ライター一瀬浩司
序盤の駒組で注意したい2つのこと。対居飛車と相振り飛車の指し方の違いとは?
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年02月20日
前回のコラムでは、相振り飛車での「美濃囲い」についての組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形は、居飛車対振り飛車の場合とはどう違うのか? そちらを見ていきましょう。
それでは、相振り飛車においての、美濃囲いに組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛、▲4八玉、▲5八金左、▲3八銀、▲3九玉(第1図)。
【第1図は▲3九玉まで】
それでは、後手の駒を配置して、組む際の注意点を解説していきます。
組む際の注意点
居飛車対振り飛車の将棋と違い、相振り飛車では相手の攻め駒が直接こちらの陣を睨んでいます。つまり、仕掛けには常に気をつけなければなりません。例えば第2図です。
【第2図は△3六歩まで】
いま、△3六歩と突かれた局面です。▲同歩と取ってしまうと△同飛▲3七歩△3四飛とは進行せず、△5五角と出られてしまいます。1九の香取りを防ぐには▲3七桂と跳ねるくらいですが、そこで△3六飛(第3図)と走られると、▲3八銀△3二飛で△3六歩を狙われて早くも先手不利となってしまいます。
【第3図は△3六飛まで】
では、△3六歩にはどう対処すればよかったのでしょうか? ▲2八銀と上がり、△3七歩成▲同銀と進めなければなりませんでした。三間飛車から3筋を突き捨て、△5五角と飛び出してくる筋は、常に気をつけてなくてはなりません。もし、先手の銀が3九ではなく、3八に上がっている状態でしたら、△3六歩には▲同歩と取って大丈夫です。銀が3八なら、△5五角には▲3七銀と形よく受けることができます。
ではもうひとつ。第4図をご覧ください。
【第4図は△1五歩まで】
いま△1五歩と端攻めをされたところです。このまま△1六歩と取り込まれ、▲1八歩とするのでは端を詰められたあげく、一歩損となってひどいので、▲1五同歩と取りますが、△1七歩と垂らされると、▲同香は△1六歩▲同香△2五銀、▲同桂は△1六歩とされていずれも先手不利です。▲1七同玉も△1五香と走られ、▲1六歩と受けても構わず△同香と取られて▲同玉△1四飛▲2六玉△1九飛成でいきなり先手玉は受けなしに陥ってしまいます。
では、先手の駒組みのなにがいけなかったのでしょうか? それはここまでの駒組みに至るまでのところで、△1四歩に▲1六歩と端を受けたことがまずかったのです。居飛車対振り飛車の将棋では、美濃囲いに組むときは端は受けたほうが玉が広くなってよいのですが、相振り飛車の場合はこのように端を目標に攻められてしまうことがあります。もちろん、端を受けておいたほうがよい場合もありますが、端は受けずに駒組みを進めたほうが最初のうちはよいでしょう。それでは、囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形
こちらも、相振り飛車ならではの発展形があるので、ご紹介します。第5図は、▲3六歩△同歩▲同金と先手陣を崩して動いたところです。
【第5図は▲3六同金まで】
一見、自ら囲いを崩したように見えますが、ここから、▲3五歩~▲4七銀~▲3八金~▲3七桂として、どんどん盛り上がっていきます。相手が3筋の位を早々と取り、位が安定していないときにはこのように高美濃からより盛り上がっていく指し方があります。もちろん、指しこなすには力が必要ですが、相手の攻撃陣にじわじわと圧力をかけながら盛り上がっていく指し方もおもしろいと思いますので、ぜひ試してみてください。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。