将棋コラム

羽生竜王、通算獲得タイトル100期目なるか。羽生善治VS佐藤天彦、名人戦七番勝負の展望は?

羽生竜王、通算獲得タイトル100期目なるか。羽生善治VS佐藤天彦、名人戦七番勝負の展望は?

ライター: 相崎修司  更新: 2018年04月12日

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将棋界における年度初めの風物詩ともいえる名人戦七番勝負は今期で第76期を迎えた。開幕の第1局は4月11日に東京都文京区のホテル椿山荘東京で行われる。

今期の名人挑戦者を決めるA級順位戦は異例の混戦となった。第44期以来となる11人リーグだったこともその一因だろうし、また最終結果として6勝4敗の6名が横一線で並び、前代未聞の6者プレーオフ(過去の最高は4者プレーオフ)が実現した。

その混戦を抜け出したのは羽生善治竜王。挑戦者決定戦となった稲葉陽八段とのプレーオフ最終戦を快勝し、2期ぶりに名人戦の舞台へ登場を決めた。2年前に名人を奪われた佐藤天彦名人へのリベンジ戦ともなる。

羽生善治竜王
第75期名人戦七番勝負第1局、昼休明けの羽生名人(※肩書は当時)。撮影:常盤秀樹

羽生竜王が挑戦したことで、今期の名人戦七番勝負は特に注目されるだろう。なんといっても、羽生には史上空前である「通算獲得タイトル100期」の達成が期待されているのだ。永世七冠を実現した昨年の竜王戦に勝るとも劣らぬほどに、ファンの関心を集めるのではないかと思う。

また、第1局には羽生の公式戦通算1400勝(大山康晴十五世名人以来2人目)もかかっている。先日の王位リーグ、対村山慈明七段戦で1399勝目を挙げた時も報道されたのだから、羽生の一挙手一投足に世の耳目が集まっているといっても過言ではない。

その羽生自身の最近の調子はどうだろうか。昨年度は王位と王座のタイトルを連続して失冠し、2004年以来となる一冠までに追い込まれたが、通算99期目のタイトルとなった上記の竜王戦では、随所に力強さを見せ、4勝1敗で竜王復位。またA級プレーオフでは豊島将之八段と稲葉八段の若手実力者を圧倒した。自身にとっては2003年以来となる竜王・名人の大二冠復帰へ、ピタリと照準を合わせているようにみえる。

対して迎え撃つ佐藤天彦名人はどうか。前期は稲葉八段を4勝2敗で下したが、それ以降の調子が今一つと見える。名人防衛を決めて以降、活躍といえそうな実績が棋王戦ベスト4進出では、やや寂しいと言わざるを得ない。不調の一因として、2年前に自身の名人獲得の原動力となった、横歩取り後手番における苦戦があるかもしれない。先日、升田幸三賞を受賞した横歩取りの勇気流青野流は、いずれも先手番での有力な対策だ。佐藤は今年の1月から3月にかけて横歩取りの後手番を4局指しているが、1勝3敗。2年前の佐藤を見たものからすれば信じ難い結果だろう。

佐藤天彦名人
第76期名人戦七番勝負第1局、昼休明けの佐藤名人。このシリーズ、佐藤名人は稲葉八段の挑戦を退け防衛を果たした。撮影:常盤秀樹

とは言え、佐藤は名人である。2期目の防衛戦ということで、昨年以上に七番勝負への照準の合わせ方は熟知しているだろうし、また2年前に羽生を圧倒して名人を奪取した手ごたえは、自身が一番持っているだろう。

また、名人戦七番勝負の2日制9時間というのは、他に例がない名人戦独自の制度だ。この長時間により適性を持つのはどちらだろうかということにも興味が集まる。


第75期名人戦七番勝負第1局、駒を並べる羽生名人と佐藤八段(※肩書は当時)。撮影:常盤秀樹

ちなみに名人戦七番勝負が行われる4~6月は他棋戦がさほど組まれない。そのこともあって、今期の両者が名人戦と並行して戦うのは、羽生の王位リーグくらいである。羽生にだけ貴重な実戦感覚を養う場があると見るべきか、佐藤が研究と休養を十分にして名人戦七番勝負に全力投球できるとみるべきか。

タイトル通算100期への期待も加えて、下馬評には羽生乗りの声が集まりそうだが、それをもバネにして佐藤が名人の底力を見せるか。注目のシリーズである。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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