ライター日本将棋連盟モバイル編集局
3勝3敗で迎えた竜王戦七番勝負ついに決着!加藤九段vs藤井聡四段、62歳差対決を制したのは...【12月19日~25日の中継結果まとめ】
ライター: 日本将棋連盟モバイル編集局 更新: 2016年12月26日
日本将棋連盟モバイルにおける12月19日~25日の中継局の結果をまとめてお伝えします。
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竜王戦、渡辺明が防衛、V11
○渡辺明竜王-●丸山忠久九段
渡辺明竜王に丸山忠久九段が挑戦する第29期竜王戦七番勝負は3勝3敗(星の並びは渡辺明竜王から見て第1局から○●●○○●)となり、21日(水)から22日(木)にかけて、新潟県南魚沼市「温泉御宿 龍言」で第7局が行われた。最終局のため、改めて振り駒によって先後を決め、後手番になった丸山九段が得意の一手損角換わりに誘導する。シリーズを通じて4度目の後手番だが、すべて一手損角換わりの起用だ。一方の渡辺明竜王は、これまで先手番だった第2、4、6局は丸山九段の一手損角換わりに腰掛け銀で対抗していたが、本局では早繰り銀を採用した。渡辺明竜王が丸山九段の9筋からの攻撃を余す展開で、反撃の手番が回ると手早く寄せ、タイトル防衛を決めている。これで渡辺明竜王は連続2期、通算11期目の竜王位獲得となった。
竜王戦
第29期七番勝負と並行して開幕した第30期は、各組でランキング戦が進行している。
2組
●行方尚史八段-○森内俊之九段
▲行方尚史八段-△森内俊之九段戦という、2組にして重厚なカードが1回戦で実現した。横歩取り8四飛戦法に進み、行方八段が浮き飛車を5筋に転回して玉頭を狙う。森内九段は▲5三角成の王手に△4一玉とかわす、驚愕の組み立てを披露した。急所に馬を作って先手がよさそうに見えるが、後続が難しく、金銀の働きのよさで後手が指せるという。ペースを握った森内九段が冷静な指し回しで勝ちきっている。
4組
●中川大輔八段-○高見泰地五段
▲中川大輔八段-△高見泰地五段戦は横歩取り模様の出だしから、中川八段が飛車先交換を保留して相掛かりに進んだ。中盤のねじり合いから抜け出した高見五段が制している。
5組
○渡辺正和五段-●青嶋未来五段
前期、6組ランキング戦を優勝して決勝トーナメントで3勝を挙げる活躍をした青嶋未来五段が登場。後手番で渡辺正和五段を相手に角換わり腰掛け銀で戦う。先手2九飛、4八金型、後手6三金型で青嶋五段が6筋から先攻する構えを見せるも、渡辺正五段がうまく立ち回って優位を築き、粘りを許さずに押し切った。
6組
●岩根女流三段-○近藤誠也四段
○加藤桃子女王-●宮田利男八段
●加藤一二三九段-○藤井聡太四段
●東和男八段-○中島灯希アマ
4つある女流枠から岩根忍女流三段と加藤桃子女王が登場。いずれも相矢倉で戦っている。▲岩根女流三段-△近藤誠也四段戦は、駒がぶつかると先手の駒が下がる展開になり、優位に立った近藤誠四段が快勝した。▲加藤女王-△宮田利男八段戦は、大駒4枚を手にした宮田利八段が長く有利に進め、入玉を見せて磐石の態勢を築く。辛抱強く指していた加藤女王が勝負手を繰り出し、宮田利八段が対応を誤ると、最後は加藤女王が逆転で制した。▲加藤一二三九段-△藤井聡太四段戦は、最年少四段昇段記録を更新した藤井聡四段のデビュー戦。現役最年長棋士の加藤九段との史上最高年齢差対決でもあり、多くのメディアが取材に殺到する中で行われている。将棋は相矢倉に進み、加藤九段の猛攻を冷静にかわした藤井聡四段が、鋭く反撃を決めて勝った。5つあるアマチュア枠からは、中島灯希アマが3番手として登場。東和男八段を相手に後手番となり、阪田流向かい飛車で挑む。戦いが始まってからは東八段がペースを握っていたが、ミスを重ねて逆転を許し、中島アマが制している。中島アマは長森優作アマ、石井直樹アマに続く勝利で、1回戦はアマチュア勢の勝ち越しが決定した。
順位戦(カッコ内はリーグ順位)
A級
○稲葉陽八段-●佐藤康光九段
c名人戦棋譜速報
6回戦が終了。▲稲葉陽八段-△佐藤康光九段戦は佐藤康九段のダイレクト向かい飛車から、序盤は駒の損得なく、先手が角、後手が角金を手持ちにする展開に。佐藤康九段は2筋突破を図り、稲葉八段は飛車を5筋に転回して戦う。中盤のねじり合いでは佐藤康九段がいいと見られていたが、終盤で逆転。稲葉八段が勝ち、6連勝と星を伸ばしている。リーグ成績は以下のとおり。
【6勝0敗】稲葉八段(9)
【4勝2敗】羽生善治三冠(1)、行方尚史八段(2)、広瀬章人八段(7)
【3勝3敗】渡辺明竜王(3)、屋敷伸之九段(5)、深浦康市九段(8)
【1勝5敗】佐藤康九段(4)、森内俊之九段(6)、三浦弘行九段(10)。
B級1組
○糸谷哲郎八段-●久保利明九段
○木村一基八段-●畠山鎮七段
c名人戦棋譜速報
10回戦6局のうち5局が進行。6勝2敗で山崎隆之八段と並びながらも順位差でトップだった久保利明九段は、糸谷哲郎八段を相手に後手番で四間飛車から穴熊に囲う。薄い玉形で立ち向かった糸谷八段は、徐々に玉を固めて優位を築く。久保九段は粘りを見せて優劣不明の大熱戦に持ち込むが、197手の攻防の末に最後は力尽きた。6勝3敗で追う木村一基八段は、畠山鎮七段と対戦。角換わりから、22時30分近くになってようやく戦いが始まるという、ジリジリとした展開に進む。後手番の畠山鎮七段が盤上に角を放って動いていったが、木村八段が強く対応し、攻めを切らせて勝った。先週からさらに勢力図は変わり、上位の成績は以下のとおり。
【7勝2敗】山崎八段(10)
【7勝3敗】木村八段(5)
【6勝3敗】久保九段(2)、阿久津主税八段(9)
【5勝4敗】豊島将之七段(6)、糸谷八段(12)。
C級1組
●青嶋未来五段-○永瀬拓矢六段
●高橋道雄九段-○横山泰明六段
○大石直嗣六段-●福崎文吾九段
●安用寺孝功六段-○千田翔太六段
c名人戦棋譜速報
9回戦が行われた。6戦全勝の青嶋未来五段と5勝1敗で追う永瀬拓矢六段の一戦は、初対戦の同門対決。後手番の青嶋五段が得意の四間飛車穴熊に組むと、永瀬六段も居飛車穴熊で対抗し、互いに馬を作る展開となる。青嶋五段は左金を囲いから離して先手の馬を閉じ込めたが、永瀬六段が巧みに手を作って兄弟子の貫禄を示した。もうひとりの全勝、横山泰明六段は高橋道雄九段と対戦。先手の高橋九段が横歩取りから5六に飛車を転回し、横山六段はその飛車を圧迫して入手すると、反撃を許さずに押し切っている。5勝1敗の大石直嗣六段は、福崎文吾九段を相手に先手で左美濃急戦に持ち込む。玉を固めて駒をさばくという勝ちパターンで、15時前に相手を投了に追い込んだ。▲安用寺孝功六段-△千田翔太六段戦は▲5六歩△4二玉▲7六歩△3二銀の出だしから、安用寺六段が袖飛車を採用した。相手の手に乗って戦いを進めた安用寺六段が指しやすい分かれだったが、最後は逆転して千田六段が制している。上位の成績は以下のとおり。
【7勝0敗】横山六段(13)
【6勝1敗】千田六段(14)、大石六段(19)、小林裕士七段(21)、青嶋五段(33)、永瀬六段(34)
【5勝2敗】杉本昌隆七段(2)、千葉幸生六段(15)、平藤眞吾七段(20)。
C級2組
●増田康宏四段-○及川拓馬六段
●三枚堂達也四段-○岡崎洋六段
c名人戦棋譜速報
8回戦の残っていた13局が行われた。6戦全勝だった増田康宏四段は及川拓馬六段と対戦。先手で横歩を取らず、互いの飛車先が通った形からいきなり激しい順に突入した。16時台前半という早い時間帯に及川六段が制している。同じく全勝だった三枚堂達也四段は、岡崎洋六段の後手中飛車に居飛車穴熊で対抗。金銀4枚が玉側に偏った形からさばきを目指すが、岡崎六段が丁寧に面倒を見て穴熊を姿焼きにした。これで全勝はいなくなり、上位の成績は以下のとおり。
【7勝1敗】門倉啓太五段(37)
【6勝1敗】増田康四段(5)、三枚堂四段(7)、高見泰地五段(15)、西尾明六段(16)、近藤誠也四段(49)
王位戦
予選
●都成竜馬四段-○澤田真吾六段
各ブロックが佳境を迎えている。8つある予選ブロック中、最初にブロック決勝を迎えたのは東西の棋士による混成となった「6」ブロック。屋敷伸之九段、久保利明九段、橋本崇載八段、稲葉陽八段といった面々が名を連ねるなか、澤田真吾六段と都成竜馬四段という、関西本部所属の若手棋士同士が勝ち上がった。都成四段が先手で、角交換型の先手中飛車に進む。中盤のねじり合いから都成四段に一矢が出て、澤田六段が挑戦者決定リーグ入りを果たした。澤田六段が王位戦挑戦者決定リーグを戦うのは、これで3期目だ。
王座戦
一次予選
○千田翔太六段-●村田智弘六段
各ブロックが佳境を迎えている。「ホ」ブロック決勝となった▲千田翔太六段-△村田智弘六段は初手▲3八銀から相掛かりに進んだ。中盤の入り口、村田智六段が角で歩を取って1歩得したが、その角の引き場所を誤る。流れを引き寄せた千田六段が優位を拡大して勝ち、二次予選進出を決めた。
棋王戦
第43期予選
●石川陽生七段-○上野裕和五段
各ブロックが進行中。▲石川陽生七段-△上野裕和五段戦は先手三間飛車、後手四間飛車の相振り飛車で、早々に角を交換する展開に。互いに向かい飛車に振り直しての攻め合いは、上野五段の攻撃のほうが厳しく、最後は一方的に攻め倒している。
マイナビ女子オープン戦
本戦
●室谷由紀女流二段-○里見香奈女流五冠
2回戦第2局は▲室谷由紀女流二段-△里見香奈女流五冠戦となった。室谷女流二段の三間飛車に、里見香女流五冠が居飛車にして5三と6三に銀を2枚並べる形で対抗。角交換から1筋が戦場になり、互いに相手の玉の近くに成り駒を作って迫る。室谷女流二段は▲3七玉~▲4七玉と中段で粘る形を作るも最善手を逃し、最後は里見香女流五冠が制した。
Xmas 将棋チャリティー 2016 in 関西
公開対局
○都成竜馬四段-●大橋貴洸四段
○稲葉陽八段-●斎藤慎太郎六段
関西本部所属の若手棋士の意向により実現したという「Xmas 将棋チャリティー 2016 in 関西」が、大阪市北区茶屋町の「MBSちゃやまちプラザ」で行われた。「新四段早指し対決」の▲都成竜馬四段-△大橋貴洸四段戦は先手三間飛車対後手右四間飛車から熱戦が展開され、「特選対局」の▲稲葉陽八段-△斎藤慎太郎六段戦は相矢倉に進んだ。結果はいずれも先手の勝ち。ほかにトークショーや「ぐるぐる指導対局」、「1分切れ負けトーナメント」など、イベントの模様がブログで紹介された。経費を除いたイベントの収益は、毎日新聞大阪社会事業団を通じて熊本地震、東日本大震災の義援金として寄付される。
トピック
24日に行われた第30期竜王戦6組ランキング戦、▲加藤一二三九段-△藤井聡太四段戦は、もうすぐ史上最高齢現役棋士の年齢に達する加藤九段と、史上最年少棋士としてデビュー戦を迎えた藤井聡四段、いずれもめったにない条件による顔合わせでした。62歳6ヵ月という年齢差の対局は、これまでの記録を4歳近く上回る新記録です。結果は藤井聡四段の勝ちで、14歳5ヵ月の史上最年少勝利の新記録を樹立しました。また、加藤九段はこれで19、20、21世紀生まれの3世紀にわたる棋士と公式戦を指した、唯一の棋士としての記録を作っています。さらに加藤九段は、(故)丸田祐三九段が持つ最年長勝利記録の年齢をすでに超えました。次に白星を挙げた場合、最年長勝利の新記録を打ち立てることになります。(飛龍記者)
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