藤井聡太七段、朝日杯ベスト4に進出。豊島・羽生・広瀬の名人挑戦権争いから抜け出したのは?【注目対局プレイバック 2019年1月下旬】

藤井聡太七段、朝日杯ベスト4に進出。豊島・羽生・広瀬の名人挑戦権争いから抜け出したのは?【注目対局プレイバック 2019年1月下旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年02月07日

注目対局プレイバック

王将戦は挑戦者である渡辺明棋王が連勝スタート。里見香奈女流名人の10連覇が掛かったシリーズも始まりました。また、A級順位戦では広瀬章人竜王・豊島将之二冠・羽生善治九段による名人挑戦権争いが行われ、朝日杯将棋オープン戦では藤井聡太七段が二連覇に向けてベスト4入りを決めています。
(肩書・段位はいずれも当時)

第68期王将戦七番勝負第2局


【第1図は▲5八金寄まで】

第1図は第68期王将戦七番勝負第2局(▲久保利明王将△渡辺明棋王)。先手の中飛車に後手は急戦。お互いに駒を繰り換えて角道を止めた振り飛車対急戦とクラシックな形になりましたが、後手の3一金が現代調です。ここで△6五歩の仕掛けが「振り飛車には角交換を狙え」です。死語に近い格言ですが、古い戦型になれば通用します。▲6五同歩は△7七角成▲同桂△8六歩で飛車をさばいて居飛車良し。実戦は▲6八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」です。以下△5一金▲9八香△5二金とお互いに間合いを計る難しい戦いとなりました。

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難解な将棋を制し、開幕2連勝とした渡辺棋王 王将戦中継ブログより

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久保王将は2敗目を喫した 王将戦中継ブログより

第45期女流名人戦五番勝負第1局

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第45期岡田美術館杯女流名人戦第1局 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

【第2図は▲4五歩まで】

第2図は第45期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局(▲伊藤沙恵女流二段△里見香奈女流名人)。後手の中飛車に対し、先手も中央に厚く構えています。後手は好形ですが、唯一の気掛かりは2一の桂が使えていないことです。里見女流名人はここから巧みな駒さばきを見せました。第2図以下△4四歩▲同歩△同角▲2八飛△3三桂▲4五歩△5三角▲2四歩△4五桂で遊び駒の活用に成功しました。△4四歩の合わせで角を移動させ、桂を跳ねるスペースを作りました。4五の地点を飛銀桂と3枚で狙い、先手は攻めを止めきれません。以下▲2三歩成△3七桂成▲同金△4六飛▲同金△3七銀と気持ちの良い攻めが続き、後手の快勝となりました。続く第2局も里見女流名人が勝ち、開幕2連勝となりました。

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2連勝で防衛に王手をかけた里見女流名人 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

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追い込まれた伊藤女流二段 岡田美術館杯女流名人戦中継ブログより

第77期A級順位戦8回戦

【第3図は▲4四桂まで】

第3図は第77期A級順位戦8回戦(▲羽生善治九段△豊島将之二冠)。ともにここまで6勝1敗で、挑戦権争いの大一番です。角換わりらしく激しい攻め合いになっています。ここから△3三角▲4五歩△7一香が「角筋は受けにくし」「下段の香に力あり」です。いずれも先手玉頭の7七の地点を狙っており、△7六歩の取り込みと合わせて、自陣からのスナイパー二枚が強烈です。以下先手は暴れましたが、的確に対応して豊島二冠の快勝となりました。

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勝った豊島将之二冠(7勝1敗)。名人挑戦に向け、大きな1勝を手にした 名人戦棋譜速報より

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敗れた羽生善治九段(6勝2敗)。名人挑戦から一歩後退となった 名人戦棋譜速報より

第77期A級順位戦8回戦

【第4図は△6五歩まで】

第4図は同じく第77期A級順位戦8回戦(▲深浦康市九段△広瀬章人竜王)から。後手が角筋を生かして先手陣を攻めています。ここで△7五歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△7五同角なら▲7六金と角に当てて受けることができますし、△7五同歩も角道が止まります。以下も難しい戦いが続きましたが、後手の角を働かせない指し回しで深浦九段が競り勝ちました。1敗で挑戦権争いをしていた広瀬竜王ですが、痛い1敗を喫しました。敗れれば降級確定だった深浦九段ですが、最終戦に残留の可能性をつなぎます。

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難解な戦いを制して2勝目を挙げた深浦九段(2勝6敗) 名人戦棋譜速報より

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広瀬竜王は痛い2敗目(6勝2敗)。挑戦権争いから一歩後退した 名人戦棋譜速報より

第12回朝日杯将棋オープン戦本戦

【第5図は▲7七歩まで】

第5図は第12回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲稲葉陽八段△藤井聡太七段)。ここからの△9五歩が「三歩持ったら端に手あり」の格言通りの端攻めです。仕掛けの時点では後手の持ち歩は2歩ですが、いつでも△7七歩成で持ち歩を追加することができます。実戦は▲9五同歩△7七歩成▲同金△9八歩▲同香△9七歩▲同香△9六歩▲同香△7四角▲9七銀△8五桂以下後手快勝。続く2回戦でも糸谷哲郎八段相手に快勝し、2年連続でベスト4。2月16日の公開対局へと進出しました。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生六段

棋士・六段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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