聞きなれない囲い名「アヒル」とは? 弱点に見せかけ反撃に転じることもできる「アヒル」囲いの組み方をご紹介

聞きなれない囲い名「アヒル」とは? 弱点に見せかけ反撃に転じることもできる「アヒル」囲いの組み方をご紹介

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年12月06日

前回までで、対ヒネリ飛車の囲いは一通りご紹介が終わりました。今回の囲いは、相掛かりのものですので、おおざっぱに言えば出だしは同じものになります。 ご紹介する囲いは「アヒル」です。聞きなれない囲い名ですよね? アヒルとはあのくちばしとペタッとした足に特徴のあるあのアヒルのことです。どんなものか名前を聞いただけでは想像できないかとも思います。では、どんな囲いなのかを見ていきましょう。 囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は▲3九金まで】

先手陣が異様な形ですよね。でもよく見てください。先手の玉と脇の銀、そして両方に開いた金の形がアヒルの足に見えてきませんか? そう見えることからアヒルと名づけられました。
さて、第1図。後手が「角頭が弱そうだし、よしひとつぶしにしてやるか」と棒銀で攻め込もうとしています。と、いうわけで図からは当然△9五歩と仕掛けてきます。▲同歩△同銀(第2図)で角頭を攻めながら8筋が破れそうで、あっさり後手優勢のようですね。

【第2図は△9五同銀まで】

ですが、こんな単純に悪いのでは相当まずい作戦ということになります。弱点を見事に突かれたようですが、実は第2図ではすでに先手の罠にハマっているのです。

図から▲7五角と飛び出し、△9六歩に▲9六同香! が端攻めを逆用する強手です。△9六同銀に▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲同角成△同桂▲9六飛(第3図)まで、きれいにさばけて先手優勢となります。

【第3図は▲9六飛まで】

▲9二歩のとき△同飛も▲9三歩で、△同桂は▲9六飛、△9三同飛は▲同角成△同香▲9一飛でどちらも先手優勢になります。角頭を弱点に見せかけ、そこを攻めさせて反撃に転じるのが真の狙いでした。

では、いつも通り先手側の駒だけを配置して、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順:初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲9六歩、(▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩)▲2六飛、▲9七角(第4図)。

【第4図は▲9七角まで】

中住まいなどでは、▲2五歩の後に▲7八金と角頭を守りましたが、アヒルの場合は左金が7九に行くので、金は上がりません。いかにも角頭が不安そうですが、大丈夫です。そちらについては次回のコラムで解説します。飛車先交換後、9七に角を上がります。後回しでもよいですが、角の利きで△6四歩を突かせないで後手の駒組みを制限させようという狙いもあります。では、続きを見ていきましょう。第4図から、▲5八玉、▲6八銀、▲4八銀、▲7九金、▲3九金(第5図)。

【第5図は▲3九金まで】

玉を上がり、その脇に両方の銀を上がって金を一つずつ逆に寄せれば、囲いの完成です。次回は、組む際の注意点と発展形について見ていきます。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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