チーム藤井VSチーム渡辺 ABEMAトーナメント2023~Eリーグ第三試合振り返り~

チーム藤井VSチーム渡辺 ABEMAトーナメント2023~Eリーグ第三試合振り返り~

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年07月26日

 7月22日(土)に放映された予選Eリーグ第3試合のチーム藤井「トウカイテイオー」(藤井聡太竜王、澤田真吾七段、齊藤裕也四段)と、チーム渡辺「ランランラン」(渡辺明名人、佐々木勇気八段、岡部怜央四段)の戦いを振り返る。長かった予選リーグもこれが最終試合だ(肩書はいずれも当時)。

 Eリーグはチーム千田「シーソーゲーム」に対しチーム藤井は5─3で勝利、チーム渡辺は4─5で敗れている。チーム藤井は負けても3勝すれば大丈夫、一方のチーム渡辺は勝てば通過、負ければ敗退の分かりやすい状況となった。

 開幕戦は澤田が岡部を破り、チーム藤井が好スタートを切る

第2局 渡辺明名人─齊藤裕也四段

 新人の齊藤が頂点の一角である渡辺に挑む。こういったカードが見られるのも、団体戦の魅力だ。斎藤の中飛車に渡辺は左美濃に構え、中盤の長い力のこもったねじり合いとなった。終盤戦の前に互いに時間がほとんどなくなり、直感勝負となる。

【第1図は△2七香まで】

 玉頭戦で、時間がいくらでもほしいところだが、残念ながら十数秒しかない。王手なので応手は4つだが、実戦は▲1七玉と一番怖そうなところに逃げ、解説や控室も悲鳴があがる。厳密には疑問手だったようだが、渡辺も読み筋ではなく、時間ギリギリで△3三桂を着手。以下▲2五銀△同桂▲2六玉△3三金▲5五角△3四桂▲2七玉と手順に桂を除去する展開となり、先手に流れが傾く。以下は齋藤が崩れずにギリギリの勝負を制した。

 齊藤が大会初勝利かつ、チームとしても大きな2勝目。嬉しい金星となった。

第3局 藤井聡太竜王─佐々木勇気八段

 2つ星をリードし、満を持して藤井の登場。藤井は齋藤の連投も候補手にあったようだが、齋藤は「いや、僕はもう今日...」と固辞。
 佐々木の先手で相掛かりから猛スピードで同型の持久戦になり、互いに持ち時間が6分を超える。

【第2図は▲3三歩成まで】

 難解な戦いが続いていたが、後手のパンチが入って形勢も傾いた。構わず△3七銀と寄せに出たのが好判断。▲3八歩にも△4八銀成▲同玉△3七金▲同歩△同歩成▲同玉△5七竜と進め、先手玉は受けが難しくなってきた。早指しでも藤井が安定した指し回しを見せて3連勝。この勝利で決勝トーナメント進出も決まった。

 第4局は初戦と同じカードになり、丁寧な指し回しを見せた澤田が制勝。4─0と一気に追い込んだ。

第5局 藤井聡太竜王─佐々木勇気八段

 チーム藤井は星に余裕があり、順番通り齊藤を出すのかと思いきや、まさかの藤井リーダー自ら出撃し、決めに出る。これにはチーム渡辺も意表を突かれたようで「そうなんだ~」「終わらせにきたね」。チームとしては岡部に一度藤井を当ててあげたかったようで、佐々木は「岡部ごめんね」、渡辺は「終わってから一局お願いしたら」と笑う。

 先後は第3局と同じだったが、今度は角換わりから相早繰り銀となる。難解な中盤だったが、佐々木がわずかに抜け出した。

【第3図は▲6七歩まで】

 後手が辛抱する展開が続いていたが、形勢も好転し反撃の猶予を得たのが第3図。△7七歩▲同金△5七歩が急所を突いた。▲同金なら△6五桂や△4八銀が痛い。仕方なく▲6六歩と外したが、△5八歩成▲同玉△4六桂▲同歩△同銀と勢いを止めずに寄せに出た。
 崩れない受けと切れ味を見せた藤井が逆転勝ち。第一人者がさすがの強さを見せた。

 チーム藤井が5連勝と圧倒して予選通過。予選Eリーグからはチーム藤井(1位)とチーム千田(2位)が突破を決めた。これで予選突破チームがすべて決まり、次回からは決勝トーナメントが放映される。

【総合成績】
第1局 澤田○─●岡部
第2局 齊藤○─●渡辺
第3局 藤井○─●佐々木
第4局 澤田○─●岡部
第5局 藤井○─●佐々木

【個人成績】
藤井竜王 2─0
澤田七段 2─0
齊藤四段 1─0
渡辺名人 0─1
佐々木八段0─2
岡部四段 0─2

ABEMAトーナメント

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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