三浦九段のお手本のような攻め!上部進出させない手厚い一手とは?【第45回 矢倉の崩し方】

三浦九段のお手本のような攻め!上部進出させない手厚い一手とは?【第45回 矢倉の崩し方】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年07月25日

今回のコラムも、矢倉に対して4七銀、3七桂型から攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図です。

【第1図は△3三同玉まで】

いま、▲3三桂成と金をはがし、後手が△同玉と応じてきたところです。前々回のコラムでは、▲2四歩△同歩に▲2二歩と打ち、△同金なら▲4三金(銀)、△同玉なら▲3四銀で先手よし、ということでした。

しかし、前回のコラムで▲2二歩のときに△1三桂と逃げれば、▲2一歩成に△4四玉と歩を払われる手が大きく、以下▲1一と△4六歩で上部開拓を狙われてうまくいかない、という結論になりました。

では、今回は正しい攻め方を見ていきましょう。第1図から、▲2四歩△同歩と突き捨てます。あれ? 前回この攻め方はダメって結論になったじゃない。また結論を変えるの? と思われるでしょうが、次の▲2二歩がうまそうな手筋に見えて問題の手でした。ではどうすればよいのか? 実はすぐに▲4三銀(第2図)と打ってしまうのが正解でした。

【第2図は▲4三銀まで】

第2図から、▲3四金を打たれてはまずいので、後手は△4三同金▲同歩成△同玉とさっぱりさせてきます。そこで▲4八飛は△4四歩で次の攻めはありませんし、▲2二歩も△1三桂▲2一歩成に△3四玉(第3図)とされてやはり△4六歩からの上部開拓があって先手がうまくいきません。

【第3図は△3四玉まで】

ですが、△4三同玉のときに手厚い一手があります。▲4五金(第4図)が上部を押さえる手厚い好手になります。

【第4図は▲4五金まで】

狙いは▲4四歩から▲4三金ですが、この単純な狙いが思いのほか受けにくいのです。後手に金があれば△4四金や△3四金として簡単に受かるのですが、あいにく豊富にあるはずの後手の駒台には、いちばん大事な金がありません。

△3三銀と受けるのは、▲4四歩が痛く、△同銀としても▲3四金打から銀を取られてしまいますし、△5三玉も▲4三金が厳しい打ち込みになります。ひねって△3二銀と4三の地点を受けても、▲4八飛(第5図)と回る手が厳しいです。

【第5図は▲4八飛まで】

第5図からは、▲4四金△5二玉▲4三金打と押し潰すような攻めが残っています。

では、プロの実戦例も見ていきましょう。第6図は平成28年1月28日、第74期B級1組順位戦、▲三浦弘行九段ー△村山慈明七段戦です。

【第6図は△3三同玉まで】

第6図から、▲2四歩△同歩▲4三銀△同金▲同歩成△同玉▲4五金△3二銀▲4八飛と、三浦九段は今回ご紹介した指し方で攻めていきました。村山七段は△5二玉と、玉の早逃げで頑張ろうとしましたが、▲5五歩(第7図)がお手本のような攻めです。

【第7図は▲5五歩まで】

△5五同歩なら▲5四歩の垂らしもありますが、▲4四金と出れば△4三歩には突き捨てを生かして▲5三歩と打つ手が生じています。村山七段は△4七歩▲3八飛△4九角と反撃含みに飛車を狙ってきましたが、▲3五飛△3四歩▲同飛△3三銀▲4三歩から三浦九段が勝ちきりました。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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