ライター一瀬浩司
居飛車穴熊を組むときに注意すべき「藤井システム」とは?
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年02月11日
前回のコラムでは、「居飛車穴熊」の組み方についてご紹介いたしました。今回は、居飛車穴熊に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、居飛車穴熊に組むまでの手順の復習です。
初手より、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲5七銀、▲7七角、▲8八玉、▲9八香、▲9九玉、▲8八銀、▲7九金、▲6八金寄、▲7八金寄(第1図)。
【第1図は▲7八金寄まで】
それでは、後手の駒を配置して、居飛車穴熊へ組む際の注意点を解説していきます。
組む際の注意点
振り飛車穴熊と違い、▲7六歩、▲7七角と、玉の斜めのラインを開けて囲うことになりますので、後手の角のラインを生かした急戦に気をつけなければなりません。代表的なものとしては、居飛車穴熊に対して猛威を振るった「藤井システム」です。これは藤井猛九段が考案された、対居飛車穴熊用の急戦策で、美濃囲いの形は作りますが、玉は囲わずになんと5一の居玉のままで戦いを仕掛けてきます。第2図が一例です。
【第2図は△6五歩まで】
例えば、ここから▲6五同歩△7七角成▲同桂△9六歩▲同歩△7五歩▲同歩△9六香! ▲同香△7六歩と仕掛けられると、先手陣はバラバラで後手に気持ちよく攻められてしまいます。こう進むと後手の玉の位置は8二よりも5一のほうがはるかに安全ですね。
また、6二~7一~8二と玉を移動する三手を省略しているぶん、先手の囲いの手が進んでおらず、仕掛けが成立することが多いです。もし振り飛車側が先手でしたら、もう一手仕掛けが早くなってきます。
このように、振り飛車側が藤井システムを目指して玉を5一のまま駒組みをしてきた場合は、居飛車穴熊をあきらめて左美濃に囲ったり、逆に後手の居玉を狙って急戦を狙うような指し方になってきます。高度な指し方としては、▲3六歩と突いて急戦を見せ、△6二玉と上がらせてから▲7七角と上がって居飛車穴熊に組むという指し方もあります。
この話をしていくと、あと何回もコラムが必要になってきますので、囲う際の注意点の話は、角筋を生かした急戦に注意するということでまとめ、囲いの発展形の話に移らせていただきます。
囲いの発展形
前回のコラムでは、第1図のような形に組むことは少ないという話をいたしました。では、代わりの形は? ということで、第3図のように、6七へ金を上がって上部を厚くする形が、対四間飛車ではとくに一般的な形となります。
【第3図】
左金も7九ではなく、7八に配置していることも多いです。第3図からは、▲2五歩~▲3六歩~▲6八角~▲3七桂と5七の銀を攻めに使うことを含みに右桂を活用したり、▲2五歩~▲3六歩~▲5九角として、角を3七や2六へ配置したりする指し方もあり、さまざまな指し方があります。
また、第3図から囲いを発展させていく場合もあり、▲6八銀、▲7八金、▲7九銀右(第4図)とすれば、右銀を守りに引きつけることができます。
【第4図は▲7九銀右まで】
この指し方の場合ですと、左金は最初から7八に配置しておくほうが、スムーズに右銀を引きつけることができますよね。また、第1図からの発展形も見ていきましょう。第1図より、▲6六銀、▲6八角、▲7七銀引(第5図)とすれば、金銀四枚の非常に堅固な穴熊になります。
【第5図は▲7七銀引まで】
ここからさらに、▲9六歩、▲8六歩、▲8七銀、▲8八金上とすれば、弱点の端もカバーされます。▲8八金上まで発展させた形は「ビッグフォー」と呼ばれ、最強の囲いとも言われています。
以上、居飛車穴熊へ組む際の注意点と、発展形のご紹介でした。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。