ライター一瀬浩司
端歩の関係の違いが非常に大きく攻めに表れる。矢倉における4六銀、3七桂型の攻め方とは【第102回 矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年07月29日
今回のコラムも、矢倉で1筋の端歩を突き合っている形で4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。
▲3三歩と打ち込む別の攻め方
【第1図は△6四角まで】
いま3五で銀交換が行われ、△3四歩▲6八角△6四角と進んだ局面です。前回はここで▲1八飛と回る手を見ていきましたが、△1六銀と打たれてうまくいきませんでした。今回は別の攻め方を見ていきましょう。▲3三歩(第2図)と打ち込んでいきます。
【第2図は▲3三歩まで】
第2図から、△3三同金寄なら▲同桂成△同金に▲4六歩と受けておいて、金桂交換の駒得の先手がよいです。次に、△3一金はどうでしょう? 後手玉は狭く、いかにも危ない形でなにかあってもおかしくないですね。▲1五香と走り、△同香に▲1三銀と打ち込んでいきます。△1三同桂は▲同角成で寄り筋なので、△1一玉と打ち歩詰めの形で耐えようとしてきますが、▲1四歩(第3図)とじっと打っておけば、▲1二銀成△同玉▲1三歩成△1一玉▲2三との狙いがわかっていても受かりません。
【第3図は▲1四歩まで】
第3図で△1二歩は▲同銀成ですし、△2二銀も▲同銀成△同金▲1三歩成で1三の地点が足りませんね。△3五香と角筋を止めようとしても、▲同角で▲1二香までの詰みが生じているので、これも受けになっていません。
次に第2図から△4二金寄ですが、▲3二銀と打ち込み、△5三金寄は▲3四飛と走れば、△1九角成には▲2一銀成△同玉▲3二歩成△同金▲3三桂成で潰れですし、△3三桂には▲3一銀不成が好手で、△同玉▲3三桂成でこれも突破できます。
よって▲3二銀には△同金ですが、▲同歩成△同玉▲1五香△同香▲3三歩で攻めが続いていきます。 第2図で△3三同桂には、▲1五香(第4図)と走ります。
【第4図は▲1五香まで】
第4図から△1五同香なら、これまでに何度も出てきている詰み筋ですが、▲1三角成△2一玉▲1二銀までですね。よって△2五桂と桂のほうを外してきますが、▲1一香成として、△同玉は▲2五歩と桂を取り返しておいて、▲1三角成や▲1八飛が残って先手よしです。▲1一香成に対し、△1七桂成には▲2一銀(第5図)が厳しい一手になります。
△1七桂成には▲2一銀が厳しい一手
【第5図は▲2一銀まで】
第5図から、△2七成桂には飛車を逃げておく手もありますが、▲1三角成! として、△同玉には▲3二銀成と金を取っておけば△3八成桂には▲1四歩△同玉▲2五金△1三玉▲1四香までの詰みがありますし、△1四歩と受けても▲1五歩の追撃が厳しいです。以下、△1六銀には▲1八香、△2六成桂には▲2九香がありますし、△1五同歩も▲2五金で受けにくい形です。▲1三角成に△3三玉は、▲3二銀成△同玉に飛車を逃げておけば、次に▲1二成香と引いて攻めていけますし、△2二銀と打たれても▲1二馬で▲2一馬や▲2一成香が残ります。
これにて、端歩を突き合っている形の4六銀、3七桂型も終了となりますが、なかなか難しかったですね。突き越してある形と同様に攻める場合もありましたが、別の指し方でないと攻めきれないことも多々あり、端歩の関係の違いは非常に大きいことがお分かりいただけたかと思います。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。