ライター一瀬浩司
玉よりも銀を先に動かした方がいい理由とは? 相振り飛車での美濃囲いの組み方
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年02月16日
今回のコラムから、相振り飛車での囲いについてご紹介します。まず、相振り飛車とは? と、思われる方もいるかもしれませんが、その名の通り、お互いに飛車を振り合う戦型のことです。図面で見ていただくとわかりやすいので、まずは第1図をご覧ください。
【第1図は▲8八飛まで】
先手が8筋へ、後手は3筋へ飛車を振り合っていますよね。これが、相振り飛車という戦型です。さて、ここからどう囲っていくかということですが、大きく分けて四つの囲い方があります。
まず、振り飛車の代表的な囲い方の「美濃囲い」。そして「穴熊」。こちらは振り飛車の囲い方のコラムでご紹介しましたね。そして「矢倉」に囲うこともあります。これで三つですがもうひとつ囲いがあります。「金無双」という囲い方です。
では、これまでのコラムで出てこなかった、金無双とはどういう囲いなのか? ということをさっそく解説していきたいところですが、居飛車対振り飛車のときと、囲い方の注意点が変わってきていますので、復習もかねて相振り飛車での美濃囲いの組み方からご紹介しましょう。
囲いの特徴
第2図をご覧ください。
【第2図は▲5八金左まで】
第1図から、お互いに美濃囲いに囲った場合の一例です。金銀三枚でシンプルに囲い、お互いによくまとまっている陣形ですが、居飛車対振り飛車と違うところはどこでしょうか? お互いの飛車が相手陣を睨んでいますね。美濃囲いは金二枚が守備についている横からの攻めには強いですが、上からの攻めにはやや弱いところがあります。よって、相振り飛車では上からの攻めには常に気をつけなければなりません。そちらの注意点は次回に解説いたしますので、まずは囲いの組み方について解説していきます。
囲いを組むまでの手順
初手から▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛(第3図)。
【第3図は▲8八飛まで】
相振り飛車は、向かい飛車、三間飛車、四間飛車、中飛車のどこに振るのも有力ですが、相手陣を直接狙って行ける向かい飛車や三間飛車に振ることが多いです。今回は向かい飛車に振った場合で解説していきます。それでは続きを見ていきましょう。第3図から、▲4八玉、▲5八金左、▲3八銀(第4図)。
【第4図は▲3八銀まで】
あれ? と思われた方もいるかもしれません。そう思われた方はここまでのコラムをよく読んでいただけていると思います。美濃囲いに囲うときは、▲4八玉、▲3八玉、▲2八玉、▲3八銀と囲うほうが覚えやすいと解説しました。ですが、相振り飛車の場合は、▲3八銀から囲ったほうがよい場合が多いのです。というのも、▲3八玉と寄ると、美濃囲いに組むには▲2八玉、▲3八銀としなければなりません。ですが、第4図のように組んでいけば、▲3九玉(第5図)と引けばこの状態で戦っていくことができます。
【第5図は▲3九玉まで】
上から攻められることになるので、玉は2八よりも3九にいたほうがよい場合もあります。よって、相振り飛車では▲3八銀を先に上がることがポイントといえるでしょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。