ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年06月11日
今回は金にまつわる格言を見ていきます。
銀は攻めの駒として使われることが多いですが、金は基本的に守りの駒。「攻めは銀、受けは金」と覚えておきましょう。
【第1図】
第1図のような局面では▲4一銀と打って敵玉近くの金と、持駒の銀を交換するのが先手のポイントとなりやすい手です。以下は△4二金右▲3二銀成△同金で金銀交換に成功しました。金と銀ではわずかに金の方が価値が高いですし、相手の玉を薄くする効果もあります。金2枚に対してだけでなく、飛車と金に対しても使われることがあります。これを「割り打ちの銀」と言います。一間飛びの飛車や金は割り打ちを食わないように気をつけたいものです。
金は斜め後ろにスキがある駒です。そのため、自陣の一段目にいる場合は非常に利いた駒になります。「一段金に飛車捨てあり」は金が一段目にいる場合は打ち込むスキがないため、飛車を切るチャンスでもあるということです。主に初期配置の6九金、4九金のままの状態を指すことが多い格言です。
【第2図は△2五角まで】
第2図は古くからある横歩取り。ここで▲3五飛は△4七角成で、馬を作られて先手がいけません。ここは▲3二飛成と切り飛ばすのが定跡化されている一手。以下△3二同銀に▲3八銀と受けて飛車と金歩の交換で先手が駒損ですが、後手陣はまとめづらいのに対し、先手は飛車を打ち込まれるスキがありません。少し先手が指せるとされ、現在は後手がこの局面を目指すことはめったにありません。なお、第2図では▲3六飛△同角▲同歩と進めるのも有力な手段とされており、羽生善治─谷川浩司のゴールデンカードでも登場したことがあります。「一段金に飛車捨てあり」は以前学んだ「序盤は飛車よりも角」とも関連した格言です。
一段金がスキがないのなら、逆に上ずった金は自陣にスキのある形です。
【第3図】
第3図、先手の穴熊は4六の金が上ずった形で、次に△5七角を狙われています。また、後手の持ち駒に桂や香があると3七の地点も狙われてしまいそうです。ここは▲4七金が「金は引く手に好手あり」の格言に沿った手で、陣形が少し安定しました。次に▲3七金のように引きつければかなり固くなります。
上ずった金を自陣に引く手を指せるようになれば、粘り強い将棋が指せるようになりそうです。
【第4図は△7四歩まで】
第4図は今期名人戦の第4局(▲佐藤天彦名人△羽生善治竜王)の中盤戦です。一段金(4九金)の効果で、右辺には飛車を打ち込むスキがありません。ですが、左辺はやや怖い形。次に△7三桂と跳ねられて飛車を追われると9筋に飛車を打ち込まれてしまいそうです。じっと▲8八金が「金は引く手に好手あり」で、左辺も引き締まりました。△7三桂に▲8七飛と深く引けるようになったのもポイントで、ゆっくりした流れを目指しています。じっくりとした展開になると歩切れの後手はつらく、先手の指せる将棋です。以下も先手の快勝となりました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段