東西の王子対決・第66期王座戦が開幕!豊島将之が二冠達成、16人目の複数冠保持者に。【2018年9月振り返り】

東西の王子対決・第66期王座戦が開幕!豊島将之が二冠達成、16人目の複数冠保持者に。【2018年9月振り返り】

ライター: 生姜  更新: 2019年02月23日

秋の気配が漂う9月に入りました。今回は前回のコラムで予告した竜王戦挑戦者決定戦第3局と、ふたつのタイトル戦を振り返ります。今回も熱戦が繰り広げられましたよ!(肩書は当時)

東西の王子対決(2018年9月4日)

201809_01.jpg
中村王座(左)VS斎藤七段(右)の王子対決となった王座戦 王座戦中継ブログより

今期、中村太地王座に挑戦者として名乗りを上げたのは斎藤慎太郎七段でした。斎藤七段は関西の有望若手株。実力はもちろんですが、美形ということもあり、多くの女性ファンがいることでも有名です。その人気ぶりから関西の「王子」との呼び声がありました。

一方で関東の王子といえばやはりこの方。中村太地王座です。こちらもファンが多く、やはり王子と呼ばれていたので、今期の王座戦は王子対決として話題になりました。

【第1図は△8四飛まで】

4日に行われた開幕局を紹介します。図は終盤戦に入っており、ここまで熱戦の跡が見られますが形勢は先手リード。ただし、後手が追い上げてきたという状況です。ここで斎藤七段は▲6七角と打ちました。なんとも粘着力のある一着です。次に▲8五歩と打てば鉄壁。負けられないという気持ちが出た手といえるでしょうか。本譜も△6五歩に▲8五歩が実現し、斎藤七段が幸先のいいスタートを切りました。

201809_05.jpg
先勝した斎藤七段 王座戦中継ブログより

竜王戦の挑戦者に広瀬章人八段(2018年9月6日)

201809_07.jpg
竜王戦中継ブログより

8月でもお伝えした竜王戦挑戦者決定三番勝負。こちらも取り上げていきましょう。深浦康市九段と広瀬章人八段の対決です。1勝1敗となり迎えた第三局。

【第2図は△6六香まで】

残り時間をすべて投入(39分)して深浦九段は△6六香と打ち込みました。▲7二飛△同金▲同金△5三玉▲4三と△6四玉▲7三銀以下の詰めろを防いだ勝負手。しかし、先手玉は詰めろになっているかどうか。ここで▲4三とが自玉の安全度を見切った一手。△6七香成▲4八玉△5七成香▲3八玉△4七成香▲同玉△5五桂▲3八玉△4七銀と後手も懸命に追いますが、▲3九玉で有効な王手がかからない格好に。この局面で深浦九段が投了し、広瀬八段が逆転で挑戦権を獲得しました。

201809_09.jpg
2連勝と逆転で挑戦権を獲得した広瀬八段 竜王戦中継ブログより

広瀬八段は初の竜王戦挑戦者に。意外と広瀬八段は今期まで決勝トーナメントの進出がなく、1組も今期が初だったのです。1組優勝からすいすいと挑戦者まで上り詰めるのは勝負強い限りです。

201809_10.jpg
惜しくも初挑戦とはならなかった深浦九段 竜王戦中継ブログより

王位戦、ついに決着(2018年9月26日・27日)

フルセットまでもつれ込んだ王位戦。いよいよ七番勝負もついに終戦です。ここまで菅井竜也王位から見て○●○●○●という戦績。注目すべきはここまで先手番を持った棋士がすべて勝っているということです。ん?そういえば棋王戦でも先手番が勝ち続けることがありましたね。先手番で落とさないことが番勝負でのテーマといえるでしょうか。注目の振り駒は豊島将之棋聖の先手になりました。

【第3図は▲7八金右まで】

戦型は相穴熊。がっぷり四つに組んで、両者とも悔いのない構え。ポイントは角交換がしてあることでしょうか。互いに角の打ち込みに気をつけながら駒組みを進めていきます。図3は先手が▲7八金右と寄ったところで△8四角が決断の一手。表向きの狙いは銀取りですが、▲6八金と寄ってしまうと直前の▲7八金右が無駄手になり、△7三角と方向転換されて主導権を握られる恐れがあります。豊島八段は▲6六歩△同歩▲3七角と対応し、中盤戦に。

201809_02.jpg
勝てば二冠達成の豊島棋聖 王位戦中継ブログより

【第4図は△5四金まで】

豊島棋聖の前に出る姿勢が見られた手順を。第4図から▲7七桂△4六歩▲同歩△7三角▲9五歩△同歩▲7五歩△6四歩▲7四歩△8四角▲7六金△6五歩▲7五銀△6六歩▲8五桂△同角▲同金△6七歩成。

菅井王位も積極的に指し進め、若さ溢れる攻め合いとなりました。長手数ですがぜひ盤に並べて味わってみてください。

201809_03.jpg
防衛なるか菅井王位 王位戦中継ブログより

【第5図は▲6三金まで】

最終盤も見てみましょう。「▲6三金」で菅井王位が投了しました。▲6二銀でも詰みますが、こちらのほうが手数も短いしきれいですよね。△6三同玉は▲7四銀、△8二玉は▲7二飛成△9一玉▲9二銀まで。豊島二冠は今年大活躍でした。複数冠保持者はこれまで長い将棋界の歴史の中で16人目。そうなると3つ、4つと考えたくなりますが、群雄割拠の将棋界、並々ならぬ難しさであることは間違いありません。

201809_04.jpg
棋聖に続き王位も獲得した豊島二冠 王位戦中継ブログより

王座戦では相居飛車、王位戦では居飛車対振り飛車の対抗形と、さまざまな戦型が見られました。竜王戦は広瀬八段が挑戦者に。そして羽生善治竜王との竜王戦に繋がります。次回は10月に入りますが、みなさんもうそろそろ記憶が残っていますよね!

2018年振り返り

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています