ライター日本将棋連盟モバイル編集局
久保九段、6期ぶりに王将復位。C級1組最終戦、昇級を決めたのは?【3月13日~3月19日の中継結果まとめ】
ライター: 日本将棋連盟モバイル編集局 更新: 2017年03月20日
日本将棋連盟モバイルにおける3月13日~3月19日の中継局の結果をまとめてお伝えします。久保九段が6期ぶりに王将に復位し、女流王位戦は伊藤女流二段が挑戦者に決まりました。
トップニュース
久保九段が4勝2敗で王将復位
○久保利明九段-●郷田真隆王将
第66期王将戦七番勝負は郷田真隆王将2勝、久保利明九段3勝となり、第6局が14日から15日にかけて、静岡県浜松市の「グランドホテル浜松」で行われた。
久保九段の先手向かい飛車から角交換の後、千日手を打開して仕掛ける順があるかどうかがひとつの焦点として進む。久保九段は金を7筋に寄って8筋に備えると、地下鉄飛車を1筋に転回して端からの仕掛けを見せた。
郷田王将は封じ手の△2三金で悪形を余儀なくされ、駒の働きの差で劣勢に陥る。久保九段は指し手が進むごとに自陣を好形にしてリードを広げ、最後は自玉を鉄壁にしつつ、切れない攻撃形を築いて郷田王将を投了に追い込んだ。快勝で4勝目を挙げた久保九段は、6期ぶりの復位で3期目の王将位獲得を果たす。
女流王位戦、挑戦者は伊藤女流二段
●本田小百合女流三段-○伊藤沙恵女流二段
第28期女流王位戦は紅白のリーグ戦が終わり、紅組を5戦全勝で制した本田小百合女流三段と、白組を同じく5戦全勝で制した伊藤沙恵女流二段によって挑戦者決定戦が行われた。
先手の本田女流三段は早々に▲2五歩と飛車先を決め、伊藤女流二段が居玉のまま金矢倉の骨格を作ると、左美濃急戦で猛攻を仕掛ける。伊藤女流二段も反撃を見せてねじり合いになり、再び本田女流三段が少ない駒数ながらも攻めていく。攻めがつながる変化があったものの、実戦は伊藤女流二段が攻めを余して自玉を安泰にし、手番を得ると素早く寄せた。
里見香奈女流王位(五冠)との五番勝負は4月26日(水)、兵庫県姫路市の播磨国総社「射楯兵主神社」で開幕する。
竜王戦
1組
●深浦康市九段-○阿久津主税八段
●郷田真隆九段-○羽生善治三冠
ランキング戦と出場者決定戦(5位決定戦)が並行して進行中。5位決定戦の▲深浦康市九段-△阿久津主税八段戦は角換わり相腰掛け銀になり、阿久津八段の6二金・8一飛型に対して深浦九段が▲4五銀のガッチャン銀で仕掛ける。深浦九段は腰掛け銀を6三に引かせて▲5六角と据え、3四から攻めて好調だったが、阿久津八段に攻撃をかいくぐりながらの入玉を許して投了に追い込まれた。来期は2組で戦う。
ランキング戦2回戦の▲郷田真隆九段-△羽生善治三冠戦は、横歩取りから羽生三冠が8五飛戦法を採用。郷田九段が先攻するも駒を引っ張り込んでしまい、羽生三冠は反撃を始めてからつけ入る隙を与えずに攻め倒した。羽生三冠はランキング戦準決勝に進出し、郷田九段は出場者決定戦の4位決定戦に回る。
2組
○佐藤康光九段-●飯島栄治七段
ランキング戦が進行中。▲佐藤康光九段-△飯島栄治七段戦は佐藤康九段が角道を止めて矢倉模様を見せると、飯島七段は左美濃急戦を採用し、佐藤康九段は片矢倉に5七銀を加えた堅陣で迎え撃つ。飯島七段の動きに乗じて厚みを築いた佐藤康九段が、攻めを余す展開から厳しく反撃を決めて制勝した。
4組
●遠山雄亮五段-○先崎学九段戦
ランキング戦が進行中。▲遠山雄亮五段-△先崎学九段戦は、先崎九段が8五まで歩を伸ばした後に陽動振り飛車にして向かい飛車に構え、△2四歩から早々に飛車交換の乱戦に進む。遠山五段は竜を作るも自陣に追いやられ、先崎九段が飛車を手にしたまま攻める展開に持ち込んで押し切った。
6組
○藤井聡太四段-●所司和晴七段
ランキング戦が進行中。▲藤井聡太四段-△所司和晴七段戦は角換わりに進み、所司七段の腰掛け銀に対して藤井聡四段が2九飛・4七銀・4八金・6八玉の形から▲4五桂と仕掛けて攻勢を取る。後手にも有望な変化があったが、所司七段が対応を誤ると藤井聡四段が鋭く寄せきった。
順位戦(カッコ内は今期成績によるリーグ順位)
C級1組
c名人戦棋譜速報
○永瀬拓矢六段-●福崎文吾九段
○大石直嗣六段-●平藤眞吾七段
○横山泰明六段-●青嶋未来五段
今期、全クラスの最終戦となる11回戦が一斉に行われた。すでに横山泰明六段が昇級を決め、残る1枠を争う中の3番手だった永瀬拓矢六段は、福崎文吾九段と対戦。福崎九段の後手角交換向かい飛車から相穴熊に進み、さばき合いで優位に立った永瀬六段が21時前に福崎九段を投了に追い込む。永瀬六段は昇級をキャンセル待ちにして今期を終了した。
▲大石直嗣六段-△平藤眞吾七段戦は相掛かりの難しい戦い。1手指したほうがよく見えるようなねじり合いから平藤七段が優位に立つも、王手竜取りをかけて竜を取った順が敗着となり、大石六段が苦しい将棋をものにした。大石六段は自力でB級2組への昇級を決めている。
その15分近く後に終局した▲横山泰明六段-△青嶋未来五段戦は、相居飛車の力戦形に進んだ。青嶋五段が金銀バラバラで大模様を張ったのに対し、コンパクトな玉形にまとめた横山六段がうまく戦機をつかみ、青嶋五段の反撃をかわして勝ちきった。横山六段は今期、全クラスを通じて唯一の全勝を達成している。
上位のリーグ成績は以下のとおり。
【10勝0敗】横山六段(1)=昇級
【9勝1敗】大石六段(2)=昇級、永瀬六段(3)
【8勝2敗】千田翔太六段(4)、小林裕士七段(5)、青嶋五段(6)
王位戦
挑戦者決定リーグ
●渡辺明竜王-○佐藤天彦名人
白組の1局が消化された。ゴールデンカードとなった▲渡辺明竜王-△佐藤天彦名人戦は、角換わりの先手2九飛、4八金型に後手6二金、8一飛型と、双方似た形で対抗する。仕掛けを巡る駆け引きから渡辺明竜王が穴熊に組み替えると、佐藤天名人が機敏に仕掛けて快勝した。
白組のリーグ成績は以下のとおり。
【1勝0敗】菅井竜也七段、佐々木勇気五段
【1勝1敗】渡辺明竜王、佐藤天名人、豊島将之八段
【0勝2敗】丸山忠久九段
王座戦
二次予選
○広瀬章人八段-●佐々木慎六段
各ブロックが進行中。▲広瀬章人八段-△佐々木慎六段戦は佐々木慎六段のゴキゲン中飛車に、広瀬八段が超速▲3七銀戦法から馬を作る変化に進める。じっくりした展開から、馬対角の優位差を広げて広瀬八段が押し切った。
棋王戦
予選
●都成竜馬四段-○阿部隆八段
●伊奈祐介六段-○北浜健介八段
各ブロックが進行中。▲都成竜馬四段-△阿部隆八段戦は都成四段が先手中飛車に構え、角交換された後に6筋から銀をぶつけて戦いを挑む。阿部隆八段が薄い玉形をものともせずに1筋から反撃し、都成四段は千日手模様を回避するも、阿部隆八段に攻めきられて敗れた。
▲伊奈祐介六段-△北浜健介八段戦は北浜八段の角道オープンの向かい飛車に始まり、△4四歩と角筋を止めると、互いに飛車を回った4筋から伊奈六段が仕掛ける。北浜八段は飛車を封じ込められて攻め駒が少ない展開だったが、食いつきに成功して最後は手勝ちを収めた。
棋聖戦
決勝トーナメント
○村山慈明七段-●山崎隆之八段
○木村一基八段-●三浦弘行九段
1回戦が進行中。▲村山慈明七段-△山崎隆之八段戦は、山崎八段が△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀と角換わり模様に進めながらも角交換をせず、速攻含みの力戦形に誘導する。歩得を果たした村山七段がうまく立ち回り、相手のミスに乗じて快勝した。
▲木村一基八段-△三浦弘行九段戦は、三浦九段が横歩取り△3三桂戦法を採用し、実戦でこれまで指されなかった手を世に問う。相手の失着を境に優位に立つも、木村八段が粘りを発揮して終盤に千日手が成立。指し直し局は相矢倉から先手の三浦九段が角筋を通して急戦を見せたが、木村八段は一つ一つ丁寧に対応し、攻めを切らして三浦九段を投了に追い込んだ。
新人王戦
○横山大樹アマ-●池永天志三段
トーナメントが進行中。▲横山大樹アマ-△池永天志三段戦は横山アマが、相掛かりから桂をと金に取らせながらも繰り出した棒銀をさばく。自玉を固めて攻める展開に持ち込み、池永三段の反撃を許さずに押し切った。
【AbemaTV特別企画】炎の七番勝負(非公式戦)
第1局
●藤井聡太四段-○永瀬拓矢六段
14歳2ヵ月で史上最年少棋士となった藤井聡太四段がトップ棋士や若手棋士代表格に挑む【AbemaTV特別企画】藤井聡太四段 炎の七番勝負~New Generation Story~の全7局が、放送と同時に独自解説をつけてモバイル中継される。
先週に続く第2局は、昨年の第87期棋聖戦五番勝負でタイトル獲得まであと1勝と迫った永瀬拓矢六段との対戦だ。振り駒で後手になった永瀬六段は、本局の動画放送の解説者で藤井聡四段の師匠でもある杉本昌隆七段を意識してゴキゲン中飛車を採用し、藤井聡四段が超速▲3七銀戦法から繰り出した銀で3四の歩を取る変化に進んだ。
藤井聡四段は2三に作った成銀を引きつけて難しいねじり合いを展開するも、早い段階で持ち時間(1時間)を使いきって30秒将棋が続く中で対応を誤り、寄せ合いで永瀬六段が手勝ちを収めた。七番勝負は今後も毎週日曜日の19時から放送、中継される。
トピック
今週閉幕した第75期順位戦と第66期王将戦には、関西本部所属棋士のこの一年の活躍が顕著に現れました。
順位戦はA級1期目の稲葉陽八段が名人挑戦を決め、半月あまり後にはいよいよ佐藤天彦名人との七番勝負が始まります。トップニュースのとおり、久保利明九段は王将のタイトルを6期ぶりに獲得。順位戦では豊島将之(新)八段とともにA級に昇級し、来期は4期ぶりに複数の関西勢がA級に在籍します。B級は斎藤慎太郎(新)七段と菅井竜也七段を含めて昇級をすべて独占、さらにC級1組でも大石直嗣六段が最後の昇級枠に滑り込みました。
ほかに、棋王戦では千田翔太六段が初のタイトル奪取まで、あと2局のうち1勝と迫っています。女流棋界では里見香奈女流五冠が保持していたタイトルをすべて防衛し、女流王座を獲得して五冠返り咲きを果たしました。(飛龍記者)
*写真は、王将戦中継ブログ、女流王位戦中継ブログ、名人戦棋譜速報より引用。
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