ライター一瀬浩司

ポイントは▲2四歩の突き捨て【矢倉の攻め方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年01月27日
今回のコラムも、飛車角銀桂をきれいに配置した、理想的な布陣から矢倉を攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図をご覧ください。
【第1図】
銀が3六、桂が3七とここまでは前回までのコラムと一緒ですね。飛車の位置は4八から2八、角の位置は2六から4六へと、それぞれ4筋から2筋、2筋から4筋へ配置が変わっています。前回までのコラムでご紹介しました、第2図の布陣も理想的な形ですが、第1図の布陣も後手の玉頭に駒が集中して、非常によい形です。
【第2図】
前回の布陣と比べてみると、組み上がりがこちらのほうが早く、4六の角も後手の攻撃陣をにらんでけん制しています。角が2六にいる場合は、4筋に戦力を集中してガンガン攻めていけますが、後手の飛車のコビンには利いていませんので、攻撃陣を完成させる前に後手に十分な態勢を築かれて先攻されてしまう場合もあります。
第1図はわかりやすい形にしていますが、もし7三の場所に歩ではなく、銀がいる形でしたら、8四に進めば4六の角の利きが通りますし、△6四銀と上がっても△7五歩▲同歩△同銀のとき、これも4六の角の利きが通ってきます。角が4六にいる形は、2筋方面にも、7筋方面にも両方利いているとてもよい形です。それに、3六銀と3七桂の形がプラスされれば、△4五歩と突く手もなく、4六の角が安定しますし、攻撃力も高いです。
それでは、第1図からさっそく後手の矢倉を攻めていきましょう。3六の銀を使うといっても、▲3五歩と打つのは、△同歩▲同銀△3四歩(第3図)と進んで戦果は上がりません。
【第3図は△3四歩まで】
第3図から▲2四歩と突いても、△同歩なら▲同銀△同銀▲同角△同角▲同飛で成功ですが、もちろん△2四同歩とは取ってくれません。△3五歩▲2三歩成△同金で銀損になって失敗します。
それでは、違う攻め方を見ていきましょう。第1図からは、▲2四歩(第4図)と突き捨てていくのが正しい攻め方です。
【第4図は▲2四歩まで】
後手の応手は△2四同歩、△同銀と二通りありますので、それぞれを見ていきましょう。まずは、△2四同歩と取ってみます。これには、▲2五歩(第5図)と継ぎ歩をしていく攻めが当然ながら厳しいです。
【第5図は▲2五歩まで】
このまま、次に▲2四歩と取り込まれては、玉頭の拠点が大きすぎます。かといって、▲2四歩と取り込まれたときに△同銀と取るのも、▲同角△同角▲同飛で後手の駒の利きが足りずに先手が銀得となります。よって第5図では△2五同歩と取るよりないですが、そこからの攻防を次回のコラムで見ていきましょう。
矢倉の崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。