ライター一瀬浩司
離れ駒や急な仕掛けには気を付けて。対振り飛車における「右玉」の注意点と発展形【玉の囲い方 第56回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年11月22日
前回のコラムでは、対振り飛車における「右玉」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、右玉に組むまでの手順の復習です。初手から、▲2六歩、▲4八銀、▲3六歩、▲4六歩、▲3七桂、▲4七銀、▲5六歩、▲6八銀、▲5七銀、▲3八金、▲4八玉、▲2九飛、▲6六歩、▲7六歩(第1図)。
【第1図は▲7六歩まで】
それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点
第2図をご覧ください。
【第2図は△4五歩まで】
いま▲6八銀と上がった手に対し、△4五歩と突かれた局面です。まだまだ序盤の駒組みが続くかと思われるところでの突然の仕掛けですが、これで先手はしびれています。まず、▲4五同歩は△8八角成で論外ですね。▲6六歩と角筋を止めるのも、△4六歩と取り込まれてしまいます。よって、第2図では▲3三角成の一手ですが、△同桂(第3図)とされると、▲4五歩は△同桂(△5五角も痛打)で▲同桂は△3七角の王手飛車がありますし、▲3八金としても、△3七桂成▲同金△5五角とされて金香両取りを掛けられてこれも先手がだいぶ悪いです。
【第3図は△3三同桂まで】
第3図で、▲4八飛としても、△5五角が好手で、▲7七角と合わせても、△4六歩と取り込まれてしまい、これも先手不利です。なにが悪かったのかというと、▲6八銀と上がって角が離れ駒になってしまったのが原因です。
もし、第2図直前の▲6八銀に代えて▲6六歩ならば、△4五歩には▲同歩△5五角▲3八金△3三桂▲5六銀で受け止められました。前回、組むときの手順で▲7六歩を後回しにしたのは、こういう仕掛けを警戒したという意味があります。
対振り飛車のときの右玉は、相手の飛車がいる真正面に玉を囲おうとしていくので、こういう急な仕掛けには注意が必要です。それでは、対振り飛車における右玉の発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形
まずは第4図をご覧ください。
【第4図】
前回ご紹介したような形ですが、右金を2六まで持っていき、相手の攻めを金の力で封じます。そして、左金は5八に上がって玉の守りを強化していきます。ここからは、▲7七桂~▲9七角~▲6九飛と6筋から攻めたり、▲3八玉~▲4八金や、▲3八玉~▲4八銀として、▲7九角~▲5七角と5筋に角を持っていくなど、さまざまな指し方があります。また、めったにこういう図にはなりませんが、大成功と言うべき理想図のひとつが第5図となります。
【第5図】
3筋と4筋の位を確保し、二枚の金銀を4六と3六に持っていけば、相手はこの厚みを突破することが難しいです。ただし、一つの位を取ることもなかなか難しいので、このような図はほぼ現れないでしょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。