ライター一瀬浩司
2000年ごろに指され始めた「ミレニアム囲い」の特徴と組み方を学ぼう!【玉の囲い方 第47回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年09月10日
今回のコラムでは「ミレニアム囲い」をご紹介します。2000年ごろに指され始めたことからこう呼ばれるようになりました。また、別名「トーチカ囲い」などとも呼ばれた囲いです。トーチカとはロシア語で、鉄筋コンクリート製の防御基地を指す軍事用語だそうです。今回のコラムでは、囲いの名前を「ミレニアム」に統一してご紹介していきます。さて、このような囲いの名前を聞いてもピンと来ない方も多いと思います。では、どのような囲いなのか、さっそく見ていきましょう。
囲いの特徴
第1図をご覧ください。
【第1図は▲6八銀まで】
平成11年10月4日、第18回全日本プロトーナメント、▲三浦弘行六段ー△藤井猛竜王戦(肩書は当時)です。先手陣は「トーチカ」の名の通り、金銀四枚による鉄筋コンクリートで固められた防御基地のように見えませんか? 実はこの囲いも、藤井システムが猛威を振るっていたために指され始めたものになります。 第1図は、先手玉が8九と後手の角筋を避けていますよね? 飯島流引き角戦法や、銀冠穴熊と違って7六に歩は突いてありますが、代わりに玉は角筋を避けるように囲っていきます。それでは、先手側の駒だけを配置しまして、囲いを組むまでの手順を見ていきましょう。
囲いを組むまでの手順
初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右(第2図)。
【第2図は▲5八金右まで】
ここ最近のコラムでは、角道を開けない囲い方をご紹介しましたので、久々に普通の「舟囲い」が囲いの途中で登場してきました。ここから玉を潜る準備をしていきます。第2図から、▲2五歩、▲6六角、▲7七桂(第3図)。
【第3図は▲7七桂まで】
角を6六へ上がり、8九の地点を開けるために▲7七桂と跳ねます。ここから、いよいよ8九の地点に玉が潜っていきます。第3図から、▲8八銀、▲6八金寄、▲8九玉、▲7九金、▲7八金寄(第4図)。
【第4図は▲7八金寄まで】
第3図から第4図までに至る順はいろいろありますが、いったん▲6八金寄としてから▲8九玉と潜るほうが、離れ駒ができないぶん安全な組み方でしょう。第3図からいきなり▲8九玉と潜るのではいかにもバラバラな感じがしませんか? 第4図でも十分堅く、完成といってもよい局面ですが、4八の銀も引きつけていきます。第4図から、▲5九銀、▲6八銀(第5図)。
【第5図は▲6八銀まで】
これにてミレニアム囲いの完成です。次回のコラムでは、組むまでの注意点と発展形をご紹介していきます。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。