広瀬章人が平成最後の竜王位獲得。2018年を締めくくる大勝負、羽生VS広瀬を振り返る【2018年12月振り返り】

広瀬章人が平成最後の竜王位獲得。2018年を締めくくる大勝負、羽生VS広瀬を振り返る【2018年12月振り返り】

ライター: 生姜  更新: 2019年02月28日

2018年振り返り

2018年を振り返るシリーズもいよいよ12月を迎えました。いろいろな出来事がありましたね。皆さんがいちばん印象に残った将棋はどれでしょうか。12月も大舞台を中心に熱局を取り上げたいと思います。(肩書は当時)

王将戦の挑戦者に渡辺明棋王(2018年12月3日)

王将リーグは毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられます。楽しみなファンも多いことでしょう。久保利明王将への挑戦権を懸け、今年も強豪が集まりました。リーグ表の上から順に並べると、豊島将之二冠、郷田真隆九段、糸谷哲郎八段、渡辺明棋王、佐藤天彦名人、中村太地七段、広瀬章人八段。誰が挑戦者になってもおかしくありません。

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第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦

今年は混戦になりました。最終戦を迎えて挑戦者の可能性があったのは豊島二冠、糸谷八段、渡辺棋王、佐藤名人、広瀬八段の5人。最終戦の結果によって結果が大きく変わります。注目の挑戦争いは豊島-渡辺、佐藤-糸谷戦が関係しており、それぞれの対局を制した渡辺棋王と糸谷八段がプレーオフに進出しました。

【第1図は▲7四歩まで】

第1図はプレーオフ渡辺-糸谷で、先手の糸谷八段が▲7四歩と伸ばしたところ。▲7三歩成△同桂▲7四歩の桂取りを狙っていますが、ここで△7五銀が強気な一着でした。▲7三歩成△同桂▲7四歩には△7六歩▲7三歩成△7七歩成▲8二と△7八と▲同角△8六歩で後手の攻めが続きます。後手玉は堅く、まさに渡辺棋王の得意パターンといえる展開です。実戦は▲7六銀打△同銀▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲7七銀から熱戦が続きましたが、攻めをつなげて寄せきった渡辺棋王がプレーオフを制しました。

渡辺棋王がタイトル戦の挑戦者になるのは約3年ぶり、王将戦の舞台で戦うのは4年ぶりです。久保王将とは2011年に棋王戦の五番勝負で戦っており、そのときは3勝1敗で久保王将が制しています。今期の王将戦では皆さんご存知の通り、4勝0敗のストレートで渡辺棋王が王将位を奪取。5年ぶり3期目の王将獲得&二冠達成となりました!

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久保王将に挑戦し、奪取&二冠を達成した渡辺二冠 王将戦中継ブログより

棋王戦挑戦者に広瀬八段(2018年12月17日)

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佐藤名人VS広瀬八段 棋王戦中継ブログより

棋王戦も挑戦者が決まりました。渡辺棋王への挑戦権をかけて挑戦者決定二番勝負に名乗りを上げたのは佐藤名人と広瀬八段。トーナメントを制したのは広瀬八段、佐藤名人は敗者復活戦から勝ち上がってきました。広瀬八段は二番勝負のうちひとつ勝てば挑戦決定で、佐藤名人は2連勝が必要です。

【第2図は△3三桂まで】

第2図は第1局の30手目の局面。佐藤名人が5筋の歩を取らせる趣向を見せましたが、広瀬八段がうまくとがめました。ここで▲5五銀が5筋の歩がないことに目をつけた好着想の一手でした。銀を中央に出られ、後手は駒が前に進みづらくなっています。以下は△8六歩▲同歩△4二金右▲6九玉△6四歩▲3六歩△7四歩▲3七桂と進みますが、5五銀の存在感が大きく、じわじわと先手がリードを奪いました。以下は広瀬八段が快勝。竜王戦に続いて棋王戦も挑戦者に輝きました。

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竜王・棋王と挑戦権を獲得した広瀬八段 棋王戦中継ブログより

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棋王戦中継ブログより惜しくも敗れた佐藤名人 棋王戦中継ブログより

竜王戦が決着(2018年12月20日・21日)

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竜王戦中継ブログより

2018年を締めくくる大勝負を振り返りましょう。竜王戦はついに第7局のフルセットまで持ち越されました。ここまでの星取りは羽生竜王から見て○○●●○●。第5局に勝ち、防衛に王手をかけた羽生竜王でしたが、続く第6局は横歩取りの激しい戦いに敗れ、勝負の行方はわからなくなりました。羽生竜王がタイトル獲得通算100期を達成するか、広瀬八段が念願の竜王位を奪うことができるか。平成最後の竜王戦は多くの報道陣が駆け付け、大きな話題を呼びました。

【第3図は△4四歩まで】

第3図は76手目の局面。ここで▲8五桂が羽生竜王を悩ます一着で、広瀬八段の攻めが始まります。△7二金は▲7四歩、△7四金は▲5二角がうるさいです。本譜は△6三金と逃げましたが、▲7三歩の垂らしが入りました。△7一歩と受けましたが、飛車の横利きが消えてしまうのと、7筋に歩を打つ攻め筋がなくなってしまいました。戻って後手は▲8五桂を打たせないように△8六歩▲同歩の交換を入れないで指し進めるほうがよかったようです。

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悩む羽生竜王 竜王戦中継ブログより

【第4図は△5三金まで】

第4図は116手目の局面。ここで▲3五銀が手厚い一着でした。打たれてみると後手玉と1四馬が急に息苦しくなったように見えますね。次の▲2四歩が後手玉のコビンを狙う厳しい攻めになります。対して△2二玉がまずかったとされました。代えて△4三金▲2四歩△3四歩と受ける順がありました。そう進んでいたら難しい戦いが続いていたでしょう。本譜は△2二玉に対し、▲6三歩成△同金▲1五歩△同馬▲2四歩がうまい攻めでした。△2四同歩と取ったことで2三に空間ができています。

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上手い指し回しをみせる広瀬八段 竜王戦中継ブログより

【第5図は△2四同歩まで】

第5図は△2四同歩の局面、クライマックスを紹介します。4五馬がよく利いていて、カナ駒が入れば2三に打って後手玉は詰むという条件というと、答えが見えてくるかもしれません。▲6六銀が竜王位を手繰り寄せる決め手でした。銀か金で取るのは飛車で取り返して後手玉に詰めろがかかります。それを受けても▲6三飛成があるので後手は収拾困難です。本譜は△4四歩と馬をどかそうとしましたが、▲7五銀△4五歩▲6三飛成と進んで先手勝勢になりました。

【第6図は▲2一銀まで】

そして第6図。この局面で羽生竜王が投了。広瀬八段が平成最後の竜王位を手にしました。羽生竜王は27年ぶりに無冠となり、九段を名乗ることに。タイトル通算100期獲得は次の機会に持ち越されました。

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広瀬八段は初の竜王獲得 竜王戦中継ブログより

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羽生は通算獲得タイトル100期とならなかった 竜王戦中継ブログより

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翌日の会見で「鷹揚」と揮毫した広瀬新竜王 竜王戦中継ブログより

いかがでしたか。2018年を振り返ってみると、さまざまなことが思い起こされます。豊島八段が王位と棋聖の二冠に、高見泰地叡王、斎藤慎太郎新王座の若手の台頭、藤井聡太四段が七段にジャンプアップ、広瀬新竜王が誕生し、羽生竜王が無冠に......皆さんはどのニュースが印象に残りましたか。今回で2018年を振り返るシリーズは最終回になります。全12回ご覧いただき誠にありがとうございました。2019年も将棋界をぜひご注目ください。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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