ライター一瀬浩司
先手の角はどこへ引く?工夫して冴える指し回しをしよう!【矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年05月05日
今回のコラムも、矢倉での4七銀、3七桂型から攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図です。
【第1図は▲3五歩まで】
いま、先手が▲4五歩△同歩▲3五歩と仕掛けたところです。前回のコラムでは、後手がなにもしなかった場合はどう攻めていくのかを見ていきました。▲3四歩△同金▲3五歩△4四金▲3六銀でも十分ですし、▲4五桂△4四銀▲4六銀と前々回のコラムと同じ局面に合流させることもできる、ということでした。
では、今回は第1図から△3五同歩と応じる手を見ていきましょう。平凡に▲3五同角と取り、△4四銀(第2図)までは自然な流れでしょう。
【第2図は△4四銀まで】
ここで▲4四同角は△同金で続く攻めが難しく、まだ角を切るには時期が早いです。また、▲2四歩は△3五銀と角を取られると▲2三歩成△同金(第3図)でこれ以上の攻めがなく、角損となった先手が大失敗に終わります。
【第3図は△2三同金まで】
よって、第2図からは先手は角を逃げることになりますが、どこに引くのがよいでしょうか。2六へ引くか、元の6八へ引くかです。まずは元の場所に引く、▲6八角から見ていきましょうか。これには力強く△3四金と上がる手、△3五歩と角筋を止める手の二通りの手段が考えられます。では順を追って見ていきましょう。
まずは△3四金からです。平凡に▲3六銀と出ていくのは△3五歩▲4五銀△同銀▲同桂△同金で桂損となってうまくいきません。▲4六歩と合わせるのも、△同歩▲同銀に△3六歩と打たれてこれも冴えません。ですので、工夫が必要なところです。
なんとかうまく3四の金に4七の銀をぶつけていければ...。そう思われた方の発想は素晴らしいです。しかし、4五へぶつけるのは先手の駒の数が足りません。3五も後手の数が多いし、2五は先手の歩がいるし...。ここで、もし2五に歩がいなければ、銀をぶつけていくことができることに気付きますね。まずは▲2四歩△同歩と突き捨てます。2五の歩はいなくなりましたが、後手の歩が進んできましたのでまだぶつけていくことができません。そこで、さらに▲2五歩と継ぎ歩をしていきます。▲2四歩と取り込まれると玉頭に大きな拠点ができてしまうので、後手は△2五同歩と取ってきますが、一本▲1五歩△同歩と突き捨て、▲3六銀(第4図)と出れば、△3五歩には▲2五銀△同金▲同桂と調子よく攻めていけます。
【第4図は▲3六銀まで】
以下△2四歩には▲3四金の銀取りが受けにくいです。△4三銀には▲2三歩があります。第4図から、△3三桂と2五の地点に駒を足しても▲2五桂△同桂▲同銀として、△同金には一本▲3四桂と王手角取りに打つ手が利きます。△3一玉▲4二桂成△同玉▲2五飛となれば先手大成功です。ここで、注意しなければならないのが、▲1五歩と突き捨てるタイミングです。▲2四歩△同歩の後に、▲2五歩と打ち捨ててから▲1五歩と突きましたが、先に▲1五歩を突いてしまうと、△同歩▲2五歩に△1六歩(第5図)と伸ばされて突き捨てを逆用されてしまいます。
【第5図は△1六歩まで】
端を突き捨てる攻め方はこれまでに何度も出てきましたが、タイミングを誤ると逆用されたりしてしまうので注意が必要です。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。