ライター一瀬浩司
じっくり組まれると...。聞きなれない囲い名「アヒル」に組む際の注意点と発展形をご紹介
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年12月11日
前回のコラムでは、「アヒル」の組み方を見ていきました。今回は、アヒルに組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、まずは囲いの組むまでの手順の復習です。 初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲9六歩、(▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩)▲2六飛、▲9七角、▲5八玉、▲6八銀、▲4八銀、▲7九金、▲3九金(第1図)。
【第1図は▲3九金まで】
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:前回のコラムで▲9六歩と突いたとき角頭が不安だけど大丈夫、という話をしました。まずは、それがどう大丈夫なのかを見ていきましょう。初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩に▲9六歩と突きますが、そこで△8六歩▲同歩△同飛となった局面が第2図です。
【第2図は△8六同飛まで】
ここで慌てて▲7八金は、△3二金と後手にも上がられて一局となります。ですが、よく考えてみてください。相掛かりで、▲7八金と上がらずにいきなり▲2四歩と行くのは、先手不利になりますよね? この場合は▲9六歩と突いてあるのに△8六歩ときてくれましたので、第2図から▲2四歩△同歩▲2三歩と角を殺して先手必勝となります。後手も角を取り返そうと△8七歩としても、ちょうど9七に空間があるので▲9七角と逃げられます。
【第3図は▲9七角まで】
よって角頭は大丈夫、ということになります。アヒルに組むには、手拍子で▲7八金と上がらないということも注意点になりますね。
また、第4図をご覧ください。
【第4図は△3四歩まで】
先手はアヒル囲いが完成しましたが、ここで銀や桂を使おうと▲3六歩と突くと、飛車の横利きが止まってしまいますので、すかさず△9五歩▲同歩△同香で先手不利となってしまいます。
【第5図は△9五同香まで】
飛車の横利きは重要な角頭の守りとなっていますので、それを止めてしまってはすかさず攻められて形勢不利に陥ってしまいます。それでは、囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形:さて、囲いの発展形ですが、先に述べた通り、3~7筋の歩を先手は突くことができません。かといって、先手玉を移動しようにも、3八や7八に玉を持っていっても、堅くはなっていませんね。二枚の金が開き、大駒の打ち込みには強い形ですが、陣形を発展させるのは難しい戦法になります。前回ご紹介したように、棒銀で角頭を攻めてきてくれればそれに乗じて反撃できるのですが、じっくり組まれると指し手が難しくなってしまいます。
ハメ手戦法では、「鬼殺し」が有名ですね。このアヒルも、角頭を攻めてくれれば相手をハメれるという、ハメ手戦法の一種となります。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。