チーム永瀬VSチーム糸谷 ABEMAトーナメント2023~本戦トーナメント2回戦第二試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム糸谷 ABEMAトーナメント2023~本戦トーナメント2回戦第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年08月23日

 8月19日(土)に放映された本戦トーナメント二回戦第二試合、チーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢王座、増田康宏七段、本田奎六段)対チーム糸谷「鉄拳流」(糸谷哲郎八段、森内俊之九段、徳田拳士四段)戦の模様をお伝えする。

 第1局は振り駒の結果、チーム糸谷が先手に。対戦カードは▲森内―△永瀬だ。永瀬は1回戦に引き続いてリーダー自らが先陣を切り、横歩取りから中盤で戦機を捉え、チームに幸先の良い白星を上げる。

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第2局 増田康宏七段─糸谷哲郎八段

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 第2局は▲増田―△糸谷戦。一回戦では3連勝とチームに大きく貢献した増田をリーダー自らが止めにかかることができるかどうか。戦型は先手矢倉対後手雁木となる。第1図はその終盤で、△8三香に対して玉を上がった局面だ。

【第1図は▲8八玉まで】

 ここで糸谷が指した△4六金が強手。▲同金なら△5八馬で先手陣が受けにくい。以下▲7九飛には△8七香成▲同金△同飛成▲同玉△8六歩▲同玉△6八馬で決まる。「玉上がりにはやろうと思っていた。冷静にやるなら(△4六金に代えて)△5七歩なのでしょうが、自玉が堅いこともあったので」と糸谷。△4六金に対して実戦は▲2六歩と馬取りの催促に出たが、△5六金▲2五歩△6七金▲同金△8七香成と進んで、以下は糸谷が先手玉を寄せ切った。

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 リーダーが互いにチームへ初勝利をもたらして、以下は一進一退の展開が続く。第3局からもいわゆる「ヌケヌケ」の展開が続いて、第6局を終えた時点で3勝3敗という全くの五分だ。ただここまで、チーム永瀬の上げた勝利は全てリーダーによるもの。そして3局を指し終えた為、7回戦以降は永瀬の登場はない。対してチーム糸谷はリーダーが2連勝で、あと1度は糸谷の登場枠を残している。

第7局 増田康宏七段─徳田拳士四段

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 リーダーの奮闘に対し、双方のチームメイトがどう貢献するかの展開になった後半戦。第7局は▲徳田―△増田戦だ。戦型は相居飛車の力戦形から、増田が作戦勝ちを収める。対して模様の悪さを承知で勝負に出た徳田だが、増田に的確に対応されて迎えたのが第2図である。この角打ちの味が良い。

【第2図は△2四角まで】

 徳田は▲4三成桂△同玉としてから▲4六歩と受けたが、△6五桂が厳しい一着。▲4五歩とこちらの桂を取ると△5七銀で先手陣は崩壊する。しかし実戦の▲6五同歩には△6六桂の継続手があり、▲4九玉△7八桂成▲4五歩△8七飛成と進んで増田が先手陣の突破に成功。以下は先手の反撃を余して勝利した。

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第8局 増田康宏七段─森内俊之九段

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 運命の第8局、チーム永瀬は「多分森内さんが来るんで、森内さんと指したい」と増田が連闘を志願。対してチーム糸谷はリーダーを最終戦に温存する形で、森内が出陣。本局は終盤で二転三転する熱戦となった。

【第3図は▲7七同銀まで】

 大詰めの第3図。ここから森内は△8七銀▲7五玉△7七竜▲6四玉と上部に追って、△7一銀と飛車取りかつ先手玉の押さえにもなる銀を打ったが、この瞬間の後手玉は見た目以上に危ない。増田は▲1三桂成△同香▲同馬△同桂▲1二金△3一玉▲3二飛成と迫り、最後は6四の玉も生きる形で後手玉を即詰みに打ち取った。△7一銀では△5七竜と馬を抜いておけば難しい勝負だったし、あるいは第3図から△7五歩ならば▲同玉△7七竜で後手よしだった。以下7六に合い駒を打つのは△5七竜でよいし、△7七竜に▲6四玉は△5三銀▲6三玉△6一銀で先手玉を捕まえることができていた。持ち駒の銀を残した効果である。

 「二転三転した勝負だったが、チームの勝利を決定づけることができて、よかった」と増田は語った。

 チーム永瀬が準決勝進出。次回は8月26日(土)に放映される本戦2回戦第三試合、チーム稲葉「NINNIN」対チーム千田「シーソーゲーム」の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】(第1局はチーム糸谷が先手番。以下は交互)
第1局 永瀬○-●森内
第2局 増田●-○糸谷
第3局 永瀬○-●徳田
第4局 本田●-○森内
第5局 永瀬○-●徳田
第6局 本田●-○糸谷
第7局 増田○-●徳田
第8局 増田○―●森内
総合5勝 ― 3勝

【個人成績】
永瀬王座 3-0
増田七段 2―1
本田六段 0-2
糸谷八段 2-0
森内九段 1-2
徳田四段 0-3

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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