ライター一瀬浩司
相掛かりだけでなく相振り飛車でも使える?相振り飛車での中原囲いとは【玉の囲い方 第61回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年03月04日
今回のコラムでは、「中原囲い」をご紹介します。あれ? 中原囲いって前にやったよね? そうですね。相掛かりや横歩取りの戦型で使う形をご紹介しました。今回ご紹介するのは相振り飛車における中原囲いです。
とはいえ、プロにおける実戦例もそれほど多くはなく、また、正式な名称はついていない囲いだと思います。とりあえず、本コラムでは相掛かりのときと形が似ているので相振り飛車における中原囲いとしておきます。では、どういう囲いなのかさっそく見ていきましょう。
囲いの特徴
第1図をご覧ください。
【第1図は△5一金まで】
平成28年8月8日、第2期叡王戦五段戦、▲宮本広志五段ー△佐々木勇気五段戦(肩書は当時)です。第1図の後手の形が、中原囲いのようですね。陣形が低いので、大駒の打ち込みに強く、思いきった戦い方ができそうですね。ここから、▲4六歩△3三桂▲5六銀に△1五歩と佐々木七段が端から仕掛けていきました。
次に第2図をご覧ください。
【第2図は△5一金まで】
平成27年7月23日、第24期銀河戦予選、▲佐藤和俊六段ー△鈴木大介八段戦(肩書は当時)です。第1図と違うところは、角交換がされているところですね。後手は陣形が低いので、角を打ち込む隙がありません。また、銀が8二に上がって8筋に備えています。第2図からは、▲7七桂△3五歩▲4八金上△9四歩▲9六歩△9三銀と進み、壁銀を直しつつ、先手の飛車を目標に繰り出していきました。この銀の動きは、金無双でのものと似ていますね。
そして第3図をご覧ください。
【第3図は▲4七金左まで】
平成30年6月26日、第3回YAMADAチャレンジ杯、▲井出隼平四段ー△佐々木大地四段戦(肩書は当時)です。今度は後手が三間飛車に振っています。すぐの仕掛けは難しいので、佐々木四段は△7一玉と寄りました。そこから、△4四歩~△4三銀~△5四銀~△4五歩と左銀を繰り出して仕掛けていきました。玉をひとつ寄っておけば、例えば▲4三角と打たれる手を気にせず戦うこともできます。
さて、囲いの組み方ですが、第1図へ組む手順がおもしろいので、そちらを見ていきましょう。いつも通り、先手の駒のみで見ていきます。
囲いを組むまでの手順:▲7六歩、▲9六歩、▲5六歩、▲6六角、▲8八飛(第4図)。
【第4図は▲8八飛まで】
先手三間飛車に対抗するときの手順で、本来は後手用なのですが、見やすいように先手側で進めていきます。▲9六歩と端歩を打診し、△9四歩と受けて来たら▲5六歩~▲6六角と角を二つ飛び出すのが面白い手順ですね。こうすることにより、角が端をにらんでいますし、▲7七桂と桂もスムーズに使うことができます。そして、▲8八飛と向かい飛車に振ります。続きを見ていきましょう。第4図から、▲3八金、▲4九玉、▲6八銀、▲5九金(第5図)。
【第5図は▲5九金まで】
囲う前に8筋を伸ばしたり、▲7七桂と跳ねたりしてもよいですが、とりあえずわかりやすく一直線に玉を囲いました。次回は、組む際の注意点と発展形をご紹介していきます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。