普通の右玉じゃない?すべての振り飛車に対応できる「糸谷流右玉」の特徴とは【玉の囲い方 第57回】

普通の右玉じゃない?すべての振り飛車に対応できる「糸谷流右玉」の特徴とは【玉の囲い方 第57回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年12月04日

玉の囲い方

今回のコラムでも、振り飛車に対する囲いをご紹介します。見ていくのは、「右玉」です。おや? 前回のコラムも、対振り飛車の右玉だったじゃないの。確かに今回も対振り飛車の右玉です。では、なにが違うものなのか? さっそく見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図は▲2九飛まで】

平成18年9月29日、第25回朝日オープン将棋選手権本戦、▲糸谷哲郎四段ー△中原誠永世十段戦(肩書は当時)です。さて、前回ご紹介した右玉の形も見てみましょう。第2図は昭和50年5月16日、第16期王位戦挑戦者決定リーグ白組、▲西村一義七段ー△広津久雄八段戦(肩書は当時)です。

【第2図は△8一飛まで】

大きな違いはどこでしょうか? そうです。銀が第1図では6七、第2図では5七ですね。第1図の出だしはゴキゲン中飛車で、糸谷八段は5筋の位を取らせて右玉に組みました。そのため、5筋の歩は突けないので、銀は6七に上がります。いかにも玉頭の4筋が薄く、そこを攻められる心配がありますが、後手は3三に角を上がっているため、△3三桂~△4五歩と4筋から攻めてくることはなかなかできません。

糸谷八段は、四~五段時代にこの戦法で好成績を残したことから「糸谷流右玉」とも呼ばれるようになりました。中飛車に限らず、向かい飛車、三間飛車、四間飛車のすべての振り飛車に対して用いていました。実は、筆者は糸谷八段と三段リーグで一緒だった時期が二期あるのですが、隣で対局していたとき、中飛車に対して右玉を指していたのを見てとてもおどろいた記憶があります。銀が6七でいかにも4筋が手薄に見えましたから。

そいて、糸谷八段が三段リーグを抜けましたが、第1図の記録係、実は筆者です。中原誠十六世名人のゴキゲン中飛車に対して右玉に組み、早指しでバシバシと力強く指し手を進め、持ち時間3時間の約半分、消費時間1時間43分で大名人に快勝するのを目の当たりにし、一流棋士にも通用する戦法だったのだと、またおどろきました。

5七(5三)銀型に比べると、左銀が離れているので堅さは劣りますが、攻めに使いやすくはなっています。第1図からは、△5二金左▲8六歩△4一飛▲8五歩△5一角▲1六歩△7四歩▲7五歩△同歩▲同角△1四歩▲8九飛△7二金▲6五歩(第3図)と進行しました。

【第3図は▲6五歩まで】

銀が6七のため、7筋の歩を交換したときに7六の桂頭を銀がしっかり守っていますね。第3図からも糸谷八段は▲7六銀~▲8五銀と6七の銀を進軍させて6三の銀との交換に成功し、端攻めも絡めて後手陣を攻略していきました。このように、左銀の使いやすさも大きな特徴と言えるでしょう。

それでは、糸谷流右玉に組むまでの手順を、先手の駒だけを配置して見ていきましょう。今回は、中飛車を想定した手順で組んでいきます。

囲いを組むまでの手順

初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲4六歩、▲4七銀、▲2五歩、▲3六歩、▲3七桂、▲6六歩(第4図)。

【第4図は▲6六歩まで】

中飛車に対しては、▲7六歩~▲2六歩~▲2五歩としていくのが最も多いですが、今回は先に▲4八銀と上がります。理由は次回にしますが、こちらがいちばん手堅い組み方になります。第4図から、▲6八銀、▲6七銀、▲3八金、▲4八玉、▲2九飛(第5図)。

【第5図は▲2九飛まで】

左銀を上がる前に▲4八玉~▲3八金としてもよいですし、▲3八金~▲4八玉という組み方でも構いません。第5図からは、▲7七桂~▲9六歩~▲9七角として攻撃形を築いていきますが、ひとまず第5図を完成形とします。それでは、次回のコラムでは組み方の注意点を見ていきましょう。

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。

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