ライター一瀬浩司
金の上がり方が相居飛車の場合と微妙に違う?対振り飛車右玉の特徴と組み方とは【玉の囲い方 第55回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年11月15日
今回のコラムでも、振り飛車に対する囲いをご紹介します。見ていくのは、「右玉」です。あれ? 右玉って以前やったような......。と、思われるかもしれませんが、以前ご紹介した右玉は相居飛車戦における形でした。今回は対振り飛車の形ですので、どう違ってくるのかを見ていきましょう。
囲いの特徴
第1図をご覧ください。
【第1図は△8一飛まで】
昭和50年5月16日、第16期王位戦挑戦者決定リーグ白組、▲西村一義七段ー△広津久雄八段戦(肩書は当時)です。以前ご紹介した右玉とどう違うのかを見比べてみましょう。第2図は平成30年9月27日、第27期銀河戦本戦Eブロック、▲佐藤慎一五段ー△村中秀史六段戦です。
【第2図は△6二玉まで】
右金の位置が違いますね。対居飛車の場合は金は5二、対振り飛車の場合は金が7二(右玉側が先手なら5八と3八)でした。さて、なぜ対振り飛車には5二ではなく7二に上がるのでしょうか?
その理由を見るために、もう一局プロの実戦例を見てみましょう。第3図は平成8年2月5日、第45回NHK杯争奪戦本戦、▲行方尚史五段ー△森内俊之八段戦(肩書は当時)です。
【第3図は△5二金まで】
右玉は桂を7三に跳ねるため、端が薄くなります。第3図は先手が端を狙って雀刺しのように香の下に飛車を回ってきていますが、後手は右金を8四まで繰り出して受け止めています。どうしても端や桂頭が薄くなりますので、そこを狙われたときに金を8三(先手なら2七)へ繰り出して金の守備力で受け止めようということです。
もし、第3図でなおも▲9五歩と攻めてきても、△同歩▲同香△9四歩▲同香△同金で攻めが続きません。それでは、先手側の駒だけ配置して、右玉に組むまでの手順を見ていきましょう。銀は6七に上がる形もありますが、今回は5七に上がる形に組んでいきます。
囲いを組むまでの手順
初手から、▲2六歩、▲4八銀、▲3六歩、▲4六歩、▲3七桂、▲4七銀、▲5六歩、▲6八銀、▲5七銀(第4図)。
【第4図は▲5七銀まで】
いろいろと組み方はありますが、角道をなかなか開けずに組んでいくのが安全ですので、そちらの組み方でいきます。もちろん、第4図までが絶対の手順ではありませんので、初手に▲7六歩と突いてもよいですし、▲4七銀の後に▲3八金~▲4八玉としてから左銀を上がっていく順もあります。第4図から、▲3八金、▲4八玉、▲2九飛、▲6六歩、▲7六歩(第5図)。
【第5図は▲7六歩まで】
とりあえず第5図を囲いのひとまずの完成形としておきます。6九の金は7八、5八、6八のどこに上がるのも有力で、そちらは指す人の好みとしか言いようがありません。次回は、組む際の注意点と発展形を見ていきます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。