バランス重視・自由に駒組みを変えたいという方におすすめ!相振り飛車の囲い「左玉」の発展形とは【玉の囲い方 第60回】

バランス重視・自由に駒組みを変えたいという方におすすめ!相振り飛車の囲い「左玉」の発展形とは【玉の囲い方 第60回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2019年02月14日

前回のコラムでは、相振り飛車における囲いである「左玉」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、左玉に組むまでの手順の復習です。初手から▲7六歩、▲6六歩、▲7八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛、▲4八銀、▲5六歩、▲5七銀、▲6五歩、▲3八金、▲5八金、▲8六歩、▲8五歩、▲6六銀右、▲6八角、▲7七桂、▲8九飛、▲6九玉、▲7八玉(第1図)。

【第1図は▲7八玉まで】

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点

第2図をご覧ください。

【第2図は△1三角まで】

後手が早めに△1三角と上がってきたところです。ここで、▲6五歩などとすると、すかさず△3六歩(第3図)と突かれていきなり先手が不利になってしまいます。

【第3図は△3六歩まで】

第3図から、▲3六同歩は△5七角成と序盤早々銀を取られてしまいます。馬も作られ、これではすでに必敗といっても過言ではない形勢に陥ってしまいますね。5七の銀取りと、△3七歩成をいっぺんに受けるには、▲4八銀と引くくらいでしょう。ですが、△3七歩成とされると▲同銀は△5七角成ですし、▲同桂も△3六歩▲2五桂△2二角で、△3七歩成と△2四歩の狙いが残ってこれも先手不利となってしまいます。早めに△1三角と上がられる手には注意が必要で、第2図では▲5八金左や▲6八角と5七の銀に紐をつけなければなりませんでした。

また、第1図では飛車は8八に8筋に振っていますね。左玉に組むときは、向かい飛車に振らないと組むことができません。

もし飛車が7八なら? 玉を7八に移動できませんし、飛車の使い方も難しいですよね?

では6八なら? これも角を6八に引くことができませんし、6六に角を上がる形でも6七に銀、6六に角がいることになるのでやはり6筋で飛車を使うのは難しくなりますね。

では5八は? これはまれにある形です。▲6六銀右や▲4六銀と出れば飛車は5筋で使えますし、角も6八へ引けるので、囲いやすいですね。ただ、やはり敵玉に直接利く8筋がいちばんよいでしょう。

今回は囲いの発展形ではなく、組み方の種類を見ていきましょう。

組み方の種類

第4図をご覧ください。

【第4図は△2一飛まで】

平成10年5月26日、第11期竜王戦昇級決定戦4組、▲小林健二八段ー△高田尚平五段戦(肩書は当時)です。小林九段は穴熊に組みましたが、▲4六歩、▲3六歩と突いて位取りを阻止しました。もちろん、位が取れなくても作戦負けになるということはなく、後手陣は銀が5三にいて6筋方面に手厚い形となっていますよね。先手は銀が五段目に進出しているものの、7二の金の守備力も強く、攻め込んでいくことが難しいところです。

次に第5図をご覧ください。

【第5図は▲7八玉まで】

平成11年3月19日、第12期竜王戦ランキング戦4組、▲小林健二八段ー△有森浩三六段戦(肩書は当時)です。これまでは▲6七銀、▲6六銀右型でしたが、小林九段は▲7五歩と位を取り、▲7六銀~▲6七金と組みました。さらに6筋の位も取って▲6六角~▲7七桂と陣形を発展させて第5図となりました。金銀が上ずって囲い自体は薄くなっていますが、角の頭を銀と桂でしっかり守り、上部を強化しています。

このように左玉といってもさまざまな形があります。玉が薄く、指しこなすには力が要りますが、バランス重視で指してみたいという方、または自由に駒組みを考えてみたいという方にはオススメの戦法です。指す人は少ないと思いますので、大会などの一発勝負では、対戦相手の経験値は少ないはずなので、有効になるかもしれませんよ?

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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