬七段)だ。両チームによる団体戦の模様をお送りする。

 振り駒の結果、奇数局が「ここ一番」の先手番となる。第1局は稲葉―都成戦で、相掛かりから後手の稲葉がタテ歩取りに出る。その結果として後手玉の陣形は美濃囲いとなり、部分的には居飛車対振り飛車の対抗形のような形となった。結果は終始、落ち着いた指し回しを見せた稲葉が勝利し、「加古川観光大使」がまずは先勝。

 「さすがリーダーですね、振り飛車もお手の物」とは、作戦部屋に戻ってきた稲葉を称えた久保の言葉である。

 続く第2局は稲葉―斎藤のリーダー対決に。「予定通り(2戦目も)私が行きたいと思います」と稲葉が語っていたことから、予定の連闘だった。対する斎藤も「次の作戦は決まっているんですね。私、斎藤が」と、ガッツポーズをみせて出陣する。戦型は第1局に続いて相掛かりとなったが、中盤で王手飛車を掛けた稲葉がリードを奪って押し切り、2連勝。

【第3局 村山慈明七段―稲葉陽八段】

 そして第3局ではまたも稲葉が登場。勢いに乗っての3連勝となれば2回戦進出に大きく前進する。対してここで一番返さないと一気に首筋が寒くなるチーム斎藤は、村山を送り出した。

 第3局の戦型は角換わりに。終盤の入り口では、はっきり村山よしと思われたが、稲葉が頑強な粘りを見せて入玉を果たした。だが持将棋成立には後手の駒が足りなそうである。

【第1図は▲5一竜まで】

 そうして迎えた第1図。先手の村山玉は入玉ほぼ間違いなしという状況だが、ここで稲葉が放った△9五金が勝負手。「すごい手ですね」と解説の村中秀史七段が思わず声を上げた。▲同金は7五の馬のひもが切れるし、▲同玉は入玉へ一歩遠ざかる。

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 村山は▲8三玉と入玉を確定させた。以下は△8六金▲同馬△6五と▲9五馬△7五と▲9四銀△7四と▲9二玉△8四金▲同桂△同と▲8六馬......と、後手が先手の馬を捕まえられるかどうかの勝負となったが、村山が辛くも逃げ切り、チームに初白星をもたらした。「一番うれしい勝ち、じめこ神」とは思わずもれた斎藤のつぶやきである。

 だが、第4局の船江―都成戦、第5局の久保―村山戦を相次いでチーム稲葉が勝ち、勝ち抜けに王手をかけた。

【第6局 船江恒平六段―斎藤慎太郎八段】

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 後がなくなった「ここ一番」は第6局で斎藤が再登場。船江を下して徳俵で踏みとどまると、第7局でも斎藤が連闘し、今度は久保を破った。

【第2図は▲2八飛まで】

 第2図は第6局の船江―斎藤戦。ここで△3九角と打つのは▲3八飛△8四角成の瞬間がやや甘い。斎藤の指した△6六歩は△3九角をより効果的にする予備工作で、▲同歩なら△3九角▲3八飛△6六角成が9九の香当たりになるという理屈である。船江は△6六歩に対し▲5五銀と補強したが、△8八歩がまたプロなら第一感ともいうべき手裏剣の歩で、▲同金は壁になる。実戦の▲7七桂には△8九歩成とと金を作った斎藤がリードを奪って押し切った。

【第9局 都成竜馬七段―久保利明九段】

 リーダーが勢いをつけたか、第8局では村山が船江を破ってついにチーム斎藤がタイに追いついた。全てを決める最終第9局は久保―都成戦。再び行われた振り駒の結果、都成の先手番となる。それぞれ、
「一番棋譜並べてきた先生なので、全力でぶつかります」(都成)
「座右の銘である前後際断の通りに最終局へ臨みます」(久保)
と、対局前に意気込みを語った。

 戦型は久保の四間飛車対、都成の居飛車という対抗形に。中盤では都成がリードを奪ったが、さばきのアーティストではなく粘りのアーティストの一面を発揮した久保は決定打を許さずについて行く。そうして迎えたのが第3図だ。

【第3図は△8八金まで】

 この金を角と玉のどちらで取るかが明暗を分けたか。都成は▲8八同角と角で取ったが、△7八金▲9八玉△8八金▲9七玉に△7五角が王手と同時に▲9三桂成以下の詰みを消す攻防手となった。以下は都成の頑張りを的確に振り切った久保が勝利し、チームの勝ち抜けを決めた。戻って第3図では▲8八同玉ならば△6八竜に▲7八金△7六桂▲8九玉で危ないようでも先手玉は耐えていたが、これはもう指運というしかないだろう。「勝ち負けを別にしてもいい将棋を指せたので満足している。将棋に命を懸けている棋譜を見せることが出来た」とは最終局を戦い終えた久保の言葉である。

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久保VS都成 対局終了直後

 本戦トーナメント1回戦第二試合の最終結果は以下の通り
第1局 稲葉◯-●都成
第2局 稲葉◯-●斎藤
第3局 稲葉●-◯村山
第4局 船江◯-●都成
第5局 久保◯-●村山
第6局 船江●-◯斎藤
第7局 久保●-◯斎藤
第8局 船江●-◯村山
第9局 久保◯-●都成
総合「加古川観光大使」5勝―4勝「ここ一番」

 次週は本戦トーナメント2回戦第一試合、予選Dリーグ1位のチーム永瀬「川崎家」VS予選Eリーグ1位のチーム渡辺「ホームラン」という対戦となる。8月7日(土)17:00~の放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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