ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年06月14日
今回は桂や香の使い方を見ていきます。
【第1図】
第1図は美濃囲い崩しでお馴染みの筋。ここでは▲8六桂または▲6六桂と打つのが厳しく、後手玉に▲7四桂打以下の詰めろが掛かります。このように桂を打って次の攻めを狙うのが「桂馬は控えて打て」(または「桂は控えて打て」の格言です。桂は特殊な駒なので、他の駒とは一風変わった使い方ができます。
【第2図】
香は前方によく利く駒ですが、後戻りはできません。第2図を見れば分かりますが、1九の香は1一~1八まで8マスに利いていますが、4四の香は4一~4三の3マスにしか利いていません。途中で遮断される心配がなければ、少しでも下段に打った方が利いているマスが多い分得になります。それが「香は下段から打て」です。同様の格言で「下段の香に力あり」ということもあります。
【第3図】
第3図で▲2二香や▲2三香は△1二玉とかわされて詰みません。2四~2九に打つのが正解で、それなら△1二玉には▲2三香成△1一玉▲2二とまでの詰みになります。なお、相手に1歩でもあると、▲2九香に△2三歩が中合の手筋で詰みません。この手筋を駆使した詰将棋は古くからあり、見たことのある方も多いでしょう。
「大駒は近付けて受けよ」の際にも少し解説しましたが、飛、角、香の飛び道具を打つ時は、まず離して打つ手から読むと効率が良いかもしれません。
第3図でもそうですが、香打ちに対しては歩合が利くと受けやすいです。よって歩合ができない時は香の価値が高まります。それを「歩切れの香は角以上」と評することがあります。
【第4図は▲1八飛まで】
第4図は少し前に流行したゴキゲン中飛車対超速▲3七銀の一変化。飛と銀の交換では一見後手がまずそうに思えていますが、バランスが取れています。ここでは△2八銀と筋悪く1九の香を取りにいくのが定跡化された一手。のんびりしているようですが、1九の香を取って5一や5二に据えれば中央の制空権を確保することができます。まさに「歩切れの香は角以上」「下段の香に力あり」ですね。
【第5図は△2五玉まで】
第5図は第43期棋王戦第4局の最終盤。ここで▲2九香と打つ手が厳しく、後手の投了となりました。△3六玉なら▲1六飛で詰みますし、金を2七や2六に打つのは戦力不足になるため、▲7六金と手を戻されるくらいで後手が勝てません。この場合も2四に歩がいるため、歩合が利かないので香の威力が増しています。
【第6図は▲5七角まで】
最後に髙崎一生六段の実戦から。第74期順位戦C級1組(▲高野秀行六段△髙崎一生六段)9回戦です。相銀冠で玉頭戦となっています。次に▲7五歩で金が詰まされてしまいますが、△8二銀と引いて金を助けるのでは元気が無く、玉頭を押しこまれてしまいます。ここは△6三桂と控えて打つのが攻防手。実戦は▲6六角△5五歩▲同歩に△7五歩と、逆に後手から7五の地点を攻めました。▲7五同歩には△同桂が両取りになるので、本譜は▲5六銀と活用しましたが△7六歩▲同銀△7五歩▲8七銀で7筋を押さえることに成功しました。銀冠に対しては7五の地点に桂を跳ねるのを狙うのは有力な攻めになることがあります。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段