藤井聡太が新人王戦で優勝、フルセットにもつれ込んだ王座戦の行方は?【2018年10月振り返り】

藤井聡太が新人王戦で優勝、フルセットにもつれ込んだ王座戦の行方は?【2018年10月振り返り】

ライター: 生姜  更新: 2019年02月25日

2018年振り返り

10月はまず久しぶりに藤井聡太七段の活躍から振り返りたいと思います。新人とは思えないような貫録が見られました。また、注目の王座戦からも決着局の終盤戦を取り上げています。最後までお楽しみください。

優勝して新人王戦卒業(2018年10月10日・17日)

今年は去年に比べて藤井聡太七段の対局が少ないなあと感じる方もいると思いますが、事実、少なくなっています。その要因としては、あまりにも勝ちまくったために予選免除になったこと、去年は参加できていた若手棋戦の出場資格がなくなったことが挙げられます。

この新人王戦もまさにそうでした。新人王戦は六段以下でかつ26歳以下の若手棋士が出場できる棋戦。今年、藤井七段となったことでもう来期は出場できないのです。ということで、今年の新人王戦が最後の出場となりました。まだ2年目なのに新人扱いではなくなってしまうあたり、藤井七段の凄さが感じられます。

今期は古森悠太四段、八代弥六段、近藤誠也五段、青嶋未来五段に勝って決勝に進出。対する相手は出口若武三段。名前は「わかむ」と読みます。まだ三段ながらプロと遜色のない実力を持っているといっても過言ではないでしょう。今期は冨田誠也三段、澤田真吾六段、井出隼平四段、甲斐日向三段、梶浦宏孝四段に勝っています。段位こそ4つ離れていますが、勝負は何が起こるかわかりません。

【第1図は▲3一龍まで】

決勝は三番勝負で行われます。まずは第1局から見ていきます。相掛かりの将棋になり、図は終盤戦。すでに先手玉に3六桂が刺さっており、後手が優勢の局面になっています。ここで△3九角がさらに追い打ちをかける決め手でした。▲4九金は△5七角成があるので、金は逃げられません。単に△4八桂成▲同玉とするよりも、こうやってじわじわと追い詰めるのがうまい寄せです。以下は▲2三角△4八角成▲6九玉△7七桂成と進み、後手の勝利。藤井七段が新人王に王手をかけました。

【第2図は▲4五角まで】

続いて第2局。この将棋は出口三段の気合と研究がうかがえました。56手目の局面まで消費時間はわずか3分。藤井七段も30分弱とそこまで使っていませんが、それにしても出口三段の指し手は早い。この一戦に懸ける思いが伝わってきます。

ポイントとなったのは第2図、57手目▲4五角の局面。ここで△8四飛が疑問手で、代えて△4一飛なら後手も有力だったようです。詳しい変化は割愛しますが、本譜はあまり飛車が働かなくなってしまったのが痛かったです。△8四飛以下は▲4三歩△5二玉▲2三銀成△4三金▲2四成銀と先手が駒得に成功。寄せも鋭い手を連発し、粘る出口三段を振り切りました。

これで藤井七段は見事優勝。最高の形で新人王戦卒業となりました。ただ、みなさん、新人王戦にはまだまだ注目の若手が目白押しです。出口三段も今期の三段リーグはトップ集団の中を走っています。これからも若手たちの熱い戦いに刮目しましょう。

加古川優勝に大橋四段(2018年10月19日・20日)

続いても同じく若手棋戦から。加古川青流戦は新人王戦よりも若い棋士がそろっているといえます。なぜなら出場者が四段、三段の上位者らで構成されているからです。ただし、四段の年齢制限はありません。また、女流棋士が2名、アマチュア選手も3人参加しています。加古川青流戦は兵庫県加古川市。公益財団法人加古川市ウェルネス協会が主催する棋戦で、加古川市は将棋が盛んな地域としても有名です。市ゆかりの棋士に久保利明王将、井上慶太九段、稲葉陽八段、神吉宏充七段、船江恒平六段がいます。

こちらも決勝戦の舞台を振り返りましょう。梶浦宏孝四段と大橋貴洸四段が三番勝負で優勝の座を懸けて戦いました。

【第3図は▲2四馬まで】

第3図は第1局の勝負所を迎えた局面です。ここで△2三歩がそつのない利かし。▲2三同馬なら馬がぼやけるので、安心して△8九飛成と攻めることができます。本譜は▲6二金△同玉▲4二馬にしっかり△5二金と弾き、後手がはっきりよくなりました。以降は優位を広げて大橋四段先勝。

【第4図は△6一角まで】

第2局は角換わりから華々しい戦いが繰り広げられました。第4図はクライマックス。

ここで▲1三歩△同玉▲1四香が参考になる寄せ。△1四同玉は▲1五歩△1三玉(△1五同玉は▲2六金~▲1九飛)▲1四銀と押し潰して詰みます。△1四同銀に▲2二銀△同玉▲3二と△同玉▲4二金と見事即詰みに打ち取って大橋四段の優勝が決まりました。

大橋四段はYAMADA杯に続いて今年2回目の優勝。藤井七段が多く注目される昨今ですが、大橋四段も藤井七段と同期でプロになった棋士。来年は更なるステップアップが見られるかもしれませんね。

フルセットの王座戦(2018年10月30日)

いよいよ王座戦が決着。斎藤慎太郎七段が開幕2連勝でそのままタイトル奪取かと思われましたが、そこから中村太地王座が2連勝で巻き返し、ついに最終局に。では見ていきましょう。

【第5図は△7七銀まで】

図は形勢の苦しい中、中村王座が△7七銀とタダのところに打った局面です。まさに勝負手といった雰囲気が出ています。しかし、斎藤七段は冷静でした。▲7七同金△7六歩に▲4三桂が読みきったともいえる手順。△7七歩成よりも先に後手玉を寄せきる算段がついています。△4三同銀▲同歩成△同金に▲4四歩が▲3二銀以下の詰めろ。先手の1手勝ちがはっきりしました。以下は数手で斎藤七段の勝ち。新王座が誕生しました。

関西にまたタイトルホルダーが加わり、いよいよ東西の勢力図が互角に。8大タイトルを東で4、西で4と分け合った格好です。関西の勢いが止まりません。

11月も寄せの鋭い将棋が見られました。藤井七段と斎藤王座はともに詰将棋を得意としており、だからこそ見える景色があるのかもしれません。12月は日本中が注目した竜王戦第7局や、ふたつの棋戦での挑戦者決定戦を振り返ります。いよいよラストが迫ってきました。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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