将棋コラム

秒読み将棋に学ぶ、最善を積み重ねていくという姿勢【子供たちは将棋から何を学ぶのか】

秒読み将棋に学ぶ、最善を積み重ねていくという姿勢【子供たちは将棋から何を学ぶのか】

更新: 2017年07月11日

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子供たちは将棋から何を学ぶのか

秒読み将棋とは、一手を決められた時間の間に指すというものです。指し手のそのタイムリミットが少しずつ迫ってくる中、集中して考え、次の一手を決断していくことを連続していきます。そこには、濃密な時間が流れているのです。

秒読み将棋で驚異の集中力を見せる子供たち

将棋の対局の中でも、特に秒読み将棋は集中力を必要とします。秒読み将棋とは、一手を決められた時間の間に指すというものです。多くの場合は30秒、プロの場合は1分という短い時間内に指さなければなりません。 考える時間が限られているので、ほんの一瞬でも気を抜くことはできません。そのじりじりとした集中のほどは、プロに限らず、子供たちの対局でも端で見ていて痛いほど伝わってきます。

子供たちの参加する将棋大会には、保護者の皆さんも大勢応援にいらしていますが、なかには対局中にどこかに行ってしまわれる方がいます。ぜひその時の子どもの姿をご覧になって欲しいと思います。「うちの子はこんなに集中できるんだ!」と驚かれるはずです

子供たちが真剣に将棋を指している姿を親が覚えておいてあげて、「あそこであれだけ考えられるなんて偉いね」と褒めてあげてはいかがでしょうか。何か辛いことがあって子供が落ち込んでいるようなときがあれば、「あなたはああいうことができるのだから大丈夫よ」と背中を押してあげることが大事なことなのです。

テストでいい点を取ったとき、成績を取ったときに「よく出来たわね」と褒めることは皆さんなさるでしょう。しかし、対局でじっと一生懸命考えたけれど、「負けました」と宣言せざるを得なかった。そんなときに「よく考えていたわね」と言ってあげられたら、どれほど子供のやる気になるかしれません。

頑張っている子供にしっかりと目を向けて、励ますことが子供にやる気と勇気を与え、きっと次に繋がると思うのです。

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30秒将棋に如実に表れる、トータルな人間力

30秒という短い時間の中で最善を尽くすべく真剣に考えて、一手を指す。これを見ているだけでもハラハラしますが、実際に対局しているほうはもっと緊張の連続です。秒読み将棋には、本当に指し手の人間力が如実に現れます。指してみればわかりますが、30秒は思っている以上に短く、あっという間に経ってしまいます。

お互いの戦力や戦形を見極めて、先の先まで読もうとしても、短い時間に多くのことを読めるものではありません。早く読まなければと思えば思うほど焦ってしまい、そうなるとますます考えられなくなってしまいます。そんな秒読み将棋ですから、とっさの決断力、責任力などトータルな人間力が試されるのです。

将棋では必ず未知の局面に遭遇します。いくら過去の棋譜を勉強していても、未知の局面では参考程度にしかならず、その場で考えていく必要があります。「勝ちたい」「負けたくない」という心理が邪魔をして、どう指したらいいのか手が見えなくなる時もあります。

こうなると冷静さを失ってしまいがちですが、そういうときこそ羽生三冠のアドバイスを思い出して、直接的な手ではなく間接的な手を選ぶことが大切です。直接的な手で、一気に決めてやろうなどと思わずに、ぐっとこらえて、ぐっと抑えて最善と思える手を指すようにするのです。お互いに30秒ずつしかを持つ時間がないのですから、多くのことを読み切れないのはお互い様です。一見、地味なようでも大丈夫な手をつないでいく感覚で、転ばないように歩いていくことが大切です。

弱さを正面から向き合い、次への糧にする

もうひと押しで勝てそうだからと、ムキになって強烈なスマッシュを打つのではなく、「じゃあ私はこうします。あなたはどうしますか?」というように、相手に委ねる気持ちで局面を見ることができるかどうか。実はそこが勝負の分かれ目なのです。

そういう意味で秒読み将棋でこそ将棋の本質である、最善を積み重ねていくという姿勢を学ぶことができると言えるでしょう。限られた時間の中でも、自分を見失わず最善の手を指すなど、プロ棋士でも難しいことです。こういう時にはどうしても自分の弱さが出てしまうものです。

弱さが出てしまうのがいけないのではなく、むしろ仕方のないことです。いけないのは、その弱さを隠そうと、「時間がなかったから」と秒読みを敗戦の言い訳にしてしまう態度です。言い訳をするのではなく、自分の弱さに向き合って、自分はこういう風になってしまうんだなと振り返ればいいのです。 振り返ってそれを糧にして次に活かせばいい、それは将棋だけではなく生活態度や生き方にもつながることです。

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わからない事態に陥ったとき、どう考えていけばいいのか

テストの時残り5分で問題を解かなければならないというとき。問題もまだ残っているし、見直しもしなければいけない。そんなとき、切羽詰まってどうしようどうしようと慌ててしまうもの。しかし秒読み将棋を実体験することで、どうしたらいいのか考えていく力を養うことができるのです。そして、迷いを断ち切りスパッと決断して、一手を指すのです。

人生ではどうしたらいいのか、わからない事態に陥ることがあります。その時にどう対処すべきかの心構えと、ぐっと我慢して考えることの大切さを、秒読み将棋は教えてくれるのです。

子供たちは将棋から何を学ぶのか

安次嶺隆幸

ライター安次嶺隆幸

私立暁星小学校教諭。公益社団法人日本将棋連盟学校教育アドバイザー。 2015年からJT将棋日本シリーズでの特別講演を全国で行う。中学1年生のとき、第1回中学生名人戦出場。その後、剣持松二九段の門下生として弟子入り。高校、大学と奨励会を3度受験。アマ五段位。 主な著書に「子どもが激変する 将棋メソッド」(明治図書)「将棋をやってる子供はなぜ「伸びしろ」が大きいのか? 」(講談社)「将棋に学ぶ」(東洋館出版)など。

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