ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年02月19日
渡辺明三冠のダブル防衛戦はどちらも白星先攻です。挑戦者の巻き返しはあるでしょうか。また、里見香奈女流名人が女流棋界新記録となる11連覇を達成しました。
【第1図は△4二玉まで】
第1図は第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第3局(▲渡辺明王将△広瀬章人八段)。1勝1敗で迎えた第3局です。角換わりから相早繰り銀と最近見られるようになった指し方になりました。広瀬八段が鋭い踏み込みで優位に立ちますが、渡辺王将も粘り強い指し回しでチャンスを待ちます。図から▲5二銀打が「玉の腹から銀を打て」の詰めろ。対する△3一玉が「玉の早逃げ八手の得」のテクニックです。以下も難解な終盤が続きましたが、最後は渡辺王将が抜け出して2勝目をあげました。
第3局の様子 王将戦中継ブログより
【第2図は△3七馬まで】
第2図は第45期棋王戦五番勝負第1局(▲渡辺明棋王△本田奎五段)。史上初の1期目で挑戦を決めた本田五段の初陣です。流行の急戦にはならず、双方じっくりと矢倉に組み合う展開となりました。先攻した渡辺棋王が徐々にリードを広げていきます。ここで▲3七同馬△同銀成では後手にも楽しみを与える可能性があります。▲4二馬△同金引▲2四桂が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。△2八馬に▲3二桂成△同玉▲4三歩のたたきが手筋で、後手玉は寄り筋です。渡辺棋王がまずは快勝となりました。
渡辺王将 棋王戦中継ブログより
本田五段 棋王戦中継ブログより
【第3図は▲5七金まで】
第3図は第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局(▲谷口由紀女流三段△里見香奈女流名人)。相振り飛車の中盤戦ですが、図の▲5七金は5六の金を引いた手ですが、後手からの攻めをうっかりしたようです。図から△2六歩▲同歩△2五歩▲同歩△6五銀▲同銀△2五飛で技が決まりました。「飛車は十字に使え」です。以下▲2七歩に△6五飛と桂取りに成功し、後手優勢。以下も緩みなく押し切って3連勝で防衛となりました。
里見女流名人 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより
谷口女流三段 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより
【第4図は▲4六金まで】
第4図は第5期叡王戦挑戦者決定戦第1局(▲豊島将之竜王名人△渡辺明三冠)。角換わり腰掛け銀から猛スピードで終盤戦に突入しました。ここで△7八金のように追いかけてはいけません。△4八金が「玉は包むように寄せよ」で、▲8一歩成なら△7七桂で寄ります。実戦は▲5七銀△7七成香▲4八銀△6七成香から細い攻めをつないで渡辺三冠が押し切っています。
【第5図は▲2四歩まで】
続いて第5図は叡王戦挑決第2局(▲渡辺三冠△豊島竜王名人)。角換わり腰掛け銀から後手が動く展開となりました。先手の攻めを余すことができれば後手優勢がはっきりする局面です。次に▲2三銀を喫してはいけませんが△2三歩が「敵の打ちたいところに打て」です。以下▲同歩成△同金▲4三銀とからみましたが△2四歩とキズを消して後手陣は安泰です。以下は数手で投了となり、三番勝負は1勝1敗になりました。挑戦権を得るのはどちらになるでしょうか。
【第6図は△3五桂まで】
第6図は第13回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲千田翔太七段△永瀬拓矢二冠)。角換わり腰掛け銀から先手の攻め、後手の受けという展開が続いていましたが、後手が受け損なって先手の勝ち筋に入っています。△3五桂は執念の頑張りですが、▲2八歩が「一歩千金」です。駒を綺麗に使って、後手玉を受けなしに追い込みました。千田七段は藤井聡太七段、永瀬二冠と強敵を連破し、嬉しい棋戦初優勝です。
初優勝を決めた千田七段(撮影:常盤秀樹)
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段