ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年05月14日
前回に続き、今回は2019年度後半の記録を振り返っていこう。
史上4人目の竜王・名人の同時保持となった豊島将之竜王・名人。七番勝負は熱戦続きのシリーズだったが、豊島が終盤に競り勝って白星を重ねて奪取した。
【第1図は△8八銀まで】
【12月】竜王戦七番勝負第5局 ▲豊島将之名人△広瀬章人竜王
決着局となった第5局も逆転勝ちとなる。先手玉はかなり危険な状況だが、▲2二飛成△同飛成▲同角成とし、△8九銀不成に▲9七玉と立つ。以下もギリギリの王手ラッシュが続いたものの、先手玉はきわどく詰まず勝ちが決まった。豊島が4勝1敗で竜王・名人に輝く。
竜王戦中継ブログより
快挙と言える記録は本田奎五段の棋王挑戦だろう。初参加での挑戦権獲得は史上初、デビュー戦から1年の快進撃だ。
【第2図は▲1七桂まで】
【12月】棋王戦挑戦者決定二番勝負第2局 ▲佐々木大地五段△本田奎四段
若手同士のフレッシュな顔合わせとなった挑戦者決定戦。第1局は敗者組の佐々木が勝ち、迎えた第2局。馬を作った上に堅陣を完成させ、後手が作戦勝ちだ。図から△9五歩▲同歩△9八歩▲同香△8九銀▲8八金△9八銀成▲同金△9五香と攻めて後手良し。多少強引でも手を作ってしまえば陣形の差だけで勝てる。史上初の快挙を成した本田だが、五番勝負は3勝1敗で渡辺明棋王が貫録を見せた。
棋王戦中継ブログより
史上初の女性棋士を期待される西山朋佳三段。2019年度は公式戦、女流棋戦でも活躍。女流三冠に輝いた。
【第3図は▲5六歩まで】
【12月】女流王座戦五番勝負第4局 ▲里見香奈女流王座△西山朋佳女流二冠
駒の働きで振り飛車ペースだが、ここからどうリードを広げるか。△7五歩▲6六歩△7六馬▲3六飛△4五飛▲同歩△5四馬が西山の大局観の良さと勢いを示すような手。飛車を渡しても玉頭戦と馬の強さで決着を付けようとしている。以下も熱戦が続いたが、大暴れした馬が最後まで活躍。西山が3勝1敗で奪取。
渡辺明三冠は史上4人目のA級順位戦全勝を達成。これまで名人戦に挑戦することはなく、一時はB級1組に降級までしたが見事復活。過去の全勝経験者(中原誠、森内俊之、羽生善治)はいずれも永世名人になっているが、渡辺はどうなるか。
【第4図は▲9五飛まで】
【2月】A級順位戦 ▲三浦弘行九段△渡辺明三冠
桂得の後手がはっきり優勢の局面。ここから△6五桂▲9二馬△8五桂で先手投了。次の△7六香が厳しい。桂を連打し、渡辺が全勝を達成。
名人戦棋譜速報より
2019年度も勝ちまくった藤井聡太七段は勝率、勝数部門で1位を獲得。3年連続の8割は史上初だ。
【第5図は△6一金まで】
【3月】王位戦挑戦者決定リーグ・白組 ▲藤井聡太七段△稲葉陽八段
局面、時間ともに苦戦を強いられた藤井だが、ついにチャンスが訪れた。残り時間がほとんどない状況だったが、▲7三成桂が妙手。拠点を捨てて盲点に入るが、これで後手玉は寄っている。以下△6四玉に▲7四金から長手数の即詰みに討ち取った。いよいよタイトル戦登場が近付いているが、果たしてどうなるか。
※画像は名人戦棋譜速報より
ライター渡部壮大