ライター一瀬浩司
上部に強い発展形!振り飛車に対する囲い「ミレニアム囲い」の発展形を学ぼう【玉の囲い方 第49回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年09月25日
今回のコラムも、振り飛車に対する囲いである「ミレニアム囲い」をご紹介していきます。あれ? ミレニアムって前回やったじゃないの? こう思われてしまうと思いますが、さっそく同じものかどうか、そちらをを見ていきましょう。
囲いの特徴
第1図をご覧ください。
【第1図は△3一銀右まで】
平成13年10月5日、第60期A級順位戦、▲藤井猛竜王ー△森下卓八段戦(肩書は当時)です。復習も兼ねて、わかりやすいように前回ご紹介しましたミレニアムの形を見てみましょう。第2図は平成12年7月13日、第9期銀河戦予選、▲渡辺明四段ー△行方尚史六段戦(肩書は当時)です。
【第2図は△4二銀まで】
第1図と第2図を比較してみると、堅さは金銀が密集している第2図のほうがまさりますが、第1図のほうが上部が厚く、桂頭の弱点を4三の金がカバーしていますね。発展形として、第2図から△4四歩、△4三銀とした図を前回のコラムでご紹介しましたが、4三の地点と3一の地点の金銀が入れ替わった形になっています。それぞれの形に一長一短がありますが、桂を跳ねて玉が2一(先手なら8九)へおさまっているので、どちらもミレニアムやトーチカと呼ばれています。
それでは、先手側の駒のみを配置して、囲いを組むまでの手順を見ていきましょう。
囲いを組むまでの手順
初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲7七角、▲6六歩、▲2五歩、▲6八角(第3図)。
【第3図は▲6八角まで】
前回は▲6六角~▲7七桂と組みましたが、今回は▲7七角とひとつ上がり、▲6八角と引いて組む手順にします。▲6六角~▲5七角や、▲3六歩~▲5五角~▲3七角として組んでいく手順もありますが、まずはいちばん手堅い組み方で覚えていきましょう。
第3図から、▲6七金、▲7七桂、▲8九玉、▲7八金(第4図)。
【第4図は▲7八金まで】
6七へ金を上がってから7七へ桂を跳ね、あいた8九のスペースに玉を潜ります。第4図の形になれば、強い戦いもしていけますが、桂を跳ねてしまっているので端の薄さも気になりますね。そこで右銀も引きつけ、端も強化していきます。
第4図から▲5七角、▲5九銀、▲6八銀右、▲8八銀、▲7九銀右(第5図)。
【第5図は▲7九銀右まで】
第4図から▲8八銀とすぐに上がる手もありますが、玉の脇があいてしまうところが気になりますね。4八の銀を6八へ引きつけてから、▲8八銀と上がれば一瞬脇はあきますが、一手で▲7九銀右と閉めることができますので、こちらの組み方のほうがより手堅いといえるでしょう。
次回のコラムでは、組む際の注意点と発展形をご紹介していきます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。