「詰将棋パラダイス」VS「ヘッドハンティング」　ABEMAトーナメント2025～予選Bリーグ第一試合振り返り～

ライター：胡桃　　更新： 2025年06月24日

　６月21日（土）に放映された予選Ｂリーグ第１試合、チーム藤井「詰将棋パラダイス」（藤井聡太竜王・名人、斎藤慎太郎八段、古賀悠聖六段）対チーム天彦「ヘッドハンティング」（佐藤天彦九段、広瀬章人九段、増田康宏八段）の一戦を振り返る。
　いよいよ藤井が登場だ。「詰将棋パラダイス」は、メンバー全員が詰将棋解答選手権で優勝経験を持つ精鋭ぞろい。藤井は「詰将棋の力を生かして頑張っていきたい」と意気込みを語った。
　一方の「ヘッドハンティング」は、リーダー経験のある広瀬と、くじ引きで増田を獲得。佐藤は「頭（かしら）がそろった」と自信をのぞかせた。

　振り駒の結果、チーム天彦が先手番となり、第１局は▲佐藤－△古賀戦に。初戦から兄弟弟子同士の対決となった。終盤、時間に追われた佐藤が着手した手とは反対の手で時計を押してしまい、反則負けに。無念の投了となった。

【第2局　藤井聡太竜王・名人－増田康宏八段】

【第1図は△4八馬まで】

　後手の猛攻をしのぎ、ついに先手に攻めの手番が回ってきた。第１図は手の広い局面ながら、▲７五歩が後手玉のコビンを突く好手。以下、△６五桂▲７四歩△７五桂▲６六歩△７七桂成▲同飛△８四金と進み、▲８五銀が決め手となった。次に▲７三歩成△同玉▲８四銀と進めば、金を手順に取ることができ、後手は支えきれない。実戦もこの攻め筋が実現し、藤井が鮮やかに寄せきった。

　第３局は▲広瀬－△斎藤戦。チームの流れが悪い中、広瀬がじわじわとリードを広げ、そのまま押しきった。第４局は▲古賀－△佐藤戦で、同門対決はこれが２度目。古賀が居飛車穴熊を生かした猛攻で勝利を収めた。第５局は▲広瀬－△藤井戦。広瀬が角打ちから積極的に動いたが、うまく対応した藤井が勝利し、チーム藤井の４勝１敗となった。

【第6局　斎藤慎太郎八段－増田康宏八段】

【第2図は▲1二歩まで】

　第２図は香頭に歩を打たれた局面。ここで△１二同香と応じると、▲２三角成△同金▲同飛成で竜を作られてしまう。そこで香取りを無視しての△６六歩が、踏み込みだった。以下、▲１一歩成△６五桂▲６八銀△３六歩▲同銀△５六角▲同角△同銀▲６四香に、△６七角が強烈な王手となり、増田が寄せきった。

　第７局は▲増田－△古賀戦。中央に金を繰り出す増田の構想がさえわたり、攻めに乗じて個人２連勝を飾った。第８局は▲藤井－△広瀬戦。広瀬が作戦勝ちからリードを広げ、そのまま押し切った。藤井は持ち味を出せない展開となってしまった。チーム天彦はカド番からの３連勝で、ついに４勝４敗のフルセットに持ち込んだ。

【第9局　佐藤天彦九段－斎藤慎太郎八段】

【第3図は△5七とまで】

　二転三転の攻防が続き、迎えたのが第３図の局面。先手玉には、△３八金▲同玉△４七と以下の詰めろがかかっている。この局面で▲２二銀△１四玉▲１六歩と指せば、「詰めろ逃れの詰めろ」で先手が勝ち筋に入っていた。△３八金の王手に対して▲１七玉△２五桂打▲同歩△同桂▲２六玉と進めば、先手玉には詰みがなかった。しかし、実戦では▲５七同金と応じたため、△４八金が厳しい一着となった。これは△３九飛成の詰めろとなっており、先手は受けが難しい。その後は斎藤が一気に寄せきり、先手玉を即詰みに討ち取った。最終局を斎藤が制し、チーム藤井が５勝４敗で勝利した。

【総合成績】
（第１局はチーム天彦の先手番。以下は第８局まで交互、第９局はチーム天彦の先手番）
第１局　古賀○－●佐藤
第２局　藤井○－●増田
第３局　斎藤●－○広瀬
第４局　古賀○－●佐藤
第５局　藤井○－●広瀬
第６局　斎藤●－○増田
第７局　古賀●－○増田
第８局　藤井●－○広瀬
第９局　斎藤○－●佐藤

【個人成績】
藤井竜王・名人　２－１
斎藤八段　　　　１－２
古賀六段　　　　２－１
佐藤九段　　　　０－３
広瀬九段　　　　２－１
増田八段　　　　２－１