次のドアを開ける――山口絵美菜女流1級

次のドアを開ける――山口絵美菜女流1級

ライター: 山口絵美菜  更新: 2021年01月06日

 マスク生活にもすっかり慣れてきた今日この頃。マスクがマストになった2月から今日にいたるまで、私が言われた「マスクで誰かわからなかった」のバリエーションをちょっとご覧いただきましょう。

「関東の新しい職員さんかと思いました」
「おはよう!ところで、どちらさま?」(by兄弟子)
「念のためお伺いしますが......山口絵美菜さんであってますか?」etc......

 全国の顔が薄い皆さんも同じ状況にいらっしゃるのでしょうか?顔の特徴がマスクに完敗する毎日ですが、もう慣れて何も感じなくなりつつあります。

 いわゆるステイホーム期間中は食料品の買い出し以外、ずっと家。早寝早起きの規則正しい生活をしていました。午前中は昨年から講師を務めている桃山学院大学ビジネスデザイン学科の「将棋・囲碁」の講義の資料作成や課題採点、受講生への個別対応やアドバイスに追われ、午後は人気のない道を散歩してから勉強。夜は適度な運動やストレッチをして、日付が変わる前に就寝という生活です。

 私は一人暮らしで実家も遠く、誰にも会わないで数か月過ごすことには大きな不安がありました。毎日折り目正しく過ごせば、心も体も大きく持ち崩すこともないだろう。多くの人がそうであったように、一人で楽しむ工夫を凝らしに凝らした日々でした。その一つが料理。忙しさのあまりスーパーのお惣菜に頼りがちでしたが、ステイホーム期間中はずっと自炊。ナポリタンやトッポギ、フルーツサンドやスコーンなどなど。
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写真はうまくいったフルーツサンドですが、初挑戦したときは生クリームの泡立てが甘く、崩壊寸前の違法建築だったのは内緒です。胃袋へと隠滅しました。

 それまであまり興味がなかった社会情勢や政治に関心を持つようになり、調べることや考えることが増えた半面、SNS(主にTwitter)からは遠ざかっていました。自分のTwitterをさかのぼってみたところ、2か月ほどの空白が。SNSをしていれば面白い情報が向こうからやってくるのと同じくらい、落ち込んでしまうような内容も目に飛び込んできます。それが自分に関わることでなくても影響されやすいたちなので、意識して距離を置いていました。その代わりに手に取ったのが本。
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写真に写っているのはその一部で、中でも印象的だったのが『ぬいぐるみとしゃべるひとはやさしい』。ジェンダー界の新星と評される大前粟生さんによる小説が四篇収録されている本で、私は人と話した後に時折この表題作のことを思い出します。いつか著者の大前さんと話してみたい!

 2020年は『エリザベート』や『ミス・サイゴン』などなど数多くの舞台・ミュージカルが予定されていたのですが、軒並み中止に。頑張って取ったチケットは全て諭吉になって帰ってきましたが、私は舞台が見たかった!今年の生きる気力だったのに!

「ひとつのドアが閉まった時には、また別のドアが開く」とはよく言ったもので、観劇不足の禁断症状で震える私は勢いそのままに新たな世界の扉を開いたのでした。存在はかねがね存じ上げていたものの、巨大ジャンルゆえに入り口が分からなかった『刀剣乱舞』の沼。舞台「刀剣乱舞」の過去作が毎日1作ずつ1週間にわたってライブ形式で配信されていたのを何気なく見たのがきっかけで、ふと気づけば刀剣乱舞の舞台にもゲームにもアニメにも夢中に。ちなみに刀剣乱舞ONLINEとは日本刀を擬人化した「刀剣男子」を収集及び強化し、歴史改変を企む時間遡行軍を討伐するという刀剣育成シミュレーションゲームで、攻略ものでもハーレムでもありません。最近は刀剣そのものについても興味が増し、つい先日特別展「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣の雄」へと足を運びました。肉眼で見る山伏国広や明石国行の美しさたるや......。
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 舞台『刀剣乱舞』の中でも特に好きなのが『ジョ伝 三つら星刀語り』。ぜひ事前情報なしでご覧いただきたいので詳細は語りませんが、末満健一さんの天才的な脚本に感動し末満さんの過去作にも少しずつ手を伸ばしています。『TRUMP』シリーズを早く全制覇したい!

 そんなこんなで、私は元気です。上へ上へと枝葉を伸ばしていないときは土の中にしっかり根をはりめぐらすものと思っています。皆様もどうかお体を大事に、暖かくしてお過ごしください。

私のシリーズ

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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