ライター一瀬浩司
定跡ではなく自分で構想を考えていきたい人にオススメ、カニカニ金に組む際の注意点と発展形
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年12月22日
前回のコラムでは、さまざまな指し方がある戦法「カニカニ金」の組み方を見ていきました。今回は、カニカニ金に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
それでは、まずは囲いの組むまでの手順の復習です。(※後手番の戦法ですので、実際は後手ですが見やすいように先手側にしてあります)
初手から▲2六歩、▲7六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八銀、▲7八金、▲6九玉、▲5八金、▲5七金、▲5五歩(△同歩)、▲4六金、▲5五金、(△5四歩)▲5六金(第1図)。
【第1図は▲5六金まで】
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:カニカニ金もカニカニ銀のときと同じように、角筋を止めないところが大切になります。手を進めているうちに△4四歩と突くことはありますが、最初から突いてしまうと、角筋を生かした急戦ができなくなってしまいます。例えば、▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲6六歩スタートの先手番でカニカニ金を使おうとしてみます。一例が第2図です。
【第2図は△6三銀まで】
もし、6六の歩が6七でしたら、▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩▲2五歩などのような、角筋を絡めた攻めができますが、第2図のように角筋が止まっていると迫力がありませんよね。▲7七銀や▲6六歩と、角筋を止める必要がある先手番で指されない、大きな理由だと思います。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形:さまざまな指し方がありますので、児玉八段の実戦を元に見ていきましょう。第3図をご覧ください。
【第3図は▲7七角まで】
平成14年11月12日、第61期順位戦C級1組、▲小林裕士五段ー△児玉孝一七段戦(肩書は当時)です。後手陣は伸び伸びとしており、4五の位も5七銀の活用も抑えていて、とてもよい形ですよね。ここから△8六歩▲同角△6五歩と攻めていきました。
次に第4図です。
【第4図は△3一玉まで】
平成7年12月22日、第54期順位戦B級2組、▲小野修一七段ー△児玉孝一六段戦(肩書は当時)です。平成7年の将棋ですが、後手陣は現在流行のツノ銀雁木のような形ですよね。5筋を交換できており、5四の金も重要な攻め駒となっていて、ツノ銀雁木よりも仕掛けやすそうですよね。ここからは▲3七桂△3三角▲4六銀△5一角▲2六飛△2二玉と進み、じっくりとした将棋になりました。
最後に第5図です。
【第5図は△4五歩まで】
平成11年2月12日、第57期順位戦B級2組、▲淡路仁茂九段ー△児玉孝一七段戦(肩書は当時)です。△5一銀右と引きつけた将棋ですが、後手陣は左辺に金銀が集中し、第3図や第4図と比較すると堅固になっていますね。角筋も通り、機を見て△7三桂~△6五歩などの仕掛けが楽しみです。
ほかにもナナメ棒金に出て金を7四に配置する指し方などもありますが、今回は金を5四に配置する形に絞って発展形をご紹介しました。定跡はあまり好みではなく、自分で構想を考えていきたい、という方にはオススメです。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。