ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年03月30日
前回に続き、歩を使った手筋の格言を見ていきます。やはり歩をたくさん持っている時は技を使って手を作りやすいのです。
【第1図】
前回の第1図と似ていますが、今回は2筋ではなく1筋の攻め方です。ここから▲1五歩△同歩▲1二歩△同香▲1三歩が手筋の攻め方。対して△1三同角なら▲1五香、△1三同桂には▲1四歩です。
自然な対応は△1三同香ですが、それには▲1四歩△同香▲2四歩△同歩▲同飛と攻めます。
意外にもこれで1四の香を助ける手段がないため、次に▲1四飛と香を取って先手の攻めが成功しています。
ちなみに持ち歩が2枚の場合なら▲1二歩を省略して▲1三歩と垂らしておく筋もあります。取ってくれるなら1歩節約した勘定ですが、後手にも△3三角のように1五の地点を受ける変化を与えるため、時と場合によるでしょう。
【第2図】
第2図は美濃囲いの崩し方です。これまでも見たことのあるおなじみの手筋でしょう。第2図から▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂が美濃囲いに対する基本的な端攻め。これで▲9四桂を見て手になります。こちらも持ち歩が少ない場合、節約したい場合には▲9二歩とたたかずに▲9三歩と垂らす手が成立することがあります。局面全体を見てどちらを選ぶか判断したいところです。
【第3図は▲7七銀まで】
第3図は髙﨑一生六段の実戦から(2011年11月、順位戦C級1組・▲稲葉陽五段)。ゴキゲン中飛車から先手の作戦は丸山ワクチン。後手の髙﨑六段が早い動きを選択し、図を迎えました。先手は右辺が厚く、こちらからの攻略は困難です。しかし3枚の持ち歩を生かす格言通りの攻めがありました。
第3図から△9五歩▲同歩△9八歩▲同香△9七歩▲同香△9六歩▲同香と吊り上げて△7四角が狙いの攻め。これで香取りが受からず、後手の駒得が確定しました。以下▲6六銀△5五歩▲7七金△9六角▲4七金△5二金上と長い展開になり、歩切れで難しいところもありますが後手も十分戦える形勢です。
【第4図は△3六馬まで】
最後は羽生善治竜王のタイトル戦の将棋から。後手の振り飛車穴熊に対し、先手は端に飛角桂香を集中して攻め潰す態勢です。自然な攻めは▲9三桂成~▲9四歩や▲9四歩△同歩▲9三歩ですが、この場合は先手の持ち歩が多いため、より厳しい攻め方がありました。
第4図から▲9四歩△同歩▲9五歩△同歩▲9四歩が前回習った「継ぎ歩と垂れ歩」の攻めです。指す手のない後手は△9四同香と言いなりになるくらいですが、▲9二歩△同玉▲9五香△同香▲9三歩(第5図)まで後手の投了となりました。
【第5図は▲9三歩まで】
以下は△9三同桂なら▲9五飛で受けなしです。うまく▲9二歩のたたきを入れながら攻めることによって、後手に△9二歩と受ける余地を消すことに成功しました。実戦でここまでうまくいくことは珍しいですが、持ち歩の多さを生かした穴熊攻略の端攻めでした。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段