ライター一瀬浩司
対藤井システムの囲い!「ミレニアム囲い」の組む注意点と発展形とは?【玉の囲い方 第48回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年09月13日
前回のコラムでは、藤井システムに対し、角筋を生かした攻めを警戒する囲い「ミレニアム囲い」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
それでは、ミレニアムに組むまでの手順の復習です。初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲2五歩、▲6六角、▲7七桂、▲8八銀、▲6八金寄、▲8九玉、▲7九金、▲7八金寄、▲5九銀、▲6八銀(第1図)。【第1図は▲6八銀まで】
それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点
第2図をご覧ださい。
【第2図は△3三角まで】
ここから「ミレニアム」に組むには、▲6六角と出ますが、すぐに▲7七桂と跳ねてしまうと、8八の角が使いにくくなってしまいます。また、▲7七角と上がるのは、今度は角がジャマになって7七へ桂を跳ねられなくなってしまいますね。もちろん、▲6八角と引いてから▲7七桂と跳ねて組んでいくこともできます。しかし、そうすると今度は6八に角がいるので、5八の金を6八に寄せれなくなってしまいますね。なので、スムーズに組むために▲6六角と一段上に上がって組んでいきます。
次に第3図をご覧ください。
【第3図は△5四銀まで】
前回、ミレニアムに囲う手順で▲5九銀~▲6八銀というふうに右銀を囲いに引きつけていきました。通常は▲5七銀と上がり、▲6八銀と引きつけるものですよね? ではなぜ、▲5七銀と上がらなかったのでしょうか?
第3図から▲5七銀と上がってみましょう。△9五歩▲6八銀などと進めば、問題はなにもありませんが果たして本当になにもないでしょうか? ▲5七銀に対して△6五歩と突かれたらどうでしょう? 6六にいる角の行き場がありませんよね? 角を助けるには▲6五同桂しかありませんが、△同銀とされて早くも桂損になってしまい不利に陥ってしまいます。ご紹介した手順のように、▲5九銀と引いておけば△6五歩には▲5七角と引いておいて何事も起こりません。以下△4五銀とさらに角頭を狙われる手が気になりますが、▲2六飛と浮けば飛車の横利きで5六の歩を受けることができます。
組む際の注意点はこれくらいですので、次に囲いの発展形をご紹介していきます。
囲いの発展形
第4図をご覧ください。
【第4図は▲8七銀まで】
第1図から、▲8六歩、▲8七銀と進めた局面です。銀は8七へうわずってしまった感がありますが、銀で薄い桂頭をカバーしていますね。ここからさらに▲8八金上と上がりたくもなりますが、玉の脇があいてしまうので、このままのほうがよいでしょう。もちろん、飛車交換にならなそうな戦いになるときは、▲8八金上と上部をさらに補強したほうがよい場合もありますので、そこは臨機応変に対応していきましょう。次に第5図です。
【第5図は▲6七銀まで】
第1図から、▲5七角、▲6六歩、▲6七銀と進めた局面です。これも桂頭をカバーして上部に厚い形になりましたね。ミレニアムは桂頭が薄いので、第1図の形のままでいると、例えば、△7五歩▲同歩△7六歩のように、桂頭を攻められてしまうこともあります。桂頭をカバーすると、やや陣形が弱くなってしまいますので、状況に応じて銀でカバーするか、第1図のまま戦っていくかを見極めていくことも大事になってきます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。