ライター一瀬浩司
少しの違いで大失敗?▲2四歩のタイミングを見極めよう!【矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年04月18日
今回のコラムは、矢倉での4七銀、3七桂型から攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図です。
【第1図は△4四銀まで】
いま、▲4五歩△同歩▲同桂に△4四銀と後手が銀をかわした局面です。ここから、薄くなった玉頭を狙い、▲2四歩(第2図)と突くとどうなるかを見ていきましょう。
【第2図は▲2四歩まで】
第2図から▲2三歩成△同金▲2四歩とされると後手はひとたまりもないので、△2四同歩と取ってきます。対して、先手も▲2四同角△同角▲同飛と平凡に交換をしていきます。そこで、△2三歩と王手を受けられた局面での引き場所が問題となってきます。まず、元の位置に戻る▲2八飛はどうでしょうか?
△4五銀には▲4六歩と打てば、相変わらず桂は取られても銀を取り返せる。と、いうわけではありません。2筋で歩のほかに角も交換しているので、▲4六歩のときに△3七角(第3図)と打たれる手が生じています。
【第3図は△3七角まで】
第3図では、飛車をどこに逃げても△4六銀とされ、▲同銀△同角成となると銀交換に持ち込まれて先手の桂損がそのまま残ってしまいます。また、▲2八飛の瞬間にすぐ△3七角と打たれても▲2七飛は△1九角成と香を取られますし、▲1八飛や▲2九飛はそこで△4五銀と取られたり、△4六歩と打たれたりしてこれも先手不利となってしまいます。▲2六飛と引くのも同様にすぐに△3七角と打たれたり、△4五銀と取られてまずいです。
では、▲2五飛はどうでしょうか? これなら△3七角は当たりになりませんし、4五の桂にもヒモは付いています。しかし、これでも△3七角と打たれると、1九の香取りと△4六歩、さらに△4八角成と銀取りに成る手まであるので、これも芳しくありません。▲2七飛と引く手も有力ですが、ここはいちばん下段へ▲2九飛と引く手が正解となります。
ただし、ここでも△3七角と打たれる手には気をつけなければなりません。部分図ではなくなってしまいますが、第4図は実際にプロの対局で何度も指されている局面です。
【第4図は△3七角まで】
△4五銀、△4六歩、△4八角成など、いろいろあって先手がまずそうですが、もう一度▲2四歩と合わせる手が好手です。△2四同歩に▲5一角と桂取りに打ちます。そこで、後手も3七の角筋を生かして△6五歩と突いて、攻めながら7三の桂にヒモをつけてきます。そこで、▲2四角成とできるのが2筋を打ち捨てた効果です。△2三歩に▲5七馬と手順に引き付け、△6四角成▲4六銀(第5図)が進行の一例です。
【第5図は▲4六銀まで】
このように、4筋を突いてから2筋を交換する指し方はお互いに馬を引きつけ合うような将棋になります。これは互角の進行ですが、例えばもし後手が△7三桂と跳ねていない形でしたら▲5一角と打ち込んだ手がなんでもないので、△6五歩ではなく△4二歩と打たれると角が危なくなり、先手失敗となります。▲2四歩と突く手は、少しの違いで大失敗することもありますので、後手の形を見ていけるかどうかを気をつけて判断しましょう。やや難しい指し方ともいえますね。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。