チーム永瀬VSチーム広瀬 ABEMAトーナメント2023~本戦トーナメント1回戦第一試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム広瀬 ABEMAトーナメント2023~本戦トーナメント1回戦第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年08月02日

 7月29日(土)に放映された本戦トーナメント一回戦第一試合、チーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢王座、増田康宏七段、本田奎六段)対チーム広瀬「はやぶさ」(広瀬章人八段、近藤誠也七段、石井健太郎六段)戦の模様をお伝えする。

 チーム永瀬対チーム広瀬の対戦は昨年の第5回でも本戦一回戦で実現している。その時とメンバーが同一なのは永瀬、増田、広瀬の3人で、前回は増田が3連勝(うち対広瀬戦が2回)とチームの勝ち抜きに大きく貢献した。

第1局 永瀬拓矢王座─近藤誠也七段

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 第1局は振り駒の結果、チーム永瀬が先手に。対戦カードは▲永瀬―△近藤となる。

【第1図は△2三同金まで】

 戦型は角換わりとなり第1図を迎えた。ここで永瀬は▲2四歩△同金▲同飛△2三歩▲同飛成△同玉▲2四歩△同銀▲2二金と踏み込んだが、△1三玉▲1二銀△同香▲2三銀に△2五銀で後手玉への攻めが続かない。対して先手陣は6六の馬取りや、飛車を渡したこともあって収拾がつかなくなっている。第1図では▲6五馬が冷静で、対して△5四歩と金取りを受けても▲2四歩△同銀▲2五歩△3三銀▲2五歩で攻めが続いていた。近藤はこれまでフィッシャールールで永瀬相手に3連敗していたが、今回初めて雪辱し「一つ返すことができて、良かったと思います」と語った。

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 第2局はチーム永瀬のポイントゲッター、増田が出陣。対する石井が三間飛車に振っての対抗形となるが、中盤でリードを奪った増田が押し切って、対戦スコアを1対1に戻す。ポイントゲッターの勝利がチームに勢いをつけたか、ここからチーム永瀬が一気に4連勝し、勝ち抜けに王手をかけた。

第6局 広瀬章人八段─本田奎六段

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 後がなくなったチーム広瀬、第6局ではリーダーの広瀬が本田と対戦。先後は入れ替わっているが、第3局と同一のカードだ。第3局は後手の広瀬が序盤で注文を付けての力戦となったが、先手番の本局は「何も変化がなければ相掛かりを目指そうかと」。その通りに相掛かりの戦いとなった。

【第2図は▲2二歩まで】

 第2図から本田は△2八角と打ち、▲2一歩成に△4六角成と飛車取りに成り返ったが、以下▲3二銀不成△同歩▲4七歩△3五馬▲同歩△4三角▲3四角と進んで先手が優勢になった。△3四同角は▲同歩で、先手の駒が手順に前へ進んでいく。第2図では△2四角と打つ手が勝った。対して▲2一歩成は△3五角▲3二銀不成△同歩▲3五歩に△3六角と打てるのが大きい。本田は△2四角に▲3四飛で自信が持てなかったと明かしたが、△3三桂で難しい戦いのようだ。カド番で白星を上げた広瀬は「1局はしのいだということで、リーダーとしてはホッとしている」と語った。

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第7局 増田康宏七段─広瀬章人八段

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 第7局。チーム永瀬はここまで2連勝の増田を投入して決めに出る。対するチーム広瀬は「決めていました」という近藤、石井の声の後押しを受けてリーダーの連投となった。

【第3図は△4六歩まで】

 戦型は横歩取りとなり、迎えた第3図。ここからの▲3五角を広瀬は「打たせた」と見ていたが、のちに実際はそうでもなかったようなと振り返っている。構想に問題があったかも、とも。実戦は△3四飛▲4六角△3六飛▲7五歩△4五歩▲6八角△3四飛▲2六歩△5二金寄▲2五歩と進み、以下は徐々に増田がリードを広げて押し切った。△5二金寄では△2六同歩と取った方がよかったかもしれない。3連勝の増田は「予選では足を引っ張ってしまったので(1勝3敗)、ここで取り返せてよかったと思います」と語った。

 チーム永瀬が二回戦進出。次回は8月5日(土)に放映される本戦一回戦第二試合、チーム康光「駅伝」対チーム斎藤「飛慎隊」の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】
第1局 永瀬●-○近藤
第2局 増田○-●石井
第3局 本田○-●広瀬
第4局 永瀬○-●石井
第5局 増田○-●近藤
第6局 本田●-○広瀬
第7局 増田○-●広瀬
総合5勝 ― 2勝

【個人成績】
永瀬王座 1-1
増田七段 3-0
本田六段 1-1
広瀬八段 1-2
近藤七段 1-1
石井六段 0-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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